2024年3月9日
目黒区の東急東横線都立大学駅から徒歩7~8分の場所に石井英美シェフのパティスリーがあります。
2018年7月17日にNHKBSプレミアム極上!スイーツマジック『まるごとトロピカル!』で石井英美シェフが新作スイーツを制作する様子が放映されたことがあります。
そのことがあってから、実際に店に行ってみました。
こじんまりしたコンパクトな感じのパティスリーでした。
店内は
スイーツ類はこんな感じです。
石井英美シェフの写真も撮らせてもらいました。
イートインのみのデセールと言うのでしょうか、スープ・ペーシュ・メルバを頼みました。
観た感じは単純そうですが、作るのに手間と時間が掛かります。
先ず桃のコンポートはシロップにトンカビーンズ加え、さらにレモン、桃の皮の部分を入れてゆっくり煮込みます。
桃のスープは生の桃に蜂蜜レモン、ホワイトブランディー、レモンバーベナを加えてミキサーで攪拌した後、溶かしたゼラチンとゆっくり混ぜ合わせて創ります。
さらに自家製ライチジュースからジュレを仕上げておきます。
そしてグラスの底にラズベリーソースを加え、その上にカスタードクリーム層、ライチのジュレ層を順に形成していきます。
その上に、グラスの周辺部にラズベリーを配置し、中央部分に桃のコンポートを入れて、上から桃のスープを注ぎます。
その上にホワイトチョコのガナッシュモンテを配し、少しラズベリーソースをかけます。
最後に皮付きの固めの桃のスライスを飾り付け、枝状のチョコレートとミントを添えます。
スープ ペーシュ メルバにはバラクリームを挟んだローズマカロンが付きます。
食べてみると桃の味わいが口に拡がります。
ライチジュレの味も良いアクセントになります。
各層がそれぞれ持ち味を出していながら、全体として桃のスイーツとしての纏まりを見せています。
ローズマカロンは生地を工夫することにより、パリっとしていながらモッチリ感を持たせています。
バラの香りが桃のかをりを思い出させます。
ザっとこんな感じです。
店の名前はAddict au Sucre でした。
実はAddictはフランス語ではなく、英語で「中毒」を意味します。
なのでAddict au Sucreはフランス語と英語の合作の名前で「砂糖中毒」意味します。
スイーツ愛好者は甘いものが好きなので、砂糖中毒と言う名前が浮かんだのでしょう。
普通にフランス語で彼らはコカイン中毒です。は
Ils sont accros a la cocaine.
で、私は砂糖中毒です。は
Je suis accro au sucre.
となるのが普通です。
石井英美シェフは店の名前を少しひねって付けてあります。
彼女はコーヒーに病み付きです。は
Elle est accro au café.
となります。
18世紀のドイツライプチッヒではコーヒーの依存症が社会問題になっていて、バッハは1732年から1734年頃これを題材にした喜劇的声楽曲コーヒーカンタータを作曲しました。
初演はゲオルグ・フィリップ・テレマンが設立したコレギウム・ムジクスによって、ツィマーマンのコーヒーハウスで演奏されました。
バッハ時代のライプツィヒにはコーヒーハウスが8軒あり、大繁盛していたが、このコーヒーハウスの中には音楽も提供する店もできていて、バッハ自身もコレギュム・ムジクスと共に出演していたともいわれています。
バッハはカンタータをかなりの数作曲しています。
殆ど教会のミサのために作曲された教会カンタータです。
これに対してコーヒーカンタータは世俗カンタータと呼ばれ、他にも農民カンタータがあります。
コーヒーカンタータをペーター・シュライアーとベルリン室内管弦楽団の演奏で聴いてみてください。
流行のコーヒーのことばかり考えている若い娘のリースヒェンに、頑固おやじのシュレンドリアンが、何とかコーヒーをやめさせようとします。
コーヒーをやめないと結婚させないと言われ、父親にコーヒーをやめることを誓わされますが、
しかしリースヒェンは婿殿を内に入れる前に、こんな約束をさせようと思っていました。
「いつでも飲みたいときに、コーヒーを飲ませてくれるように。」
最後の合唱は
猫はネズミ捕りがやめられないように、
娘はコーヒーがやめられない。
母さんも、おばあちゃんも、皆飲んでいる。
そんなコーヒーを娘がやめられるわけがないでしょう!
で終わります。
バッハは1750年に亡くなっています。
バッハの遺品リストになかには楽器や楽譜と並んで、5つのコーヒーポット及びカップ類が含まれているそうです。
音楽の合間にコーヒーの味わいも効き分けていたのかも知れません。