石田 

最初に知事の発言についてお伺いします。

まずは、ツキノワグマの被害に合い、命を落とされた方に哀悼の意を表しますとともに、怪我を負われた方々とご家族のみなさまにお見舞いを申し上げます。一刻も早いご回復を祈るばかりです。

全県各地では、今もなお、熊に怯えながらの生活を余儀なくされています。県庁や自治体には、駆除に対する多くのご意見やご批判があり、職員は対応に追われているのが現状です。熊による被害を未然に防ぐためにできることは何なのか、県民一丸となって知恵を絞り、スピーディーに議論を進める必要があると思います。

こうした中、十月二十三日に行われた「秋田の未来を創る協議会」設立会議の講演で知事は「秋田にもっと自信を持ってほしい。秋田ほどうまいものがあるところはない。」と述べた後、全国知事会議で愛媛県を訪れた話として「四国は酒もうまくないし食い物は粗末。」「ステーキかと思ったらじゃこ天で貧乏くさい。」高知県の特産物「どろめ」(生のシラス)も「うまくない。」と、四国地方の料理や酒を貶めるような発言をしました。怒りを禁じ得ません。

地元を愛するお気持ちの強さは理解しますが、「相手をけなして、自分たちを際立たせる」ことが知事の政治手法なのですか。知事が逆の立場だったら、どんな気持ちになりますか。

愛媛県の広報広聴課が「秋田県の料理を褒めるためにユーモアを交えて発言されたのではないかと思う。愛媛にはおいしい食べ物や地酒がたくさんあるので、ぜひ、またお越しになってご堪能いただきたい。」とのコメントを発表してくれました。

四県の知事宛てにおわびの書簡を送ったところ、東京都内で開かれる四国四県の合同物産展に秋田県を加えた五県での開催を提案していただきました。

一部の報道によれば、秋田県民や秋田県ゆかりの皆さんからは、謝罪の手紙付きでじゃこ天を注文する方が増えていて、地元の皆さんは「知事と違い秋田県民の暖かさに触れた」と感想を述べられているそうです。

知事はこのことに対してどう感じられますか。

記者会見の席上、知事は「批判に対して確かに鈍感になっているし、自信過剰や思い上がりという面はある。」と、まるで他人事のような発言をされています。考えたくはありませんが「助かった」「不幸中の幸い」「結果よければすべてよし」などと思っているとすれば言語道断です。

個人がどのような信条を持とうと、それは自由ですが、地位と権力のある政治家の発言は、大きな影響力を持ちます。「誤解を与えかねない」「言葉足らず」「不適切だった」などという釈明は何の意味も持ちません。極めて無責任と言わざるを得ません。

思い起こせば、豪雨災害時、ゴルフ旅行に行った際の虚偽説明。県の新型コロナウイルス対策が不十分だと指摘するインターネット上の書き込みについて「書き込むのはテレビや新聞を見ない人。あまり基礎知識がなく、思考回路が少し欠如している。」との答弁。日本への核兵器の持ち込みを容認するかのような発言。子どものワクチン接種について「基礎疾患がない限り打ってほしい。」とのミスリード。

繰り返される釈明と謝罪、反省の弁。

その度に、県民は傷つき、悲しみと不安、精神的な苦痛を負わされました。

その度に、自治体や県職員、自治体職員は振り回されてきました。

「残りの任期、仕事で挽回するよう努力したい」と述べておりますが、あらためて、知事の今の胸中と今後戒めるために心構えをお聞かせください。

もう一つは先の七月の大雨被害に触れて早急に対応するために二〇〇億円の財源が必要であり新規事業は無理ですとよく発言をしますが、大雨被害対策を錦の御旗にして新規事業をやらないという発言は政治家として慎むべきではなないでしょうか。県民はいま物価高騰による生活苦や、被災者として生活再建などで悩んでいる方も多く、社会保障はじめいろいろ支援を待ち望んでいるのです。もっと県民を元気づける発言があっていいのではないでしょうか。もっと県民に寄り添う言葉があってもいいのではありませんか。苦言を呈し知事の考えをお伺いします。

知事答弁

このたびの不適切な発言に対し、四国4県の知事からは寛大なお計らいをいただくとともに、合同特産品販売会の開催についてご提案いただいたことや、秋田県民の温かさに救われたことは、誠に申し訳なく、多くの方々に不快な思いをさせてしまったことに対し、改めてお詫び申し上げます。

 今回の問題を受けて、今後はこれまで以上に気持ちを引き締め、県政のトップとして、県民の気持ちに寄り添った発言をするよう肝に銘じるとともに、残りの任期において、本県の最重要課題である人口減少問題の克服に向け、若者の県内定着・回帰や産業振興などに、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、当面の間は、最も重要な県民の生命や財産を守るための抜本的な治水対策に相当な費用を要することから、一定程度、他の事業に影響が出る可能性はありますが、人口減少問題の克服に向けた「未来の秋田を支える人への投資」や、県民所得の向上につながる産業・雇用政策について、引き続き重点的に取り組むとともに、昨年度から継続して実施している、物価高により影響を受けている県民や事業者を支援するための施策については、国の補正予算の成立を踏まえ、速やかに対応してまいります。

 

石田

次に「二次医療圏拡大と医療政策」についてお伺いします。

最初の質問は「二次医療圏拡大による県民の不安と課題」についてであります。

先般、「医療圏の広域化」と「秋田県の医療」に関する県の意識調査が実施されました。二次医療圏が八医療圏から三医療圏に変更されることについて、県民からのご意見を幅広く集約するために実施されたものと拝察いたしますが、県内及び県外あわせて四〇七名の方々から貴重なご意見を頂戴したものです。

これによりますと、①二次医療圏の広域化のイメージについては、「病院等が遠くなる」、「病院等の再編や統廃合が進む」、「病院等が少なくなる」、このうちいずれかのイメージを持たれている方が全体の七七パーセントである一方、四七・四パーセントが「人口減少化において必要なもの」とも回答しており、不安を抱かれている方が多い一方で広域化は必要と考えている方もおよそ半数存在する、という状況が明らかにされました。

そして、医療圏を広域化する場合には、「病院等までの公共交通機関や道路網の整備が必要」と答えた方が五〇・八パーセント、「病院間での情報連携」が四三・七パーセント、「病院等の役割分担と連携」が三九・二パーセントと、広大なエリアにおける受診の不安解消のためアクセスの改善が期待され、さらに機能分化における連携の重要性が認識された結果となっています。

また、秋田県の医療政策についての設問では、充実を希望することとして、「様々な症状に対応して必要に応じて専門医につなぐ『総合診療』の充実」が五〇・四パーセント、「二四時間対応の救急診療」が三二パーセント、「認知症や呼吸器疾患、脳血管疾患など高齢者に多い疾患に対応した医療」が二二・九パーセントなどと続いており、多くの県民が総合診療に期待していることが明らかになっています。

本調査の結果、今後の地域医療構想や地域医療計画にも反映されていくものと思いますが、私なりにいくつか整理をいたしますと、①二次医療圏の広域化については多くの県民がまだまだ不安を抱いており、不安を払拭するための取り組みが引き続き必要、②公共交通機関や道路整備など通院のための手段の確保の充実が求められていること、③医療機関等の役割分担と連携について充実が求められていること、④様々な症状に対応する総合診療の充実に期待していること、などが挙げられると思います。

これら「二次医療圏拡大による県民の不安と課題」について、知事のお考えをお聞かせください。

知事答弁

二次医療圏の広域化は、今後の更なる人口減少と高齢化の進行や医師等の不足などの課題を中長期的な視点で見据え、医療ニーズの変化に対応し、限られた医療資源を有効に活用しながら、将来にわたり質の高い医療を維持していくために見直しを進めているものであります。

今後、県としましては、地域医療構想調整会議等において、患者の受療動向やその見通しといった具体的なデータも示しながら、医療機関の役割分担と連携を促してまいります。

県民アンケートでは、二次医療圏の広域化に対しては、一定の県民理解は得られているものと認識しておりますが、一方で、病院が遠くなるのではないか、身近な病院がなくなるのではないかといった不安の声も寄せられております。

こうした、県民の不安を払拭するため、県北・県央・県南の三か所で住民説明会を開催し、地域の中で医療機関が連携することで身近な医療は守られていくといったことを説明するとともに、その模様を県ウェブサイトで配信するほか、住民からの求めに応じた出前講座や、市町村等からの要請による説明会を開催するなど、分かりやすい情報発信に努めております。

さらに、地域の医療機能の充実のため、様々な疾患に対応し必要に応じて専門医につなぐ総合診療医の養成について、関係機関と連携して取り組んでまいります。

加えて、オンライン診療などの医療のデジタル化を進めるほか、通院の際の交通手段の確保や道路整備については、市町村と協力しながら推進し、県民が必要な医療へ確実につながるよう取り組んでまいります。

 

石田

次に「地域包括ケアシステムの深化・発展のため効果的な施策」の提言です。

元々は「社会保障と税の一体改革」の中で二〇〇三年に提唱された「地域包括ケアシステム」ですが、これは元々「団塊の世代が後期高齢者世代に突入する時代」とされ二〇二五年を目標に掲げられたものです。つまり私や知事の世代を想定したものだったわけです。

そこで提言は、まず第一点が、「経営母体が異なる医療、介護施設の連携を支援する地域医療連携推進法人の設立支援」であります。先に述べた調査や以前県で実施した「在宅医療取組現況調査」によりますと、機能分化と連携について多くの医療機関、介護施設でも理解はされているものの、「なかなか連携が進まない」のが実情だと思います。私の知人にもかつて医療介護連携の現場に従事した経験をもつ方がおりますが、多職種連携を推進するためには「交流と学び、課題解決のための仕組みづくり」を進めることによりWin―Win関係を創出することが重要ということでした。

この関係を医療介護連携の分野で最も効果的に築き上げるのが「地域医療連携推進法人」制度ではないでしょうか。お隣の山形県においては、すでに「日本海ヘルスネット」として平成三十年より運用されており、「医療の質向上と標準化による経済性追求の両立を図るため、「地域フォーミュラリー」を導入するなど、大いに参考になるものです。

そして、本年ついに秋田県内においてもその制度を活用する動きが出てきております。これらの先進事例を参考にしながら、それぞれの医療圏における設置が期待されるところですが、設立について県も積極的に支援すべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。

知事答弁

地域医療連携推進法人は、地域の医療機関相互の役割分担と連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するための制度であり、また、介護事業を実施する法人等も参画することにより、介護との連携を図りながら地域医療構想の達成及び地域包括ケアシステムの構築に資する有効な手段であるため、今後、積極的に推進していく必要があると認識しております。

そのためには、この制度の県内における認知度をより高める必要があり、まずは医療法人等に制度の仕組みやメリットを知ってもらうことが重要であると考えております。

県としましては、県医師会などの関係団体と連携し、先進事例の紹介など、制度の周知に取り組むほか、設立に向けた具体的な協議を促すとともに、必要な経費については、地域医療介護総合確保基金を活用し、支援してまいります。

 

石田

二点目にお伺いしたいのが、地域において在宅医療と介護の連携を支える存在となる慢性期を主に担う病院、いわば「慢性期多機能病院」とも言うべき中小病院への支援であります。

慢性期多機能病院は、一般的に急性期後の療養いわゆる「ポストアキュート」や、訪問診療・訪問看護など在宅医療を利用している患者の急変時に即応する「サブアキュート」機能に対応する病院として、専ら中小病院が担うものであり、急性期医療機関、診療所、介護機関とともに「地域包括ケア」を支える核となるべき病院のことです。

今後二次医療圏が広域化されることにより、急性期や高度急性期を担う病院はより専門性を高め、診療報酬上の「総合入院体制加算」などの算定が可能となる体制を整備し、診療単価の向上を図ることが経営改善の近道と考えますが、これらの加算を算定するためには、地域包括ケア病床や療養病床を有していないことが条件とされております。

つまり、急性期病院に療養期・回復期を担う地域包括ケア病床、療養病床を配したいわゆるケアミックス型医療機関は、診療報酬上の効果が挙げられず経営が困難となることが予想されるわけで、やはり地域包括ケア病床は「在宅医療を支える中小病院」=慢性期多機能病院で運用することが最適であると考えるものです。

ところが、そうした地域包括ケアシステムを支える中小病院、コロナ禍の中で急性期医療機関からの患者の転院を受け入れ、入院調整を支援する「バッファ」の役割を果たした中小病院ですが、一方で多くの中小病院が地域医療構想の推進の過程で役割を十分評価されないまま病床調整を余儀なくされており、その中で公立病院においては「再編統合が必要な四二四病院」としてリスト化された病院も多く含まれております。

診療報酬上は今後、これら地域包括ケアを支える「慢性期多機能病院」は一定の評価はなされていくものと考えますが、財政規模が小さく、施設整備のほか、建て替えや修繕が困難となっている医療機関も多く存在します。

今後、急性期医療機関とともに「地域包括ケア」を支える「慢性期多機能病院」の維持・機能向上のため県からも支援する必要があるのではないでしょうか。例えば、「慢性期多機能病院施設整備事業」等の名称で施設整備にかかる補助制度を導入することは検討できないものでしょうか。超高齢化社会を迎え、特に重要な問題と考えるものであり知事の前向きなご答弁を期待しております。

 

知事答弁

人口減少や高齢化が進行する本県においては、地域の医療機関や介護施設等が連携し、特に身近な医療機能を充実していく必要があるため、主に回復期や慢性期を担う地域包括ケアシステムを支える中小病院の重要性が、一層増しております。

 一方で、医療機関の施設整備については、救急医療や周産期医療といった政策医療を確保するために支援を行っておりますが、回復期や慢性期など、一般的な機能を担う医療機関については、診療報酬制度において適切に評価されるものと考えております。

 このような状況の中で、医療ニーズの変化に対応し、地域において不足する医療機能を確保するため病床転換を行う医療機関に対しては、必要な施設整備にかかる費用を助成する制度を設けており、こうした制度の活用により、中小病院をしっかりと支援してまいります。

 

石田

次にカドミウム含有米による健康影響調査についてお伺いします。

秋田県は「あきたこまち」を「あきたこまちR」に全量転換を発表したところですが長い間カドミウム含有米対策に費やした苦労は農家を含めて難儀の連続であったと思います。

それがカドミウムを吸収しない「あきたこまちR」の開発にこぎつけた努力を評価するものであります。

私は腎機能が弱く通院を重ねているもので、「あきたこまちR」が極端にカドミウムの吸収を抑え、同じく発がん性のあるヒ素を吸収しないコメ作りができるなら、とてもありがたいと感じた次第です。

現在、全国的に腎臓に障害をもち人工透析を受けている患者は多く、二○二一年末時点で推定三四九、七〇〇人、県内では二○二二年六月時点で二、二二九人の方が受けております。

問題はカドミウムの基準値が国内・国際とも〇・四PPMですが中国や香港、シンガポールなど国内基準を〇・二PPMに定めている国も多く、本当に健康被害がないのか心配になります。

北里大学の研究チームは平成二十一年より秋田県のカドミウム汚染地域で農業従事者を対象とする住民健康調査を継続して実施してきており、令和二年度にこれまでの中で最もカドミウム曝露が高度で、健康影響も大きかった県北部の集落において、十一年間の追跡調査を実施し、一○四名の受診者が得られたそうです。

さらに、令和三年度は自家産米・血液・尿中のカドミウム等の元素濃度を測定しており、コメ中カドミウム濃度の中央値は基準値未満であったが、ほかの比較対照とした集落より十倍近く高く、カドミウム濃度の基準値を超える米が一三・一%にあたる八検体あったそうです。

すなわち、出荷するコメは検査によって、〇・四PPMを超えないように対策されているものの、農家の方々が食べている自家産米の中に、安全基準を超えるものがあるということです。これは、県民の健康上問題があるのではないですか。

また、カドミウム曝露レベルの高い七〇歳以上の女性の中で尿中β2-ミクログロブリン(β2MG)濃度が高度に上昇していた人が四名おり、そのうち一名はカドミウム腎症、二名はおそらくカドミウム腎症と慢性腎不全の合併と判定したともありました。

さらに、通院中の腎機能低下の患者を対象とするカドミウム腎症スクリーニングを県中央部と県南部の三つの医療機関で合計八名の患者に実施し、地域はわかりませんがそのうち三名が種々の進行段階のカドミウム腎症と考えられた、とあります。

カドミウムが現に県民の、とりわけコメ生産者の健康に影響を与えているなら、まずは、全県的な調査を実施し情報を公開した上で、県として何らかの対策を打つべきではないでしょうか。知事のお考えをお伺いします。

 

 

知事答弁

カドミウムは、自然界に広く分布し、米、野菜、魚介類の内臓などを摂取することにより、一部が体内に吸収され、主に腎臓に蓄積し、カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取することにより、腎障害を引き起こす可能性があります。

 しかし、国内において、環境対策、米の栽培管理などの対策により、現在のカドミウム摂取量は著しく減少しており、「内閣府食品安全委員会」では、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられると評価しております。

 また、カドミウムについては、体内蓄積性が高いため、国内における対策が取られる前に摂取したカドミウムによる健康影響の可能性を述べた研究結果はありますが、同委員会では、現在、カドミウムの汚染地域に住んでいるなど、カドミウム摂取量が多いと推定される人でも、食品全般からのトータルの摂取量は健康に悪影響を及ぼさない程度であるとしております。

 県としましては、現段階ではカドミウム摂取における健康影響を過度に心配する必要は無いと考えておりますが、引き続き国における健康影響評価の見直し等の動向を注視してまいります。

 

石田

次にネオニコチノイド系農薬の使用禁止などについてお伺いします。

東大大学院の山室教授らによる昨年八月の調査で、秋田市の水道水から、EU基準の八・七倍のネオニコチノイド系農薬が検出されたと発表されました。ネオニコ系農薬は、神経系に影響を与える恐れなどが指摘されており、秋田市民から、とりわけ小さなお子さんを持つ親御さんから、不安の声が上がっています。

新聞報道によれば、秋田市水道局へ検査や改善を求める要望が届いているようですが、問題は農業の現場にあります。いうまでもなく、ネオニコ系農薬は、湯沢から横手・仙北平野、秋田市などの水田で、カメムシ防除のために散布されたものが、すべて雄物川に流れ込んでくるものです。浄水施設の改善により水道水では除去できたとしても、その多くは海へと流れだすわけなので、海の生物への影響を考えると、そもそも、そうした農薬を使わない農業へ転換すべきではないでしょうか。

国の「みどりの食料システム戦略」に化学農薬の使用量の五〇%低減が打ち出されていますが、二〇五〇年まで待たなくとも、全国に先駆けてカドミウム低吸収米を取り入れるこの機会に、秋田県産の農産物がどの県よりも安全だと評価され、そこに付加価値が付くような農業に舵を切りませんか。

具体的には、カメムシ防除を行わない農業が成り立つように国の検査基準を見直すこと、二等米の値段を一等米と変わらないくらいに上げること、斑点米を除去するための色彩選別機の導入などが考えられます。大潟村では、一等米と二等米の値段の差は三〇〇円だそうです。また、色彩選別機で選別したコメは一等米で販売できます。

県として、改めて検査制度の見直しを国に要望してはいかがですか。また、色彩選別機導入へ補助を出してはいかがでしょうか。

さらにサキホコレを特別栽培米として販売され人気が出ているように県産米全てを特別栽培米にしようと旗を振るのはいかがでしょうか。

物価高騰で農家から悲鳴が聞こえてきます。農薬や肥料が半減できるならコスト削減で助かりますしエコライスとして評価が上がり一石二鳥と言えます。また、学校給食をすべてオーガニック食材にし、有機農業を支援し拡大していく考え方はないでしょうか。知事にお伺いします。

知事答弁

現在、国では、農薬取締法に基づき、ネオニコ系農薬も含めたすべての農薬について、最新の科学的知見により、安全性に関する再評価を行っているところであり、県としましては、その結果を踏まえて、適切に対応していくことにしております。

 また、米の検査制度の見直しについては、令和元年度の農産物検査規格検討会で協議されたものの、各委員から賛否両論の様々な意見が出され、結果的に改正には至らなかった経緯があり、引き続き、国の動きを注視してまいります。

仮に、ネオニコ系農薬を使わない場合、着色(ちゃくしょく)粒(りゅう)が多発する可能性があり、すべてを色彩選別機で除去する方法は、歩留まりや作業性の悪さに加え、経費が掛かり増しになるなど、現実的には困難であると考えております。

 一方、環境負荷軽減への関心の高まりなど、社会ニーズに対応していくことも重要であることから、環境直接支払交付金の活用を促進するほか、サキホコレについては、特別栽培を標準化することにしております。

 また、有機農業については、大潟村やにかほ市において、国の交付金等を活用しながら、機械除草の実証や、学校給食への有機米の供給などに取り組んでいるところであり、こうしたモデル的な取組が各地で展開されるよう、市町村に働きかけてまいります。

 

石田

次に白神山地の活用と原則入山禁止解除について質問します。

私は白神山地の活用について、特に核心地域の原則入山禁止解除について何回も議会内で発言してきましたが、一向に進まないので疑問だけが残っておりました。

ところが六月議会で髙橋武浩議員が一般質問で取り上げてくれたことで意を強くした次第です。白神山地が世界遺産になって今年は三十年になる記念の年ですが、喜んでばかりはいられません。環境省によれば、白神山地への入山者は、調査を始めた二〇〇四年度に比べ、五分の一にまで激減しています。この事態をどう見るのか。少子高齢化、登山人口の減少ばかりが問題ではありません。白神山地の秋田県側の核心地域が「原則入山禁止」になっているのが影響しているのではないでしょうか。白神山地のブナ林は全体で一三万ヘクタール、そのうち原則入山禁止の秋田側の核心地域は二四六六ヘクタールで、全体の二%に過ぎませんが、全国の山の愛好者の多くの人々が、白神山地全体が入山禁止だと思っているのではないでしょうか、「禁止」という言葉がきつすぎて「白神山地は、来てはいけない山」と思われてしまっているのではないでしょうか。他の自然遺産の利用者数も減少傾向にあるものの、白神山地ほどではありません。

一方、白神はピーク時八・一万人が昨年は一.六万人となっており、うち秋田側は三〇〇〇人と他の遺産地域と比べて極端に少ないのです。

一番の理由は青森県側と違って「入山禁止」が独り歩きしているからではないでしょうか。

白神山地の管理計画は、世界遺産になって入山者が増加するという前提でつくられましたが、実際には入山者は激減しております。

前提条件が変わったのだから、「入山禁止」の役割は終わったといえます。

世界の自然遺産を見ると、ほとんどは入山者数が多く人気が強いのです。

以前、ニュージーランドの世界遺産ミルフォードトラックを視察した際に二年前位から予約があるという話を聞きましたが、環境も守られ、ほとんど心配がないとのことでした。

現在の白神山地で入山している場所も環境を破壊する行為は見られないのではないでしょうか。山を愛する方に自然を汚す方はいないと思われます。

時代の変化に対応して、管理計画を見直す時期ではないでしょうか。

一九九七年三月九日の世界遺産地域懇話会において、核心地域への立入の対応が話し合われました。この時も「入山禁止」の言葉は使っていないそうです。翌三月十日秋田魁新報夕刊によると「入山は遠慮してもらう」と表現しています。

それまで、自然保護団体の間では、世界遺産になり、大勢の入山者が入ると予想して「入山禁止」の言葉を使っていたのでしょうが、いくら何でも「禁止」ではきつすぎます。法律的な拘束力はない、ということで、結局、「遠慮」の表現で落ち着いたと聞いております。

管理計画を実施する際も、環境省の幹部が、「今回は入山禁止と決めたが、これは見直しを前提とした試験的な入山方法である。モニタリング調査を見て、早ければ二年後に見直す」と約束していたそうです。

入山禁止の管理計画を見直すのは、手続き上、何の問題もないと思います。

最近の報道では、八峰町の堀内満也町長が入山禁止を見直し、「ガイド付き入山」の可能性について発言をしております。

藤里町長は、今年の三月議会で、個人的な考えとして「人数を制限して入山できるようにしてもいいと思う」と述べております。

地元の首長が入山禁止の見直しについて発言したことは、大変意義が大きいと考えます。

先に紹介したミルフォードトラックでは、入山は、ガイド付きで一日八〇人と、完全予約制でした。

予約制であり、「禁止」ではない。白神山地でも「ガイド付きで一日、何人と予約制にすれば、世界遺産の保護と利用が両立できるのではないでしょうか。地元のガイドの雇用創出にも役立ちます。

大事なのは、「白神は行ってはならない山」と思われないようにし、「禁止」というイメージを与えないことです。

周辺市町村の過疎化対策に資する可能性も秘めており、せっかくの世界遺産を最大限に活用すべきです。「人を入れない」のままでは、宝の持ち腐れと言うほかありません。

青秋林道が中止になり世界遺産登録になった時は入山を許可すると数百万人も訪れて自然破壊が起こると考えたかもしれません。しかし、海外では逆に人手によって守られているのです。

二〇二一年に北海道・北東北の縄文遺跡群が、待望の世界文化遺産に登録されました。白神山地に近い、鹿角市の大湯環状列石や北秋田市の伊勢堂岱遺跡も含まれています。縄文人はブナの森で木の実を採集し、魚や獣を追って狩りに出ていたのです。自然の恵みを受け、生かし、人と自然が共存する世界を作ったのです。ブナの森と縄文文化とは本来ワンセットといえるのではないでしょうか。

それなのに自然遺産白神山地は入山禁止にして自然と人間を隔離してしまったといえます。

北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産となったのを好機と捉え、見直しの検討をすべきであります。

今からでも遅くない、自然を荒らさない状態を保つ規制を設けながら条件を付して入山を認めることが自然を愛することになるのではないでしょうか。

そのために海外で何十年も前から行っている取り組みに学び早速検討をはじめていただきたい。

明日からというわけにはいかないため、登山道開設、専門的ガイド養成など、それなりに準備期間が必要であり、そのための検討機関についても設けていただきたい。

北海道・北東北の縄文遺跡群が、待望の世界文化遺産となったことから、白神山地と周辺地域一体を広く世界にアピールするために、大館能代空港の愛称を「白神空港」とすることも提案したいがいかがでしょうか。他地域の世界遺産と白神山地を比して現状をどのように考えるのか、入山禁止解除についてどのように考えるのか。知事の考えをお伺いします。

知事答弁

国内五か所の自然遺産のうち、白神山地以外の地域については、遺産登録以前から国立公園に指定され、登山道など利用が進められておりましたが、白神山地は、東アジア最大級のブナ原生林の存在が評価され、世界遺産に登録されたものであり、他の自然遺産とは利用状況等について、単純に比較できないものと考えております。

 また、核心地域の入山につきましては、遺産地域管理計画において、「既存の歩道を利用した登山等を除き本地域への立入りを制限する」としており、既存の登山道等があった青森県側の核心地域を除き、原則立入り制限とすることを、東北地方環境事務所、東北森林管理局、秋田・青森両県、両県教育委員会で構成される「世界遺産地域連絡会議」において平成九年六月に決定し、現在に至っております。一方、同会議においては、平成二十四年から入山禁止解除の検討を継続しているものの、地元や各方面の意見等を踏まえる必要があり、これまでの意見交換会ではどちらかと言えば否定的な空気が強く、一朝一夕にはいかないものと捉えているところであります。

今後も議論を継続していくとともに、先進的な取組事例を研究していくほか、地元ガイドからは、まずは緩衝地域をさらに活用していくべきとの意見もあることから、関係機関や事業者と連携しながら、縄文遺跡群との相乗効果を狙った活用を図ってまいります。

 なお、議員ご提案の大館能代空港の愛称変更につきましては、同空港の愛称は空港圏域全体のイメージを全国にアピールでき、かつ圏域の方々に愛着をもって受け入れられる必要があることから、引き続き、利用促進協議会等の場において、関係市町村とともに広く議論してまいります。