【毛皮デート商法】2007/1/31 裁判傍聴記
先日、僕の友人である男前さん(ハンドルネーム)の裁判を傍聴し、その傍聴記を書こうと思います。
男前さんは株式会社リンクをデート商法によって毛皮を売りつけたとして全額返金を求めて訴えていました。
それまで、男前さんは依頼した弁護士に「裁判が終わるまではこの事をインターネットに書かないように」と止められており、インターネットに全てを書くことが目的で裁判を起こした彼にとって、その弁護士の指示は非常に厳しいものでした。
男前さんは普段から僕にこう話してくれていました。
「ゲンソクさん、僕はコイツラに制裁を与えてやりたいと思って裁判をしてるんです。悪徳業者の手口をネットで晒して、それで名誉毀損で訴えられるのなら、それでもかまわない。今後、被害者を出さないためなら、僕は喜んで裁判に負けてやる」
そんな思いを持ち訴訟を起こした男前さん。
僕は、削除要求のメールが来たくらいで少々あたふたしていた自分が恥ずかしくなります。
それでも、弁護士に指示された通り、裁判の実況中継をしたい思いをおさえ、六ヶ月間ほどもよく我慢しました。
そして男前さんの裁判を起こした目的の一つ。
「泣き寝入りしている被害者に一人でも多く、立ち上がって欲しい。」
その思いを伝えるべく、男前さんは弁護士に無断でこうインターネットにこう書きました。
「証人尋問に傍聴に来てください。」と。(後でこの事を知った弁護士事務所の人は苦笑いしていたそうですが)
インターネット上では多くの閲覧者が男前さんの勇気に心を打たれ、彼を応援していました。
僕もその一人でした。
僕はそれに便乗し、オフ会を企画し、僕も裁判傍聴に行きました。
当日、オフ会に集まったのは男前さんを含め、10人ほど。
男前さんは弁護士との打ち合わせがあったので、別行動になりましたが、他の人たちは数時間みんなで雑談した後、傍聴席に向かいました。
裁判開始前にはガランとしていた傍聴席も裁判開始の13:30になるころには、どんどん人がやって来て、瞬く間に一杯になりました。
それほど、注目度の高い裁判であったと思います。
証人尋問開始時に証人である男前さん、リンクの販売員の野崎加奈、野崎の上司であった上山が三人並んで宣誓をしました。
「知っている事を隠したり、嘘の証言をしない」と。
そしてこの誓いを破ったときには偽証罪に問われることがあると裁判官より説明がありました。
なるほど、嘘を言うだけでなく知っている事を隠すものいけないのか。なかなかシビアなものだ。
ただ、やましい事が無い人間には、大してシビアな誓いをさせられているわけでも無いだろう。
やましい事があって、隠したい事がたくさんある人間にとってはシビアな誓いかもしれないが。
僕は初めて座る傍聴席の雰囲気に少々飲まれていましたが、手にはしっかりメモ帳を構え、始まった男前さんの証人尋問に耳をしっかり傾けました。
原告側の弁護士は消費者問題の専門家として名高い藤森克美弁護士。
被告側の弁護士は三木秀夫弁護士だ。
まずは、原告側の弁護士から男前さんに対して質問をした。
これが、男前さんの主張となるのだろう。
「野崎とは始め、どんな会話をしましたか?」
藤森弁護士のその質問に対して男前さんは
「忘れました…」
そう答えました。
そんなわけは無い!それは男前さんは普段から僕に事細かく話していてくれていたことだ。
緊張しているのだろうか?
ここでは男前さんは普段から僕に語ってくれていた毛皮デート商法への憤りをしっかり主張できていないような気がした。(あとになって男前さんは決して緊張していたわけで無かったと言っていました。僕の思い過ごしでした。。。)
僕は少し不安になりました。
ただ、この質問を聞いた時、男前さんの強い思い、そして強い意思を再確認でき、僕は胸が熱くなりました。
藤森弁護士「男前さん、あなたが裁判を起こした理由は何ですか?」
男前さん「恋愛感情を利用するデート商法は許せない!!泣き寝入りしている被害者が立ち上がるために裁判を起こしました!!」
男前さんは法廷で、大きな声でそう公言しました。
彼の勇姿は僕は一生忘れる事はないでしょう。
続いて被告側の弁護士である三木弁護士からの尋問。
販売目的を聞いたかどうかや、展示会に誘われたときどんな思いで足を運んだかを確認されていきました。
そしてこの質問。
三木弁護士「確認書にYESに○がついていますが、自分で○をつけたんですよね?」
男前さん「はい、自分で○をしました。」
そして男前さんは「でも…」と言葉を続けようとしました。そのとき三木弁護士はすかさず、
「もうよろしいわ」
そう言ってさえぎりました。それでも言葉を続けようとしている男前さんに対して
三木弁護士「私はあなたと議論をしているのじゃないのですから!」
そう言って、続きをしゃべらそうとしない。
「止めてください」
三木弁護士は裁判官の方をも見て、そう訴えかけました。
しかし、裁判官は男前さんを止めようとしませんでした。
男前さん「でも、井上と野崎がいて囲んでいたのでYESに○をせざるを得ませんでした!!」
男前さんは議論をしようとしているのではない。質問に対して答え、その答えに対して補足説明しようとしただけだ。
むしろ、三木弁護士は都合の悪い答えをシャットアウトしようとしているように思えました。
普通なら、相手の弁護士に言葉をさえぎられて、それでもなお、話を続けられるだろうか。
ほとんどの人は裁判官に「止めてください」と訴えられれば、黙ってしまうだろう。
それでも、自分にはやましい事がない、と堂々として裁判に臨む彼だったからこそ、重要な事を証言することが出来たのだと思う。
この後の詳しい弁論のやり取りは報告書 を見てもらうとして、続いて被告側の証人である販売員の野崎への尋問へと移った。デート嬢としてネット上に実名で批判的な書き込みをよくさえれている彼女。
きっと男前さん以外にも彼女に対して被害者意識を持つ人は少なからずいるだろう。
その彼女が何を考えて、デート商法をやっているのか、それが今、目の前で語られると思うと、僕は好奇心を押さえ切れなかった。男前さんへの尋問に続いて、メモ帳をもつ手に力が入る。
野崎は三木弁護士との質問のやりとりの中で、販売目的をしっかり告知した事や、男前さんとはあくまでも営業として接していた事を主張した。
そして、その後、藤森弁護士からの尋問が始まった瞬間、それまで感じていた不安が一気に吹き飛んだ。
藤森弁護士は野崎に対して、主に労働環境などについての質問をした。
野崎の回答の歯切れが悪い。
僕には、それらの回答の一つ一つが、どうも何かをごまかしつつ答えているように思えました。
そしてこの質問。
藤森弁護士「あなたの給料はいくらですか?」
野崎「答える必要はありません!」
こ、これは…。数々の悪徳業者とバトってきた僕なら分かる。
「答える必要がない」というのは都合の悪い事を聞かれたときの悪徳業者の常套句だ。
「必要がない」
その判断は誰がするのだ?
悪徳業者自身がそう判断しているだけだろう?
質問した方としては答える必要があるから、聞いているのだ。
この表現から、いかに悪徳業者が客の都合を無視して自分本位な営業をしているかが分かる。
答えたくない質問をされても、相手の事を思いやっているなら他の表現が自然に出来るはずだ。
「答える必要がない」というのは自分本位な悪徳業者の気質を物語る一言であると思う。
そして野崎は法廷の場で、体に染み付いてしまった悪徳業者の気質をつい出してしまったのだろう。
このあとにも野崎は藤森弁護士の質問に対して、数回、回答を拒否しています。
この尋問の最中、野崎はどんな顔をしていただろう?
明らかに動揺しながら質問に答えている様子だ。
僕は傍聴席からなので彼女の顔がよく見えなかったのですが、一番よく見える場所にいた男前さんに後から聞くと、このとき彼女の顔がみるみる赤くなり、そして目に一杯の涙を貯め、藤森弁護士の顔を睨んでいたという。
因果応報とはよく言ったものです。
野崎は、これまで展示会で、ハッキリと買わない意思表示が出来ないカモに同じように問い詰めて、契約書を書かせてきたのだろう。
そのツケが回ってきたかのごとく、法廷で大勢の傍聴者の中で、自分が今まで客にやってきたのと同じように、厳しく問い詰められているのでした。
最後に野崎の上司であった上山への証人尋問。
野崎と同様に三木弁護士、藤森弁護士からの尋問がされました。(詳細は報告書参照 )
そのやりとりが一通り終わったあと、裁判官から上山へ質問がされました。
裁判官「なぜ、商品が無いのに9割近くをお金を返してまで、和解しようとしたのですか?」
この言葉、どう考えるべきだろうか?
裁判官にもきっと男前さんの気持ちが伝わっているはず。そう信じたい。
だからこそ、この様な質問をしたのだろう、と思う。
上山「お客様が納得していませんので…」
一見無難な回答をする上山。
でも、それまでは返金するには、商品の返還が条件だと主張していたのだろう?
おかしくないか?
裁判官はこの回答にどう感じただろう?
閉廷間際、裁判官は最終弁論なしで4週間後に判決を出すと伝えた。
「和解はいつでも受付しますので」
そういってテレ笑いのような表情を見せる三木弁護士。
裁判官「男前さんの気持ちを考えれば、判決を出すしかないでしょうね」
裁判官のその言葉に僕は確信を持った。
男前さんの気持ちが裁判官に伝わっただろうと!
毛皮デート商法を撲滅し、これ以上の被害者が出ないこと、そして一人でも多くの泣き寝入りしている被害者が立ち上がって被害回復して欲しいという事。
その男前さんの強い思いが!!
判決は2月28日。