2024年7月25日
日本モーツァルト愛好会の第535回例会は東京文化会館小ホールでのアンサンブルOfトウキョウ第152回定期演奏会の鑑賞となりました。
今日の開演は19時でした。
プログラムはモーツァルトのフルート協奏曲第1番と第2番、フルートと管弦楽のためのアンダンテ、それとC.P.E.バッハのフルート協奏曲ニ短調の4曲です。
フルート独奏はキム・ユビンさんです。
いま世界で最も注目を集めているフルート奏者です。
コンクルール歴が凄いです。
いろいろなコンクールで受賞していますが、中でも2014年のジュネーブ国際音楽コンクールで1位なしの第2位で聴衆賞及び特別賞、2015年プラハの春国際音楽祭コンクール優勝、そして2022年ミュンヘン国際コンクール第1位など世界三大コンクールを制覇しています。
父親はフルート奏者で、東京芸術大学のフルート科教授の金昌国さんです。
ユビンさんはお父さんに師事していました。
金昌国さんは1986年にアンサンブルOfトウキョウを設立し、指揮活動も行っていました。
今日はお父さん創ったアンサンブルOfトウキョウと息子のフルート奏者の競演ということですね。
キム・ユビンさんにとっては亡き父へのオマージュということになります。
モーツァルトのフルート協奏曲は第1番がK.313、第2番がK.314でアンダンテがK.315となっています。
ボン出身でオランダ東インド会社に勤務しフルートの愛好者であった裕福な医師フェルディナント・ドゥジャンという人物の注文で、3曲の協奏曲と2~3曲の四重奏曲を作曲依頼されました。
1777年12月10日付のモーツアルトが父に宛てた手紙には
「3つの小さな、簡単な、短いフルート協奏曲と幾つかのフルート四重奏曲を書けば200フローリン貰える」とあります。
しかし1778年2月14日付の同じくモーツアルトの父親あての手紙には、
「私はまだフルート協奏曲2曲とフルート四重奏曲を3曲しか書き上げていないので、ドゥジャン氏は半分にも満たない96フローリンだけをくれました。作品が間に合わなかったのは、当然です。」
そして1920年に焼失されていたオーボエ協奏曲の楽譜が発見されました。
それがなんとフルート協奏曲第2番と全く同じ曲だったのです。
フルート協奏曲第2番は新たに作曲したのでなくオーボエ協奏曲を手直ししたリサイクル作品でした。
さらに第1番も怪しいのです。
1777年7月25日ザルツブルグで、モーツアルトの姉ナンネルの聖名祝日(7月26日)を祝うための内輪の演奏会が開かれ、モーツアルトによる新作のフルート協奏曲が演奏された。という手紙の残っています。
まさか、ドゥジャンに渡した協奏曲は2つとも、新作でなく「リサイクル」作品だったのでしょうか。
詐欺をしたのはドゥジャンでなくモーツアルトの方ではなかったのではないかと云う説もあり、いまだ論争中です。
前半にモーツァルトのフルート協奏曲第1番と第2番が演奏されました。
私はフルート協奏曲を生で聞いたのは初めてです。
オーケストラ編成は弦楽器が中心で、管楽器は第1番ではフルート、オーボエ、ホルンですが、第2番ではフルートとホルンが抜けています。
フルートの音量はそれほど大きくありません。
協奏曲になるとオーケストラとフルートの音量のバランスがとりにくい感じです。
フルートの音量が小さく感じます。
なのでフルートを目立たせるため、オーケストラは音量を控えめにして演奏している感じです。
モーツァルトのフルート協奏曲第1番と第2番はレコードやCDで何度も聞いていてよく知っていますが、フルートの音量が大きく聞こえます。
フルートとオーケストラが対等な感じで録音されています。
生の演奏と録音された演奏は全く別な芸術であることが分かった感じです。
第1番と第2番では第2番の方が良く演奏されます。
オーレル・ニコレのフルートで聴いてみてください。
ホントを言うとモーツァルトのフルート協奏曲第1番と第2番はそれほど好きな方の曲ではありません。
フルートの協奏曲はモーツァルトではフルートとハープのための協奏曲が大好きですね。
ジャン・ピエール・ランパルのフルートとリリー・ラスキーニのハープで、パイヤール室内管弦楽団の演奏が大好きです。
第2楽章を聴くと清純で無垢な感じが伝わってきます。
バッハのフルートの作品とは違う別な良さが良く感じられます。
後半のアンダンテはフルート協奏曲第1番の第二楽章と入れ替えて、ドゥジャンが容易に演奏できるように作曲されたと言う説が有力です。
別の説は3曲目の協奏曲が用意できず、埋め合わせのために単独の小品として渡された作品であると言うもの。
さらに第3番の協奏曲の第二楽章として作曲されたと言う説。
モーツァルトのフルート協奏曲は謎が多いです。
C.P.E.バッハのフルート協奏曲ニ短調はオーケストラは弦楽器だけでほかにチェンバロが加わります。
オーレル・ニコレのフルートで聴いてください。
モーツァルトのフルート協奏曲よりリズム感が心地よいです。
C.P.Eバッハのフルート協奏曲は6曲あり、一番有名なのがこの2番目の曲です。
王侯貴族のために宮廷で演奏されることを想定して作曲された作品と言われています。
C.P.Eバッハはヨハン・セバスティアン・バッハの息子で、音楽史的にはバロックと古典派の橋渡しの時期に位置し、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェン、シューベルトといった後世の偉大な作曲家たちからも高い評価を受けています。
例えば
ハイドン:
私のことを知っている人なら分かるだろう。C.P.Eバッハのおかげだと言うことを。彼の音楽を学び、教わったと言うことを。
モーツアルト:
かれは父親で、我々は子供だ。我々の中にある、まともな面は全てC.P.Eバッハに習ったものだ。
ベートーヴェン:
C.P.Eバッハのピアノ作品は演奏家にとって最高に満喫できるだけでなく、素晴らしい勉強にもなる。
今日はアンコールはありません。
最後がC.P.Eバッハのフルート協奏曲ニ短調でよかった。今日一番の気にいった演奏だったから。