エドゥアール・ヴュイヤールは、ピエール・ボナールやモーリス・ドニとともにナビ派を代表するフランスの画家のひとりです。
”ヴュイヤール - ゆらめく装飾画”(2017年1月 創元社刊 ギィ・コジュヴァル著、遠藤ゆかり訳、小泉順也監修)を読みました。
ナビ派を代表するフランスの画家・ヴュイヤールの作品と歩みを、多くの写真とともに解説しています。
ナビとはヘブライ語で預言者を意味し、ナビ派は19世紀末のパリで活動した前衛的な芸術家の集団です。
土曜日ごとにポール・ランソンの家に集まって、芸術を論じたり互いの作品の批評をしました。
独特の用語や制服、しきたりを考案して結束を高め、絵画、彫刻、工芸、舞台芸術などの広い分野で活躍しました。
大胆な構図と平面的な展開や短縮法、調和性を重視した色彩表現を駆使しています。
ギィ・コジュヴァルさんは1955年パリ生まれ、国籍はフランス、カナダで、1982年から1984年までローマのフランス・アカデミー宿泊研究員でした。
リヨン美術館学芸員、ルーヴル美術館学芸員、ルーヴル美術学校教授、カナダ・モントリオール美術館館長などを務めました。
この間、ヴュイヤールのカタログ・レゾネを編纂し、2003~04年に米加仏英を巡回したヴュイヤール展や、2006~07年のモーリス・ドニ展の主任コミッショナーを務めました。
2008年からオルセー美術館館長を務めています。
遠藤ゆかりさんは上智大学文学部フランス文学科卒の翻訳家です。
小泉順也氏は1975年生まれ、東京大学教養学科卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、一橋大学大学院言語社会研究科准教授です。
ヴュイヤールは1868年にフランス東部キュイゾーに生まれ、1878年に家族とともにパリに移り、給費生としてコンドルセ高等中学校に通いました。
父は退役士官で、町の収税吏でした。
その頃、リュネェ=ポー、ルーセル、モーリス・ドニらと知り合い、長い友情が始まりました。
1884年に父が亡くなり、母が裁縫所を開いて生計をたてました。
ルーセルの影響で士官学校の受験を断念し、画家を目指すことを決意し、1888年にアカデミー・ジュリアンに入りました。
そこで、ボナール、セリュジェらと知り合い、翌年、ナビ派のグループ結成に加わりました。
1891年に開かれたグループの第1回展に出品し、ゴーギャンや日本の浮世絵の影響を色濃く残す広い色面による画面構成を試みました。
それからまもなく、この画家独特の壁紙や家具の模様、登場する人物の衣装の柄を巧みに画面に取り込んだ装飾的な作品群が誕生しました。
初期には、モーリス・ドニやポール・ランソンを介しナビ派の活動に関わりながら、単純化された形態と色彩を追求し、ピエール・ボナールと生涯にわたる友情を結びました。
最晩年には、フランス学士院の会員に選出されるという栄誉に浴しています。
また,社交的な一面を持っていて、ナタンソン兄弟、ヴァケ博士、エセル夫妻など、有力なパトロン、コレクター、画商との出会いに恵まれました。
絵画制作のほか、室内装飾、舞台美術の仕事も手がけました。
室内や庭でくつろぐ家族や友人のいる情景を優しい光の中に描くことを得意とし、ボナールとともにアンティミスト=親密派と呼ばれました。
ナビ派にしたが真の意味でゴーガンに心酔はせず、自分の芸術的実践を続けながら独白の領域を切り開きました。
耳目を集めり逸話、社会を騒がすようなスキャンダルとは無縁で、独身を貫くなかで、1928年に亡くなる母と同居しながら、穏やかでつましい生活を送りました。
それゆえ、母、姉、姪などの家族がモデルとして作品に頻繁に資場し、身の回りのありふれたものに囲まれたプライベートな室内空間が繰り返し描かれました。
代表作には、自画像(1889年)、ランプの下で(1892年)、画家の母と姉(1893年)、求婚者、あるいは仕事台のある室内(1893年)、朝食(1894年)、縞模様のブラウス(1895年)、6人の人物のいる室内(1897年)、室内(1902年)、アトリエの裸婦(1909年)、縫いものをするヴュイヤール夫人(1920年)、フレシネ夫人(1931年)などがあります。
装飾パネル連作には、公園(1894年)、アルバム(1895年)などがあります。
いずれも、世界各国の美術館などに収蔵展示されています。
対象はゆがんだ視点や遠近法のなかで捉えられ、ゆらめく筆致がもたらす効果によって、運動するエネルギーが画面にあふれています。
大半の作品はどこか曖昧であり、多義的な解釈の余地を残しています。
第1章 ナビが語りかけること/第2章 演劇におけるように/第3章 密室の戦略/第4章 大装飾/第5章 時の仕事/第6章 パラダイスにて/資料編
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