2017年のノーベル生理学・医学賞は、体内時計の研究において遺伝子レベルでのメカニズム解明に功績を残した研究者に授与されました。

 受賞者は、マイケル・ヤンブ、ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ士のアメリカの研究者3名です。

 体内時計の存在やその重要性が広く一般にも知られ、健康との関わりから関心が高まっています。

 ”「2つの体内時計」の秘密 「なんとなく不調」から抜け出す!”(2021年11月 青春出版社刊 八木田 和弘著)を読みました。

 体の中の周期を調整する体内時計というシステムについて、その仕組みや生活上のヒントなどを紹介しています。

 体内時計は体の中の周期を調整するシステムです。

 目から得られる光の情報や、食事などによっても影響をうけます。

 人間の体温や心拍などの生理現象は、地球の自転周期の24時間より少し長い周期です。

 マスタークロックとサブクロックがこの周期を24時間に合わせてリセットし、体の周期を調整しています。

 マスタークロックは脳の視床下部にある主時計で、サブクロックは各臓器にある副時計です。

 体内時計が乱れると、さまざまな健康リスクが発生します。

 24時間型の現代社会では、夜更かし、暴飲暴食、運動不足、シフトワークなどで生活習慣を乱しやすいです。

 体内時計の乱れが続くと、睡眠覚醒リズムが乱れて不眠が引き起こされます。

 すると全身に悪影響が及び、引き起こされるのは糖尿病などの生活習慣病や睡眠障害などです。

 体内時計と健康は深く関わっており、健康的な体を維持するには、マスタークロックとサブクロックのリズムを合わせることが大切です。

 そのためには、食事の時間を意識する必要があります。

 八木田和弘さんは、京都府立医科大学大学院医学研究科統合生理学教授です。

 1995年に京都府立医科大学卒業後、同大学附属病院第3内科にて研修を受け、同大学大学院を修了しました。

 神戸大学医学部第2解剖学助手、講師、名古屋大学理学部COE助教授、大阪大学大学院医学系研究科神経細胞生物学准教授を務めました。

 2010年より現職となり、2017年から地域生涯健康医学講座の教授を併任しています。

 時間生物学、環境生理学の研究と、生活改善の大切さを伝える活動にも取り組んでいます。

 体内時計に関する研究には、犬きく分けて、植物、睡眠、動物、遺伝子という4つの流れがあります。

 植物を対象にした研究は、体内時計研究のもっとも古い歴史を持ついわば元祖といってよいものです。

 古代ギリシャに遡り、ネムノキが夜に葉を閉じて眠るように見える様子は、当時から不思議に感じられていました。

 睡眠を対象にした研究は、医学の分野からはじまりました。

 人はなぜ寝るのかという哲学的な命題からはじまり、20世紀初頭に犬の断眠実験が世界ではじめて日本で行われました。

 さらに1950年代から、犬を含めた動物の生体リズムの研究が行われました。

 ユルゲン・アショフとコリン・ピッテッドリックという生理学者が、学問として形作っていきました。

 日本では、北海道大学の本間研一・さと夫妻が、長年にわたってこの分野の研究を牽引してきました。

 1960年ころから、生物時計に対する生物学者の関心が高まってきました。

 日本でも同様で、1970年代に研究が活発になり生物リズム研究会が生まれ、1990年代に日本時間生物学会へ発展しました。

 体内時計研究を決定的に推し進める原動力となったのが、時計遺伝子の発見です。

 1970年代初頭に、アメリカのシーモア・ベンザーがショウジョウバエを使って、体内時計を司る時計遺伝子の存在を明らかにしました。

 この時計遺伝子を中心にして、時間を測るシステムを解明したのが3人のノーベル賞受章者です。

 体内時計を持っているのは人間だけではなく、すべての脊椎動物に体内時計があります。

 さらに、ハエなどの昆虫にも、単細胞生物にも体内時計はあります。

 少なくとも太陽の影響を受ける生物は、ほとんど体内時計を持っているといってよいとのことです。

 それがわかったのはそれほど昔のことではなく、2000年前後のことです。

 体内時計とは生物時計とも呼ばれ、生物が生まれつき備えていると考えられる時間測定機構です。

 地球上の生物は、地球の自転によってもたらされる約24時間の明暗周期にその活動を同調させています。

 生物リズムは概ね1日周期という意味で、概日リズムと呼ばれています。

 生物は地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調し、ほぼ1日の周期で体内環境を変化させます。

 単細胞生物や培養細胞株、あるいは各組織を構成する細胞の一つ一つが概日時計を有しています。

 概日リズムはサーカディアンリズムとも呼ばれ、24時間周期のリズム信号を発振する機構です。

 隔離された環境で自由に生活してもらうと、寝付く時刻と目覚める時刻が1日ごと約1時間ずつ遅れることが観察されます。

 このことから、ヒトの体内時計の周期は約25時間であることがわかりました。

 哺乳類では脳の視交叉上核によるとみなされ、睡眠や行動の周期に影響を与えています。

 視交叉上核から、神経あるいは体液性のシグナルを介して、各組織の細胞の概日リズムが同期されています。

 生物時計は通常、人の意識に上ることはありません。

 しかし睡眠の周期や行動などに大きな影響を及ぼし、夜行性・昼行性の動物の行動も生物時計で制御されています。

 病院に行くほどではないけれど、心も体もすっきりしないことはありませんか。

 そんななんとなく不調の原因は、もしかすると体内時計の乱れにあるかもしれないです。

 実は体内時計は縁の下の力持ちのように、私たちの心と体の健康を支えてくれています。

 これまでは、夜勤や交替勤務をおこなっているシフトワーカーの方々の健康を守るために注目されていました。

 今や、すべての人にかかかる重要な存在になりました。

 そのきっかけが、新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化です。

 不要不急の外出自粛が呼びかけられ、テレワークを導入する企業や、オンライン授業をおこなう学校も増えました。

 通勤や通学がなくなったことにより、夜型になったり食事の時間もバラバラになったりしました。

 これが生活リズムの乱れを招き、体内時計にも影響を与えている可能性があります。

 体内時計には、脳にある中枢時計(親時計)と、全身の細胞にある末梢時計(子時計)の2種類があります。

 この2つの体内時計にズレが生じると、なんとなく不調が起こってきます。

 その典型的な状態が時差ぼけですが、今は日本にいなから時差ぼけ状態の人が急増しているのではないでしょうか。

 体内時計の乱れは心と体のパフォーマンスを低下さたり、さまざまな病気とのかかわりが指摘されています。

 高血圧、心筋梗塞、脳卒中、メタボリックシンドローム、糖尿病、不妊、がん、睡眠障害、うつなどです。

 本書は、体内時計の仕組みから、なんとなく不調を解決するヒントまで紹介していきたいといいます。

はじめに/序章 「なんとなく不調」には体内時計が関係していた!?/1章 脳と細胞にある「2つの体内時計」の秘密/2章 体のなかで体内時計ができる仕組み/3章 体内時計を整える生活習慣のヒント/4章 ベストコンディションをつくる24時間の過ごし方/おわりに/参考文献
 

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