2023年11月3日
長野県の県花はリンドウだそうです。
リンドウは、秋の里やを彩る青紫色の野の花として代表的なものの一つです。
谷津田のやや湿った環境に多く、晴れた日にだけ五弁の鈴型の美しい花を開かせます。
近年では、開発や鑑賞目的の採掘などで各地で数を減らしており、全国の10の都府県のレッドリストに掲載されているようです。
リンドウ(竜胆)が我が国の文学に最初に登場するのは、西暦1000年頃に成立した「枕草子」です。
文学に特に興味がない人でも、枕草子が清少納言によって書かれた随筆集であること、「いとをかし」と言うフレーズがたくさん出てくることくらいは知っていると思います。
リンドウにもまた、「いとをかし」と言う形容が使われています。
竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、異花どもの皆霜枯れたるに、いと花やかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし
リンドウと言うのは、挿し木をするのは難しいけれど、霜が降りて他の花がみんな枯れている中で、とても鮮やかな色合いで咲いているもので、大変趣がある、
リンドウを栽培するには挿し木(差し芽)を用いるのだそうです。
「むつかし」かったと言っているから、清少納言自身も挿し木をやってみたことがあったのでしょうか。とすれば1000年前からリンドウの挿し木の技術は確立していたのかも知れません。
鎌倉幕府を開いた源頼朝の家紋は笹竜胆です。
また松本城を築城した石川数正の家紋は石川竜胆でした。
竜胆紋は47のバリエイションがあり、竜胆が好まれた花であることが分かります。
伊藤左千夫の「野菊の花」では、主人公の政夫が野菊の花を一握り採り、
「民子さんはどう見ても野菊の風だ」と言います。
民子は
「政夫さんはりんどうのような人」と言います。
二人が一緒に歩いた矢切のルートは観光ルートになっていて「野菊のこみち」と呼ばれ、途中に案内標識が置かれています。
その中に野菊と竜胆の案内標識はありました。
リンドウと言えば島倉千代子さんの「りんどう峠」を思い出してしまいました。
りんりんりんどうの花咲くころサ
姉サは馬コでお嫁に行った
りんりんりんどうは濃むらさき
姉サの小袖も濃むらさき濃むらさき
ハイノハイノハイ
日本人はリンドウが好きなようです。