11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化

そんな矢先、あゆみが腹痛を訴え、病院へ運ばれた。

 

あゆみは流産してしまった。

 

あゆみはずっと泣きながら、俺に謝っていた。

 

「凌、ごめんなさい、あんなに子供欲しいって言っていたのに・・・」

 

この時俺は自分でも分からない気持ちが心の中を占めていた。

 

あゆみが謝れば謝るほど、嫌な気持ちが膨らんでいった。

 

俺の知らない俺に対してのあゆみの気持ちに嫉妬した。

 

あゆみが愛しているのは俺じゃない。

 

俺が覚えてない俺とあゆみは愛し合い、子供が欲しいと告げ、二人で・・・

 

頭がおかしくなりそうな位に、俺は俺に嫉妬の炎を燃やしていた。

 

「あゆみ、俺を愛してくれ」

 

「凌が大好きです」

 

「違う、あゆみが愛しているのは俺じゃないだろう」

 

あゆみは驚いた表情を見せた。

 

「俺が覚えていない俺を愛しているんだろ?」

 

その時激しい頭痛が俺を襲った。

 

蹲り、頭を押さえて、激痛に耐えた。

 

あゆみは「凌」と叫んで、俺を抱きしめた。

 

俺はあまりの痛みに気を失った。

 

目覚めた時、あゆみは俺を覗き込んだ。

 

 

 

「誰?」

 

俺はあゆみがわからなかった。

 

あゆみは手を小刻みに震わせて、「凌、凌、私よ、あゆみよ」

 

そして、俺の手を握ろうとした。

 

俺はその手を振り払った。

 

目を閉じると、脳裏に色々な場面がフラッシュバックした。

 

目を静かに開ける、目の前にいる女性の記憶が蘇って来た。

 

「あゆみ」

 

俺の声にあゆみは一杯の涙が溢れて泣き出した。

 

震えるあゆみの肩を抱き寄せて、キスをした。

 

しばらくあゆみは泣き止まなかった。

 

相当なショックを与えてしまったようだ。

 

この時俺は、あゆみとの別れを決意した。