2011年初夏~時を忘れた夏の日~
今日映画の撮影で6時入りでした。
この天気ならバイクで行ったら気持ちいいだろうな…
僕はそう思い支度してバイクのエンジンをかけた。
少し焦げ付いたエンジンの匂いが不思議と僕の体を奮い立たせた。
風が少し涼しくて気持ちよかったけど景色にモヤがかかってるように見えた。
ツイッターで撮影だよと呟くと「早いね」とリツイートがあった事に疑問を感じていた。
土曜日なのにバイクから流れる町並みは静まり返ってた。
現場に到着した。
ギリギリだったから少し急いだ。
スタッフがいない。
撮影隊が見当たらない。
共演者もいない。
15分くらいウロウロした。
誰もいない。
もう既に違う場所で始まってるのかと不安に思いマネージャーに電話。
出ない。
こうなったら!と思い監督に電話。
「…はい」
すごくボヤけた不機嫌そうな声だった。
「岸田健作です。すみません到着したんですけどどちらです?」
「…」
無言。
「あの…すみません。もしかしてもう始まってますか?」
「…」
無言。
「あの…」
その瞬間
「健作くん、今、朝6時だよ?撮影夜6時からだよ。」
辺りが一瞬で凍りついた。
青色の世界が黒色に変わろうとしていた。
「監督。僕はバカなんだと思いました。」
「バカではないけど、やっちまったんだね。じゃあ僕は引き続き寝るからね。」
「おやすみなさい。」
僕はヘルメットを被り優しい朝靄の中を帰って行った。
鳥がチュンチュン鳴いていた。
まるで僕を歓迎してくれるかのように。
そんな2011年、7月の始まりだったんだ。
おやすみなさい。