向き合う覚悟 | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

さすがにここまで来ると誰の感想が来るか予想するも何もないですね。在原行平役を演じさせていただきましたひがしです。


まずは連休中、そして暑い最中にご来場いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。


 



初演から数えて三回目の行平ということで、役作りについては演出からもあまり指示はなく、かなり自由にやらせてもらいました。


今回は過去の伊勢シリーズでの何事も如才なく対応する行平とは違って業平には無愛想だったり、宗貞にはイライラして噛みついたりと青さの残る、まだ自分の中のコンプレックスと向き合えず、達観できていない頃の行平でした。まぁ出自って自分の努力云々でどうにかなるものではありませんから難しいですよね。


それに行平の場合は自分が貶められることだけでなく、自分という存在が伊都と父上の確執の原因である(と思っている)という負い目も相まって、大宰府コンプ&弟コンプは極力触れたくない、触れてほしくないものだったのだと思います。


そんなコンプレックスを乗り越えて、兄として業平と向き合おうという覚悟のもと差し出した手は、随分時間が経ってから握られることになったわけですが、その姿を父上に見てもらえていれば少しは救いになるでしょうか。小町殿にはちゃっかり見守られちゃってましたけど。











私は普段シーン毎に割とガチガチに作りこんでしまうのですが、今回は出来るだけ生の感情を出していければと思い、後半部分についてはわりとノープランというかその場でどう気持ちが動くかを重視して臨みました。特に父上が亡くなられた後に業平を罵倒するシーンについては毎回本気で怒っていました。「これ以上、父上を侮辱するな!」という台詞に行平から父上への気持ちを全力で込めたつもりです。


業平のことが絡むとイライラをぶつけたりもしましたが、行平としては敬愛してやまない父上でしたし、息子であることに誇りをもっておりました。


だからこそ父上を殺したであろう藤氏には深い恨みを抱くことになりましたし、「かすがの」で「藤氏の連中に一泡吹かせてやる」なんてことを企図したのだと思います。承和のことが結構な傷になっているのは業平だけではなかったという話ですね。


過去のシリーズをご覧になっていない方には何のことやら、という感じですが時系列的に一番古い話となる今作をやってみて、また改めて過去の伊勢シリーズの再演というのも面白そうだなぁという気持ちが湧いてきました。


特に久保田くんの惟高親王とか腰が引けてない状態で是非見てみたいものですし、順子をやった上で筒井さんが演じる明子とかもどんな魔女になるやら…。


 



まぁ再演も何も上演していないエピソードもあるのに再演とか一体いつやるんだよとか、業平は高子を(物理的に)背負うことが出来るのか、とか懸念事項は山ほどあるし決める権限も私にはありませんので(笑)実現可能性については全くの白紙状態なわけですが、またやりたい、と思える作品に出会えるということは本当に幸せなことだと思います。







まぁ実現するかはともかくとして、公演を続けることが再演にも繋がるというもの。まずは次の公演、「雨月物語の話がしたい!」に全力を尽くしたいと思います。また劇場でお会いできるのを楽しみにしております。


 



ひがし あきお