梨沙side)
「お花、直ぐに用意します。
少しお待ち下さいね」
花束にリボンをかけ
最後の包装をすませ
数原くんにお渡しする。
(数原くんとの再会が思わぬ方向へと
動きそうで、話しかけるのが怖い)
「ありがとうございます。
五十嵐さんにもよろしく伝えて下さい。」
「梨沙さん久しぶりなのに
なんか冷たいやん。」
「いや、そんな事ないわよ。
五十嵐さんのお使いじゃ、急いでるかなって。」
「ま、そうですね。
けど、ぼく、これでもアーティストなんです。」
「歌続けてるの?」
「はい、歌ってます。
デビューしました。
今、手持ちのCDとかないんですけど
お店宛てに今度送らせてもらいます。」
「ありがと
数原くん、頑張ってるのね!」
大人になった..
この子と再会するなんて思ってもみなかったから
動揺してる...
きっと橘さんの話して来そう...
「梨沙さん、今度...
そう数原くんが話し出したタイミングで
お店のドアが開いた。
♪カラン
「いらっしゃいませ〜」
と、片寄くんが帰って来た。
店の中は、一気にコーヒーの香ばしい香りで
溢れた。
「梨沙さん、ありがとうございます。
また来ますね〜」
数原くんは話をやめ
店を後にする。
「ありがとうございます。」
数原くんがお店を出た途端に
「元カレ?」
と、登坂さんが聞いて来た。
「まさか...
親子ほど歳離れてるよ、彼。
恋人だった人のとこに
バイトで来てた子なの。」
「ふ〜ん」
「なんか言いたげだったよ?
追いかけた方がいいんじゃない?」
「違うの。あまり話したくないんだ!
きっとさっき言いかけた事だって
元カレの話だから」
「そっか、なら
いいけど。
オレ、店戻るわ。
涼太、コーヒーありがとな。
梨沙さんいつでも来ていいから
待ってるね〜」
「ありがと」
登坂さんはお店を出て行き
上へと上がって行った。