11月1日発売ラヴ KISS MY初書籍化
そんな悶々とした日々が淡々と流れた。
凛の傷は回復に向かっていたが、心の傷は塞がっていなかった。
「凛、退院したら一緒に暮らさないか」
「何言ってるの?廉は玉森コーポレーションの社長として、会社を守って行く為に、婚約者と結婚するんでしょ、もうあんな事は嫌なの」
「ごめん、でも俺は凛以外とは結婚しないから」
百合絵は精神的病状が回復せず、俺は毎日百合絵を見舞う事になった。
百合絵は俺との結婚を望んでいる。
しかし、俺は凛を愛している、その事を百合絵自身も知っている。
だからこそ、百合絵は俺を許せない気持ちが強いのだろう。
「百合絵、お前をここまで追い詰めたのは俺の責任だ、しかし、お前とは結婚は出来ない、でも出来る事は何でもする」
「廉、凛さんとは結婚しないで、そして私の側にずっと居て」
「わかった、そうしよう」
「廉、ありがとう、嬉しい」
そして俺は百合絵の元へ毎日顔を出した。
凛が退院する事になり俺は凛の病室へ向かった。
「凛、良かったな」
「廉」
「俺はお前に謝らなければいけない、お前にしたプロポーズは取り下げる、ごめん」
「百合絵さんと結婚するの?」
「いや、誰とも結婚はしない、でも百合絵の気が済むまで側にいてやると約束した」
「そうなんだ、その方がいいと思う」
「凛、ごめん」
「謝らないで、大丈夫だから」
そして俺は病室を後にした。