封建制度は、中国で周代に行われた天子がその領土を諸侯に与え、さらに諸侯はそれを臣下に分与して、各自にその領内の政治を行わせる制度です。

 ”人間が幸福になれない日本の会社”(2016年4月 平凡社刊 佐高 信著)を読みました。

 日本企業を覆う病根を指摘し、処方箋を指し示しています。

 封建制度が中世社会の基本的な支配形態に及び、封土の給与と代償としての忠勤奉仕を基礎として成立し、国王・領主・家臣の間の主従関係に基づく統治制度となりました。

 今日、一般に、上下関係を重視し、個人の自由や権利を認めないさまを封建的だといいます。

 佐高 信氏は1945年山形県酒田市生まれ、慶應義塾大学法学部を卒業し、高校教師、経済誌編集長を経て執筆活動に入り、評論家として今日に至っていまする。

 東北公益文科大学客員教授で、週刊金曜日編集委員・株式会社金曜日前代表取締役社長でした。

 本書を出そうと思ったキッカケは、東芝の歴代社長による不正経理が発覚したことだそうです。

 株式の上場廃止になっても不思議はない粉飾決算でした。

 まだ、こんなことをやっているのかと唖然とした、といいます。

 依然として東芝藩であり、社長は殿様なんだと、その封建的体質に愕然としたそうです。

 現在の企業という封建社会の中では、上司の命令に黙従する社員になることも、部下に専制権力をふるう社長になることも、同じく精神のドレイになることなのです。

 このような視点に立って、ドレイ精神からの脱却を図ることが企業人革命の出発点であり到達点です。

 封建的体質は東芝に限らないので、他社では問題が発覚しないだけとも言えます。

 日本の企業には、社長の専制や独走をチェックするシステムがありません。

 しかし、社長定年制を設けながら、自らそれを破る社長も珍しくありませんので、システムを整備すれば十分だとも言えません。

 社外取締役はほとんど社長に選ばれていて、田んぼの中のカカシほどにも役に立っていません。

 たとえばソニーの井深大やホンダの本田宗一郎、あるいは北洋銀行の武井正直などは、会えてよかったと思った経営者でした。

 日本では、むしろ異端とされるこうしたトップにこそ学ぶべきです。

 世襲経営をやめよ、ハイブリッド経営を推進せよ、役員定年制を確立せよ、社宅をやめよ、生活感覚を生かせ、分権性を採用せよ、そして、社員を人間として扱え。

第1章 日本の経営者はなぜ無責任か
 籾井のようなトップはどこにでもいる/ワンマンは張り子の虎
 トヨタの封建的土壌/酒田の“角福戦争”/人間を機械に近づける発想
 トヨタの福沢幸雄事件/トヨタによるミサワホーム乗っ取り/白昼堂々の「修正」
  責任をとらずに済む日本の企業/生産と生活の遊離が公害を生んだ
 経済ジャーナリズムの腐敗/うまくいったら上司の手柄、失敗したら部下の責任
 独裁者への抵抗
第2章 企業教のマインドコントロール
 松下幸之助という教祖/「経営の神様」の消費者無視/松下政経塾は「最大の欠陥商品」
 社畜ならぬ“社霊”/朝礼での“集団催眠”/社宅という日本的風景/社宅における相互監視
 企業ぐるみ選挙/企業の社員研修と修養団/修養団とは何か/戦後の修養団を支えた企業/
 強いられた「自主性」/みそぎの日立/日立の前近代的体質/「会社に民主主義はない」
第3章 ミドル残酷社会
 会社は社員のエキスを吸い取る/「逆命利君」の精神を
 アウシュヴィッツ収容所長の告白/「兵隊はモラルを判断しない」/過労死と自殺の間で
 経営者、上司、労組が共犯者/三菱重工の「加用事件」/日経を内部告発した記者
 エリート課長の反乱/出世欲の餓鬼道について/“怨歌”としての経済小説
 私の経済小説家地図/「将」と「兵」のどちらに光をあてるか
第4章 ホワイト企業のブラック性
 ブラックの尺度は労働条件だけではない/東京電力こそ最大のブラック企業
 役人ではなく、厄人/勲章をもらうのは国に借りをつくること/関西電力の閉鎖体質
 オリンパス問題を報道しないメディアの堕落/「よい会社」とは何か
 テレビCMをやたら打つ企業は要注意/教訓を垂れるトップと離職率
 「最後の総会屋」が獄中から送ってきた“遺書”
第5章 まともな経営者はどこにいるか
 「和」を排した本田宗一郎/松下グループの変わり種/経団連を嫌った井深大
 バブルに踊らなかった銀行頭取、武井正直/「企業は“混一色”でなければ」
 小倉昌男と運輸省のケンカ/「お役所仕事の官業を食った男」
 三澤千代治と山本幸男/ナマズの活用法/三澤の「社長=クズ箱」論
第6章 チェックシステムの不在
 自分で自分を社長に選ぶ取締役会というしくみ/短く終わるのが至上命令の株主総会
 電力会社に骨抜きにされたメディア/監査役の限界
 労働史上に残る東電労組委員長の発言/「苦情こそ宝」と言った樋口廣太郎
 欧米における市民の企業チェック/勲章拒否の経営者の系譜