怪異小説で生きている実感を得た話。 | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社
Kisha Another Worksと銘打っての第1弾、宇治十帖の話がしたい!に続き「したい!」シリーズの第2作
雨月物語の話がしたい! いかがでしたでしょうか。
劇場にお運びいただきました皆さまに心より御礼申し上げます。

衣装、兼、宣伝美術、兼、役者、の、かなざわです。

毎度のことながら本公演もアレコレ手を出しているので思うところはアレコレあるのですが、
衣装の話とかは割とSNSとかで発信したのでここでは役者業中心でいこうかしら。と思っています。

『菊花の約』
>東(左門)のお母さん。
実はそのむかし東の叔母さん役をやったことがあります。
その作品が東の初主演作だったのですが、あの頃はまだ段取りとか相手の出方を手探りしてるような緊張感があったよなぁ、とか思い出します。
それが数年を経て、今やどう投げても捕ってくれるし投げ返ってくるだろうという安心感しかなくなり、思えば遠くまで来たもんです。
おかげで菊花は本当にすごく自由にやらせてもらいました。
お互いにここで座るからとかこの位置にいるからとか、結局最後まで全く段取り的な打ち合わせしなかったな(笑)
生きてる舞台の面白さをすごく体感できました。楽しかったー。

『吉備津の釜』
>植竹(香央造酒)の妻、筒井のママ。
実は植竹さんの嫁ないし相手役はこれで通算3回目?になります。
結構がっつりヒーローヒロインもやったことあるのに、ここへ来てスタッフさんたちに「なんか外国の吹き替えドラマみたいな夫婦」と言われる悪ノリ夫婦になってしまいました。
というか旦那がお客さまの反応に気をよくしてドンドンふざけていくので、勢いこっちのテンションも上げていくしかなくなってたというか。
結果的に嫁の受けセリフも毎回変わってしまったんですが、まぁ吉備津の数少ない気の緩めどこですからお許しください。
なお、私の中では「どうせミスでもしたんでしょー」という嫁のセリフは、旦那が毎回全っ然違うお釜祓いステップを繰り広げるもんだから、結局正解が何かわかってないゆえの発言という認識です(笑)

『青頭巾』
>木村(快庵)を泊める家の主。
最後まで来てもはや青頭巾の第二の語りなんじゃないかってレベルで喋らされる。
稽古中はよく途中で「で、何の話だっけ?」とセリフを忘れてだいぶ周囲をハラハラさせました。
出会って10年超になる吉田さんの、見たことがなかった表情をたくさん見ることが出来た作品。
客席の位置で見えなかった方がいたと思うんですが、稚児を紹介する「これ以上の稚児なんていませんよ」の瞬間の吉田さんの好色を湛えた笑みは、本当に全ての方に見ていただきたかったです。あの人とんでもない顔を見せましたよ。
ちなみに私は自分の役の設定の中にこっそり「住職へのほのかな恋情」を持たせていたので、この顔をみた瞬間血の気の引く思いがしました。
3回公演ありましたが回を重ねる毎にどんどん住職が狂っていって、最終公演とかもう正気を失った住職を見ていられないし、
声を聞いてるだけでもあんな優しい住職が……ってもうずっと泣きそうで(というか正直半泣きで)、状況説明しなきゃいけない立場なの相当しんどかったです。
でもその圧倒的な感情の奔流に巻き込まれることが出来たのは一方でとても幸せでした。
その場のお客さまの反応や空気を含めた色々な相乗効果の結果です。本当にありがとうございました。

こうやって振り返ると本当に今回の公演は、生の舞台の面白さを作る側として感じることができたなぁという思いです。
あの空間を作り上げてくれたスタッフはもちろん、一緒にあの空間を過ごしてくださったお客さまに心より御礼申し上げます。
翻ってお客さまにとっても、生の舞台の面白さを観る側として感じていただくことができたならば幸いです。

それではまた。『劇場で』お会いしましょう。

かなざわれいこ