【読書】池井戸潤『俺たちの箱根駅伝(上)(下)』文藝春秋 | 日日之出来事

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 [あらすじ]
 箱根駅伝予選会に出場したものの、己の走りに満足出来なかった主人公·青葉隼人。所属している明誠学院大学も予選会11位になり、1月2日、3日の箱根駅伝本戦に出場する事が出来なかった。長年駅伝監督を務めてきた諸矢久繁監督が勇退し、後を託されたのはかつて箱根駅伝を走り、現在は総合商社で働いている駅伝監督未経験の甲斐真人だった。動揺する選手達。駅伝OB会も未経験な人物がいきなり駅伝監督に就任する事に不満がくすぶっていた。

 一方、箱根駅伝を放送するテレビ局でも箱根駅伝の今までのやり方に不満を持つ編成局長の黒石があの手この手で”新しい箱根駅伝“をプロデュースしようと画策。スタジオゲストに人気のお笑いタレントを呼び「にぎやかし」として番組を盛り上げ、箱根駅伝初心者にも見やすい番組にしようとするが…


 「箱根駅伝」は誰のモノなのか?その答えはこの小説の中にある。


 [感想]
 面白かった。箱根駅伝の醍醐味が詰まった小説。箱根駅伝小説といえば、三浦しをん『風が強く吹いている』があげられるが、『風が強く吹いている』は箱根駅伝を走る選手目線から書かれているのに対し、この小説では選手、監督、テレビ局と多方面から箱根駅伝が書かれていて興味深い。

 お正月の風物詩として、箱根駅伝はお茶の間を楽しませるテレビコンテンツの一つであると再認識した。改めて箱根駅伝は唯一無二の存在だと思う。

 箱根駅伝を走る為に上京して大学4年間、陸上に打ち込んだが夢叶わずユニホームを脱ぐ事になった人。箱根駅伝に走る事は出来たが、箱根駅伝の独特な雰囲気に飲まれた人。箱根駅伝をはじめて走るが想像以上に走る事が出来た人。箱根駅伝を継走中にアクシデントに襲われた人。様々な人間模様が見れて面白い。箱根駅伝は多くの人に支えられ、多くの人の想いを抱え走る駅伝である。だから筋書きのないドラマが生まれる。


 はじめて駅伝監督を務める甲斐真人の的確な指示と選手に寄り添った指導が素晴らしい。こんな指導者がいれば、明誠学院大学は箱根駅伝本戦に近い将来、出場する事が出来るだろう。


 ※余談
 箱根駅伝を小学生の頃から見ているイチ視聴者からの要望

 ·現在、箱根駅伝はローマ字の「HAKONE EKIDEN」になっているが、昔の漢字四文字の「箱根駅伝」にして欲しい。

 ·現在、箱根駅伝のエンディング曲が音楽家の久石譲氏の作曲されたのが流れているが、昔の「I must go」にして欲しい。版権の問題があると思うが、なんとかクリアしてエンディング曲として復活して欲しい。

 ·『俺たちの箱根駅伝』でも書かれていたが、アナウンサーの「お涙頂戴」はいらない。昭和時代の無理矢理感動させる手法は令和の世の中には通用しない。

 ·アナウンサーの絶叫実況も出来るだけ控えてほしい。アナウンサーの感情豊かな実況は時として名場面となるが、「時と場面」を考えてください。不必要なトコロで絶叫実況されても視聴者はドン引きするだけです。