11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化

ある日あゆみは生理が遅れている事に気づいた。

 

いつものように俺はあゆみをを求めた。

 

 

 

「あの、麻生さん、ちょっとお話があるんですけど」

 

「何?改まって、俺は別れないよ」

 

「ち、違います、あの、生理が遅れてて」

 

俺は驚きの表情を見せた後、喜びの表情に変わって「やったあ」と声を上げた。

 

「あゆみ、病院に行こう」

 

「はい」

 

そして二人で病院へ向かった。

 

「2ヶ月目に入った所です、おめでとうございます」

 

俺は飛び上がって喜んだ。

 

しかし、あゆみの表情は不安を隠しきれなかった。

 

俺の尋常じゃない頭痛に顔をしかめた事が、脳裏を掠めた。

 

あゆみは俺に確認した。

 

「麻生さん、子供の事本気ですか」

 

「本気だよ」

 

 

あゆみは俺を信じて着いて来てくれる決心をした。

 

でも心の奥底では、不安が無いと言ったら嘘になる気持ちが消えなかった。

 

ある日の夜、俺はうわごとのように「あゆみ、ごめん」と言った。

 

あゆみは俺の病気を感じ取った。

 

あゆみは俺に言った。

 

「私を一人にしないと約束してください」

 

俺は「わかった、約束する」そう言ったが、俯いてあゆみの顔を見る事が出来なかった。

 

それから恐れていた事が起きた。

 

俺が頭痛に苦しみ、緊急入院をする事になった。

 

昏睡状態になり、先生から緊急手術を勧められた。

 

しかし、俺は手術は希望していないと、その理由にあゆみは愕然とした。

 

そう、術後の後遺症で認知機能障害により、記憶が消えると言うのだ。

 

「凌の記憶から私の記憶が消える」

 

あゆみは俺のこれからの人生の事を考え、手術をお願いした。

 

たとえ俺の中から自分の記憶が消えたとしても・・・

 

手術は成功した。

 

俺は気がつき、先生の診察を受けた。

 

 

「自分の名前を言ってください」

 

「麻生 凌です」

 

「職業は何ですか」

 

「ホストクラブを経営しており、自らホストもしています」

 

「ご家族はいらっしゃいますか」

 

「家族?」

 

「はい、奥様とかお子さんとか」

 

「先生、俺は独身ですよ、家族はいません」

 

「結婚されたと報告受けていますよ、奥様に会って見ますか」

 

俺は驚きの表情を見せた。

 

そして、先生はあゆみを診察室へ招き入れた。

 

「麻生さんの奥様です」

 

先生はあゆみを俺に紹介した。

 

俺の中に全く記憶がない。

 

「すみません、俺はあなたを知らない」

 

そう俺の記憶の中にあゆみはいなかった。

 

俺はすぐ視線を逸らした。

 

 

第7話へ続く