2024年秋の映画感想を軽くまとめてみた。
ある程度は細かく書かないと読ませる内容にならないし、あまり細かく書くとネタバレが興ざめなので、適度なラインを目指したいんだが難しい。なかには古い作品も混ざる予定。とりあえず抑えめに。

『侍タイムスリッパー』
これは大傑作だった。涙と笑い200%(当社比)の時代劇。もちろんタイムスリップが起きる。
扱うネタが面白いので間口が広くって多くの人にウケそうだけど、そうでない場合はその人のための作品でなかったということじゃないか。
ちょっと思ったんだが時代劇の置かれている状況は10年前と今じゃどう違うのだろう?
再度書くが大傑作なので劇場でご覧になるべし。幕末好きはぜひ。

『ぼくの家族と祖国の戦争』
なんという残酷な、トロッコ問題だろう。
トロッコ問題はそもそも選択全部が貧乏くじであって、いつも回答者がギャフンと言わされる類のものだ。
主人公の家族4人の安寧を取るのか、それとも押しかけてきたドイツ人523人と学生たちを感染症(ジフテリア)から守るのか。前者を選べば墓穴が100人分か200人分かが必要で、後者を選べばナチスドイツに協力したと見られ家族は危険にさらされる。
どちらかしかない状況となり、一家の決断は?
映画を見た後で振り返ってみれば一家の気高い行為が、トロッコ問題=戦争という状況を作った者たちの営為、をほんの少しでも阻害できたのではないか。そんな気がした。

『ゴンドラ』
これは眼福かもしれん。ジョージア(グルジア)とドイツが制作の映画で、コーカサス美人が見られるのであります。
百合の間に挟まろうとするオッサンは死ね、というお約束がジョージアにもあるのか😁って思ってしまったが、そもそもオッサンが可哀相な人に意地悪してたのでバチが当たった、という解釈で間違いあるまい。
まあ、かなり変な話ではあるので、フィーリングが合う人は面白がれそう。
自分にとっては金銭的に余裕がある時にしか見られない感覚だった。

『ロール・ザ・ドラム!』
面白いコメディだった。ここでいうコメディというのも、日本の「お笑い」とは違うもので、政治を描くことを避けていない。見ていて、本当に切実な問題として女性参政権や、移民の問題や、家族や、伝統と革新がお互いを凌ごうとする様子が描かれる。人間の暗黒面も笑いに紛れて描かれる。
1970年代の雰囲気があまりにも素晴らしく、ミニシアターだったもので、過去の作品を回顧して上映しているのだと思い込んだほど。だが、これは2019年の作品。

『ECMレコード ―サウンズ&サイレンス』
ドキュメンタリーの主役はマンフレート・アイヒャーという人物で、現代音楽のプロデューサー。この人の情熱的な仕事ぶりと、数々の音楽家が登場することで映像が成り立っていく。
自分は前もって知っていたのはアルヴォ・ペルトだけという体たらく。エストニアのビッグネームで、知名度が作中で一番ある人がこの人じゃないかと思う(CDを売ってたので買ったことがある)。
とにかくマンフレートがエネルギッシュで、音楽家でリスナーでプロデューサーなわけで、状況によって必要な資質を使い分けて仕事をしている様子。
音の調整をやっているシーンで情熱的に、音づくりをこれこれこのようにしたいんだと表現するのだが、自分にとってはどのテイクもあまり変わらない感じに聞こえてしまった。自分が素人なのもあるが、そもそもの映画の録音と映画館の音響の問題でもあるのだろう。現場なら、もっと聞き分けられるのでは。
興味深く情熱的な裏方の映画なので、音楽好きは一見の価値がある。

『十一人の賊軍』
ハートにズシンとくる幕末もの。
新発田藩が奥羽越列藩同盟と新政府軍と行っていた外交を背景に、そのままだと死罪になる重罪人達が小さな砦の防衛を任され戦う。
官軍・山縣狂介が玉木宏、賊軍側の人足役で山田孝之。新発田藩家老に阿部サダヲ。
ハードな戦闘シーンが描かれ、かなり残酷なシーンもある。そこが良いのだけれど心臓の弱い人はダメかもしれない。
好きなことをして生きてやる、と罪人中の紅一点が言い放つシーンはサラリとしているが重いんじゃないかな…と思った。