釉薬の匠 岸本 晃

 

日本最大の陶芸産地・美濃で1963年生まれ、父は陶芸家、家業は釉薬製造業。

大学卒業後は東京でサラリーマンをするつもりだったが、両親の離婚で急きょ実家の釉薬製造業を継ぐ事に。父が創業した家業の2代目なので、すでに製造レシピは揃っていましたし、固定客もいて、バブルの時代で景気は良かった。

 

しかし、何の準備も無くいきなり現場に放り込まれ、実務をするには荷が重すぎました。お客から頼まれると断れない性格で、無理難題、沢山仕事を背負ってしまい苦しむ日々が続く。たまたま、国立陶磁器試験場を退官された釉薬の権威、加藤悦三先生が近くの中京短期大学に移っており、地元の為に陶器講座を毎年開催。ここで実務を学び、これをきっかけとしてやるべきことがだんだん分かって来ました。

 

釉薬は陶芸の中で専門性がとても高く、プロの陶芸家でも最も悩み時間がかかる、出来ればやりたくない、専門家に任せたい作業です。たまたま、創業した父が陶芸家だったために、陶芸家用の手間のかかるレシピが沢山ありました。これらをカスタマイズしたりしているのは、同業他社にはありませんでした。

 

こうした事に気付けたのは、日本全国釉薬小売通販を始めてからでした。通販客向けには通常、失敗しない釉薬を作って販売するのが常識ですが、岸本釉薬はそれではつまらない!と地元で作っている釉薬をそのまま通販でも販売。しかし、山のように質問・相談の雨あられの毎日。現場のたたきあげだった為に、遠方に出かけてアフターサービスを行っている。