彼は深夜勤の泊まりの仕事がある人だった。


藍も学校とバイトがあるし、彼も仕事が忙しいし、デートもそんなに沢山できなかった。


だけど、深夜勤じゃない日は、藍のバイト先まで迎えに来てくれたし、藍は待っている彼がいるから仕事を尚更頑張ることができた。


藍は、なかなか会えない彼に会えると嬉しくて、運転中の彼にずっとくっついていた。


彼の匂いが好きで、隙があれば彼の首筋に顔をうずめていた。


ねぇ。


と声をかけられ顔を上げるとキスをしてきて、笑う彼の笑顔が好きだった。


藍が膝を抱えて、テレビを見ていると


おいで


とベットをトントンするのも可愛くて愛おしかった。


藍が、バイト先でナンパされたのを聞いて、拗ねているのもかわいかった。



けど、彼には藍が本当に絶対許せないところがあった。


女心がまったくわかっていないのだ。


もう少し一緒にいたくて、拗ねているのもわからなくて


なんで怒ってるのかもわからないし、どうしていいかもわからない。


と言ってきたり


前の彼女の話をしてきたり


藍ばかりが我慢していた。


藍は、


いい子になってほしい。


という彼のために、他の男とのデートも控えたり(それでもデートはしていた)、化粧を薄くしたりした。


彼が露出の少ない服を着てほしいと望むから、デートのときくらいは…など努力もした。


それなのに、彼は全然わかっていないし、訳のわからないことしか言わないので、藍は冷めた。


せっかくの20歳。


楽しくて、ニコニコしてる恋愛したいもん。


こんな人は要りません。


ブログに書けるようになったから、もう藍は大丈夫。


微塵の未練もありません。


前の彼氏とは、初デートでベッドインって若いとしかいえない感じで燃え上がって付き合ったが、2ヶ月で別れるって若い付き合いをしてしまった。


そんな彼との初デートの話。


初デートは、ボーリングに行って、ご飯食べて、永遠にドライブってパターンだった。


家の前まで、迎えに来てくれて、藍は急いで学校から帰ってきてお洋服を勝負服(黒のレーシーなキャミワンピにファーのカーデにニーハイ)に着替えて、大好きなアナスイのスイドリームを付けて、メイクをチェックして、出てった。


車に乗り込むと彼は、少しはにかんで年上なのに可愛いなーと思った。


ボーリングに行ったときには、まだ少し距離があってそんな距離感も愛おしいと思った。


藍がガーターばっかりで、勝手に拗ねていたら


こう投げてみ?


なんてアドバイスなんてしちゃって。


こう?こう?


なんて聞きながら藍は投げてみるんだけど、またガーター。


2ゲーム位して、ドライブした。


藍の通ってる学校の近くまで行ったり、遠回りして夜景を見に行ったり。


運転してる彼の顔がほころぶ瞬間が可愛くて、頑張って大人ぶって話している感じがまた可愛い。


藍は、彼に惹かれていた。


夜景の見える公園に車を止めて、少し話していたらだんだん近づいてくる彼の顔。


キスする瞬間の空気。


ピーンと張り詰めていて、ドキドキが止まらない。


キスされて見詰め合った。


彼の目が、藍の目を見つめていて、直ぐにそらしていた。


彼のキスは全然上手くなくて。


藍は


ん…?


と思ったんだけど、そんなことより照れている彼が可愛くて、藍は


「何でキスしたの?」


と聞いてみた。


彼は照れた顔をして


「わかるしょ…??」


と呟いていた。


また、夜景を見に行って


車のシートを倒す彼に藍はじゃれていた。


彼にいきなり抱きしめられ、キスされた。


唇に、ほっぺに、首筋に、耳に。


藍も燃えてきちゃって、彼とならシテもいいとおもった。


そのまま一晩一緒にいた。


精一杯年上ぶっているけど、時々見える子供が本当の彼はこっちなんだろうな。


と思わせて可愛かった。


携帯にくる、彼氏からのメールもコールも気にならないくらい一緒にいたかった。


正直、その日は


めっちゃ良かった。


彼は全然上手くは無いんだけど、きっと彼氏への罪悪感が良かったのかな。


じゃれてるときの彼の顔は本当に可愛くて、藍はずっとその顔を見ていたかった。


朝、送ってもらって車から降りるときも寂しいくらいだった。


家について、メールをチェックしてみると、彼氏から


「何してるの?」


「次はいつ会える?」


ってメールと着信が。


罪悪感は無いといったら嘘になるけど、そんなことよりあの頃の藍には


新しい刺激


のほうが魅力的だった。








藍は、甘えん坊将軍である。


彼氏ができると、


「抱っこしてー」


「ギューしてー」


と自分が暇になったり、寂しくなったり、嫌なことがあったら直ぐにこの言葉を発する。


すると、みんな


「しょーがないなー」


としてくれるのだ。


藍は彼氏がいなかったことが少ない。


むしろ、彼氏と、彼氏がかぶっていた時期のほうが多い。


そんな藍が今、1ヶ月ほど彼氏がいない。


彼氏を作っていないのだ。


つまり


抱っこやギューをしてもらってないのだ。


夜無性に寂しくなって、眠れないことが最近多いのはこのせいか…。