11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化
俺はホストクラブのリニューアルを計画していた。
経営も順調で、売上も上々だ。
ただ一つ違う点は、俺の側にあゆみはいない。
そう、あゆみとは一年前に別れたのである。
そして、現在、俺の記憶にあゆみはいない。
朝目覚めると、隣で眠っているあゆみを認識出来ない。
頭の中が真っ白になるのである。
また頭痛が酷く、手の震えが止まらなくなる。
激しい頭痛との葛藤の末、眠りにつく。
あゆみはそんな俺を見て、毎回手を握り、抱きしめてくれた。
その度に、涙を流し、あゆみも自分の処理しきれない気持ちとの葛藤に苦しんでいた。
しばらくそんな状態も落ち着き始め、平穏な日々が流れた。
しかし俺はあゆみとの別れを決意していた。
この先、あゆみにこんな辛い思いはさせる事は出来ない。
もし、記憶が無くなり、あゆみを分からなくなったら、2回もそんな思いをさせる事は出来ない。
記憶があるうちに、あゆみと別れようと決意した。
「あゆみ、俺と別れてくれ」
あゆみは固まって戸惑いを隠せない様子だった。
しばらく沈黙が続き、あゆみは口を開いた。
「分かりました」
そして、俺とあゆみは別れた。
その後やはり不安は的中した。
激しい頭痛と手の震えが繰り返され、耐えられない痛みに気を失ったことさえあった。
そして俺の記憶からあゆみは消えた。
俺はある日、店のリニューアルオープンに向けて、花の注文を選ぶため、フラワーショップのホームページを検索していた。
「加々美フラワーアレンジショップ」が目に止まった。
ホームページに凄く惹かれた。
店長 結城あゆみ 店の紹介やプロフィールが俺の心に響いた。
俺はすぐにメールを送った。
『はじめまして、ホストクラブを経営しています、麻生 凌と申します、この度店のリニューアルオープンに向けて、花のアレンジをお願いしたく、ご連絡致しました、お返事お待ちしています』
あゆみは俺のメールに驚きを隠せなかった。
一年ぶりの俺からのメールに、はじめは俺じゃないかもと思ったらしく、様子を伺うメールをよこした。
『リニューアルオープンに向けてのご注文ですね、お任せください、ちなみにどなたかのご紹介でしょうか』
『いえ、ホームページに強く惹かれたので』
俺はあゆみの記憶はない、だから全く初めてで、でも多くのホームページの中からあゆみが働いてる店が目に止まるとは、何か運命を感じた。
俺は店長結城あゆみに会ってみたくなった。
何故だか凄く心が惹かれる。