ラヴ KISS MY 書籍

 

 

 

「ちょっとだけ、気持ちが楽になりました、でも、なんでいつも私の危険を察知して助けてくれたり、落ち込んで泣いてる様子を察知出来るんですか?」

 

琴葉の様子は全て俺の脳裏に浮かんでくる、自分でも不思議だよ。

 

俺の声は聞こえない、琴葉は一生懸命答えを感じ取ろうとしてくれていた。

 

「多分霊体さんは感じるんでしょうね、でもあなたは誰なんですか」

 

俺は驍だよ。

 

「驍?」

 

えっ?俺の声聞こえたの?

 

「そんなわけないですよね」

 

だよな、びっくりした。

 

琴葉とのこんなやりとりが新鮮で、心地良かった。

 

「霊体さん、私ね、驍って思いたいのかもしれません、だって連絡取れない理由が嫌われて連絡取れないのと、霊体になって連絡取れないのとって考えたら、私以外の女性と何処かで一緒より、霊体でも私を好きでいてくれた方がいいから」

 

琴葉!

 

「ごめんなさい、ご迷惑ですよね」

 

そんな事ないよ、俺は琴葉が俺を、いや、霊体を感じてくれる事に感激してる。

 

琴葉は俺がいるであろう方向をじっと見つめた。

 

俺は琴葉の頬を両手で触れてみた。

 

琴葉が俺を感じてくれたような表情を見せた。

 

俺はそっと琴葉の唇にキスをしようと試みる、二人の距離が縮まる。

 

一瞬、琴葉が目を閉じたように思えた。

 

俺は琴葉にキスをした。

 

触れている感触が全く感じなかったが、不思議と気持ちが高揚した。

 

琴葉はゆっくりと目を開いた。

 

俺はその場を離れた。

 

これ以上琴葉の側にいることは、俺の理性がもたないからだ。

 

琴葉は俺の気配が消えた事を感じ取った。

 

そして、何度も何度も俺の名前を呼んだ、俺に届かない声で……

 

この時、琴葉が霊体を俺だと思い込んだことなど知る由もなかった。

俺は琴葉に真実を伝えなくてはと焦っていた。

 

琴葉を嫌いになったんじゃないと……

 

次の日中村の身体を借りるべく、中村が降り立つ改札付近で待ち構えていた。

 

中村、悪いな、また、身体を借りるぞ。

 

俺は中村に入り込んだ。

 

そして、琴葉の働いているコンビニに向かった。

 

缶コーヒーを手に取り、レジに並んだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

琴葉は缶コーヒーと俺いや、中村を交互に見ていた。

 

一瞬、琴葉と見つめ合った。

 

周りの音が消え、俺と琴葉の鼓動だけが、ドキッ、ドキッと響いた。

 

お互いに我に返って、現実に引き戻された。

 

俺は琴葉と仕事終わりに話をする約束を取り付けた。

 

よし、中村が仕事終わったら、また身体を借りるか。

 

そして、中村から離れた。

 

「あれ、何でコンビニに来てるんだ、そういえばこのコンビニ、海斗の彼女の働いているコンビニだよな、まずい、遅刻だ」

 

中村は急いで会社に向かった。

 

中村、悪いな、また後で身体を借りるな。

 

中村は仕事が終わり、会社から出てきた。

 

そして、俺は中村の身体に入り込んだ。

 

琴葉と約束した喫茶店に向かった。