大学を出ても就職が難しい現在、技術を身につけて職人になりたいという若者が増えているそうです。
 
 昨今、30歳台、40歳台の世帯持ちまでが親方の門を叩くといいます。
 
 憧ればかりが先行して脇が甘いというほかはないそうです。
 
 その後に待ち受けている想像とはまるで違う軌道に、迷い、苦しみ、遅すぎる後悔に頭を抱えている例を見開きすることがあまりに多いそうです。
 
 ”職人暮らし”(2005年10月 筑摩書房刊 原田 多加司著)を読みました。
 
 職人になるにはどうしたらいいのか、職人人生はサラリーマンとどうちがうのかなどを、経験を踏まえて解説しています。
 
 桧皮葺・柿葺の専門職人の十代目で国宝や重要文化財の歴史的建造物の保存修復を生業とする著者が、職人人生の機微と伝統技術職人の現在を伝えています。
 
 職人というのは無口な人が多く、その特技の伝承も言葉や数式などに頼らず、自分の経験にもとづいて体に染み込ませた記憶や勘を頼りに、伝統を受け継いできました。
 
 かたちのないものを文章にしたり、ドキュメント化するのは存外に難しいです。
 
 彼らは腕はいいが一様に寡黙であり、技術は伝承しても私たちが本当に知りたいノウハウや人生の機微、有能な弟子の育て方といったものは、墓場まで持っていってしまうタイプが多いそうです。
 
 これではならないとして、無口な大工職人に三拝九拝して聞き出したものです。
 
 職人の仕事というのは、自分の腕が一種の社会保険のようなもので、歳をとっても腕が上がればますます尊敬されますし、経験を積めば今日より明日がよくなるという単純かつ明快な積み重ねの効用がまだ機能している社会でもあります。
 
 半面、職人というのは結構嫉妬深いところもありますし、施主や監督との関係は神経を磨り減らすことも多いそうです。
 
 こういった職人生活のいいところも悪いところも知ったうえでの志願ならば、多少時間がかかっても、その人はきっと大成するでしょう。
 
 職人生活の本当のところや、もし正しい職人のなり方、手に職をつける方法などがあるとすれば、少しずつ明らかにしていこうということです。
 
序章 職人学事始め
第1章 職人の住まいと生活
第2章 職人の技
第3章 職人の経済学
第4章 職人を育てる
第5章 職人の掟
第6章 職人、旅に学ぶ
終章 職人の引き際