今夜皆既月食 クリップ | REVOLUTION THEORY ~革命論~

今夜皆既月食 クリップ

10年ぶりの長時間、今夜皆既月食

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 2011年6月15日(水)14:55

10年ぶりの長時間、今夜皆既月食
(Photograph by Patrick Seeger, European Pressphoto Agency)

 6月15日の夜(日本では16日未明)に皆既月食が発生する。ここ10年ほどで最も長く、そして最も暗く満月がかげる。

 東半球の大部分では、月が地球の本影(地球が太陽の光を完全に遮る領域)に入り、オレンジや赤の色合いに染まる様子を2時間ほど観測できる。

 カリフォルニア州オークランドにあるシャボット宇宙科学センター(Chabot Space & Science Center)の天文学者ベン・ブレス(Ben Burress)氏は、「当日の月は地球の影のほぼ中心を通るため、(月食となる)経路として最も長く、通過時間も最長になる」と説明する。「今回ほど長い月食は2000年以来で、次回は2018年までやってこない。なかなかお目にかかれない珍しい天体ショーだ」。

 地球が太陽の光を完全に遮る影は円錐形になる。月の周回軌道は地球の公転軌道に対して傾いており、普段は円錐状の影領域から上下に少しずれた場所を月が通過するために月食は発生しない。しかし時折、月の軌道は地球の公転面と交差する。この時は必ず満月か新月だ。太陽、地球、月の順で一列に並ぶと月食が発生する。月が地球の影をかすめると部分月食になり、月が影の中へ完全に入ると皆既月食になる。

 月が欠け始めるのは、世界時で6月15日の午後6時22分頃(日本時間16日午前3時22分頃。以下、日時は世界時、カッコ内は日本時間)。

 午後7時22分(午前4時22分)に皆既月食となり、100分以上も続く。午後8時12分(午前5時12分)には、地球が投じる影の暗い中心部に月が重なり、いわゆる食の最大となる。

 そして午後10時2分に月食が終わる(日本時間午前7時2分だが、既に月は沈んでいる)。

 スコットランド北部およびスカンジナビア諸国を除くヨーロッパ地域の大半と、南米東部やアフリカ西部では、月の出の時間帯、つまり日没が始まる頃に皆既月食が発生する。

「観測に最も適するのは、月食の始まりから終わりまで観察できる場所だ。月の位置は天頂に近いほどいい。こうした点を考慮すると、今回の皆既月食観測に最適な場所は、アフリカ東部、中東、中央アジア、そしてオーストラリアの西端となる」とブレス氏は話す。

 インドネシアからニュージーランドにかけては、月が沈む直前にゆっくりと欠け始める様子を観測できる。カナダ、メキシコ、米国の月食ファンにとっては残念なことに、北米地域では今回の天体ショーを観測できない。北米大陸西部では、12月10日に次の月食が発生する。

 ブレス氏によれば、今回の月食で最も見応えがあり、また予測しにくいのは、皆既状態の月の色だという。「皆既食となった月の赤さは、地球の大気状態にある程度依存する」。なぜなら、月は自ら光るのではなく太陽の光を反射しているからだ。皆既月食の間、太陽から降り注ぐ真っ白な光を地球が遮る。しかし地球の大気を通過した間接光の一部は、かろうじて月に届く。

 地球大気中の塵や成分が、太陽光の青い波長を反射したり吸収するため、通過した光は赤みがかる。そのため月食の間、月の色が輝くような銀色から、明るいオレンジ色と濃い赤色の間のいずれかに変化したように見える。「さらに、皆既月食が天球のどの位置で起きるのかも影響する。天頂から下がるにつれて、月で反射した光が観測者に届くまでに大気を通過する距離が伸び、赤みが深くなる」。

 ブレス氏から天文ファンへのアドバイスは、都市の光害からできるだけ離れ、視界を遮る木や建物のない場所へ行くことだという。「月食の発生時に月がどの位置にあるのか分かったら、その方向を遮るものがなく、はっきりした視界を得られる場所を選べば、今回の天体ショーを堪能できるだろう」。

Andrew Fazekas for National Geographic News


世界各地の「月食」神話&言い伝えを集めてみた!


2011年は、2度の皆既月食(6月16日/12月10日)が見られる珍しい年。これを逃すと2014年10月8日まで待たなければならないので、じっくり観察したい人は覚えておこう

2011年は、2度の皆既月食(6月16日/12月10日)が見られる珍しい年。これを逃すと2014年10月8日まで待たなければならないので、じっくり観察したい人は覚えておこう
写真提供/GettyImages

天候次第ではあるが、6月16日に皆既月食が観測できる。ご存じのとおり、皆既月食は太陽・地球・月が直線上に並ぶことで、地球の影が月を覆い隠してしまう現象。前回起こったのは2010年12月21日で、神秘的な光景が話題になった。

この現象、今でこそ観測日も正確に導き出せるようになったけれど、原理が分からなかった時代には、かなり不思議な現象だったはず。そこで、世界各地の月食にまつわる神話や言い伝えを調べてみた。

神話学者・吉田敦彦氏の著書『世界の始まりの物語』によれば、北欧神話では、太陽と月が2頭の狼に追い回されているとされ、皆既月食は「月が狼に飲みこまれた」と捉えられていたそう。

同様に、インド神話では、ヒンドゥー教の神・ビシュヌの怒りを買い、首だけにされた4本腕の魔族「ラーフ」が、月を飲みこんで月食を起こすという話が。「月が悪いものに飲みこまれる!」という説は、世界各地にあるみたい。

また、気象研究家の故・根本順吉氏が著した『月からのシグナル』によれば、ヨーロッパの民話にも月をテーマにしたものが多いそう。例えば、ロシア帝国時代の劇作家、ニコライ・ゴーゴリがウクライナの民話をベースに書き上げた短編『月が消えた話』には、「空を飛びまわる男の悪魔がいて、月をポケットに隠してしまう」というエピソードが描かれている。民話らしく、ポケットというのがちょっとかわいい。

さて、科学ライター、マイケル・カーロヴィッツ氏による『月の歩きかた』を読んでみると、1504年2月29日に起こった月食に関してこんな話が。

当時、インドを探し求めて航海中のコロンブスが、ジャマイカ付近で座礁。ところが、ヨーロッパ人の侵略行為を恨んでいた原住民の助けを借りられず、立ち往生してしまった。そこで、間もなく月食が起こることを知っていたコロンブスは「もし我々を援助しなければ、神が月を連れ去ってしまうだろう」という“予言”を的中させ、恐れおののいた原住民たちの協力を得たんだとか。

やはり月食にまつわる神話やエピソードは、世界各地に転がっている模様。コロンブスの例を見ると、「月が飲みこまれる」「悪魔に隠される」など、不吉な話が多いのも、あるべきものが急になくなる、という怖さが理由なのかも。

原理を知っている僕らも、神話の世界に思いを馳せながら皆既月食を眺めると、また違った楽しみ方ができそう。6月16日、好天に恵まれることに期待しましょう!
(月川碧/blueprint)



・・・結構な雨振ってます。