楽しい時間はあっという間に過ぎるのに、退屈な会議は、なぜなかなか終わらないのでしょうか。

 ”大人になると、なぜ1年が短くなるのか? ”(2006年12月 宝島社刊 一川 誠/池上 彰著)を読みました。

 子どもと大人によって感じ方が変わる時間に関する疑問や謎を、ジャーナリスト・池上彰氏が時間学研究者・一川誠氏にぶつけています。

 池上 彰さんは1950年生まれのジャーナリストで、慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局し、週刊こどもニュースの初代お父さん役を務めました。

 現在、東京工業大学教授を務めています。

 一川 誠さんは1965年生まれ、1988年に大阪市立大学文学部人間関係学科卒業、1994年同大学院文学研究科後期博士課程修了した文学博士です。

 19957年カナダ・ヨーク大学研究員、1997年山口大学工学部講師、2000年理工学研究科助教授、2006年千葉大学文学部行動科学科助教授、准教授を経て、教授を務めています。

 時間とは何でしょうか。

 目に見えず、触ることもできません。

 しかし、確かに存在します。

 その存在を、どうやって証明するのでしょうか。

 子どもの頃から考えていたことであったそうです。

 この長らく知りたいと思っていた時間については、時間学なる分野が存在しています。

 時間は人間にとってとても密接で、しかも重要な関係にあることがらです。

 私達は常に時間と関わりながら生きています。

 時間については知っているつもりなのに、それが何かについて説明しようとすると、実はそれについて知らないことに気づかされます。

 これは、4~5世紀にローマ帝国で活躍した哲学者のアウグスチヌスが指摘した事柄です。

 時間とは何かという問いに答えるのはとても難しいということは、今から1500年以上も前にすでに気づかれていました。

 そして、時間とはこういうものだ、という誰もが納得する答えというのはいまだに得られていません。

 アウグスチヌス以来、様々な人々がこのやっかいな問題に取り組んできました。

 認知科学的な心理学は、体験される時間とはどのようなものかという問いに答えるために、実験によって調べていくという戦略をとってきました。

 この試みも、いまだに時間とはこういうものだという断定的な答えを得るには至っていません。

 とはいえ、体験される時間と物理的な時間とがどのような関係にあるのか、体験される時間はどのような条件のもとで伸びたり縮んだり、ひっくり返ったり、

 あるいは、その進み方が早くなったり遅くなったりするのか、といった具体的な問題について、実験によって調べ着実に理解の範囲を広げています。

 現代は、人間の生活が、人類史上かつてなかったほど高速化しつつある時代です。

 都市化した社会では、農耕文化に結びついた年中行事がそのもともとの意味を失いつつあります。

 また、今の日本はそこら中に24特間宮業の店舗があって、いつでも日用品や食料を手に入れることができる時代でもあります。

 世界のどこかで開いている株式や先物の市場にアクセスして、いつでも経済活動を行なうことができます。

 一見便利なようではありますが、これほど時間のメリハリ、時間の分節が失われた環境に人間が身を置く時代というのも、これまでなかったのではないでしょうか。

 アウグスチヌスの時代には存在しなかったような、時間に関わる様々な問題に我々現代人は直面しているように思われます。

 そんな時代にあって、人間は自分の時間的限界や社会的時間とどのように対峙していくべきなのかということは、誰にとっても重要な問題です。

 錯覚は、人間であればある程度共通して体験できる現象であり、私達の生活の身近なところで役立ってもいます。

 例えば、視覚の錯覚を利用して、立体的な映像を提示する立体テレビ、聴覚の錯覚を利用して2本のスピーカーだけでも多チャンネルのサラウンドのような音響を再現したステレオ放送などがそうです。

 大人の時間が短いということは、時間と錯覚と関連しています。

 昔は15分でできていたことが最近では30分程掛かるようになりあっという間に時間が過ぎた気になりますが、これもある意味では錯覚です。

 時計の時間と人間の感じる時間とには、ズレがあるのです。

 心の中にある心的時計が、さまざまな要因によって進み方を変えるために、大人の時間は短く子供の時
間は長く感じられます。

 まず、加齢に伴う身体的機能の低下が、時間を短く感じる1つの要因として挙げられます。

 年齢を重ねていくうちに、動きが緩慢になるだけではなく、モノを見て判断するのにも時間が掛かるようになります。

 まだそれ程時間は経っていないだろうと感じていても、実際には時計の刻む1分、1時間、1日、1年は心的時計と比べると早く進んでいるため、あっという間に時間が経った気になります。

 また、子供の頃は、運動会や文化祭、遠足や修学旅行など月ごとにさまざまなイベントがあり、毎日が新しい出来事の連続でした。

 待ち遠しい気持ちで早く時間が過ぎないかなどと思うと、時間がなかなか経たずにゆっくり感じます。

 同じように、時間経過に注意が向けば向く程、同じ時間でもより長く感じられます。

 このように、大人になると時間が経つのが早く感じるのは、代謝や記憶されている情報量が大きく関係しています。

 また、認知される変化の数や刺激の有無なども関係していて、時間の心理的長さは年齢に反比例するという考え方もあります。

第1章 ヒトはどうやって時間を感じているのか/第2章 文化がヒトの時間を作る/第3章 カラダ時間とココロ時間/第4章 子ども時間に比べて大人時間はなぜ速く流れるのか
ログ村 心地よい暮らし]


Last updated  2017.03.12 07:31:45
コメント(0) | コメントを書く