シドの通された広間には、既にローデリア国王を始め、五大国の国王がシドの要求通り一同に介していた。
『おー、ちゃんと集まってるみたいだな』
そのシドの言葉に、一人の国王がここにいる全員を代表するかのように口を開く。
『シド…と申したな。そなた本当に魔王を倒したのか?』
グランベルト国王の言葉に、シドは表情を変えずに答えた。
『当たり前だろ?だから俺は帰って来たんだ』
『貴様!国王様に向かってその口のきき方はなんだ!!』
グランベルトの宰相がシドに噛みつく。
『まぁまぁ落ち着いて下さい。シド様がお戻りになられた事が何よりの証ではありませんか?ねぇ、父上?』
そんな二人のやり取りをやんわりと納めようと、ローデリアの姫が父である国王に賛同を求める。
『うむ。確かにその通りだ。よくぞ困難に打ち勝ち、無事に戻った。……そなた、他の者逹はどうした?こちらの記録によると、そなた逹は4人パーティーとなっておるが?』
その問いかけにローデリアの宰相が補足を加える。
『シド様のパーティーは我が国が誇る四人で結成されております。ここにおられるシド・アルマーク殿、ローデリアが誇る武人アレン・クレイドル殿、シュミナ教大神官の御息女ニーナ・シュレイン嬢、偉大なる大魔導士バルクホルンの正当後継者エリシャ・バルクホルン嬢』
宰相がシドのかつての仲間逹の名前を読み上げる。
『シドよ、他の者逹はどうした?ここに来られない理由でもあるのか?』
『来られる訳ねーよ。皆死んじまったからな』
その言葉に、広間にいる全ての者が言葉を失った。
『あー、皆死んだって言うのは正しくねぇな。アレンは確実に死んだ。エリシャは多分死んだ。ニーナは死んだと言えば死んだのかもしれねぇな』
シドはまるで他人事の様にそう訂正した。
『シド様…なんとお悔やみ申し上げればよいか……』
『あー、そう言うのはいらねぇよ。俺達もそんな言葉を貰うために旅してた訳じゃねぇからな』
シドはローデリアの姫にヒラヒラと手を振る。
『そのような事があったとは…辛い事を聞いてしまったな…』
『あー、だからそう言うのはいらねぇって』
シドはローデリア国王の言葉に、うんざりとした声でそう言った。
『こんな事を話す為にあんたらに来てもらった訳じゃねぇよ』
『我等もその様な話を聞く為に集まった訳ではない!』
貿易国クロスルディの国王が声を荒らげた。
この国王は、先程から何かに怯えるように苛立ちを隠せない様に見える。
『その通りだ!魔王を打ち倒した証拠でもあるのか!?』
ローデリアの隣国であるアルージャ国王が、クロスルディ国王の後に続く。
『その通りだ。証拠もなしに信じられる物ではないな』
グランベルト国王が皮肉を込めて言った。
この様に各国がシドの偉業を認めたがらない事には訳がある。
各国はこぞって勇者と呼ばれる者逹を魔王討伐に送り続けている。
魔王を打ち倒した勇者の属する国は、世界中から称賛を浴び、今後の新しい土地の支配分与にも大きく関係してくる。
だから、魔王を打ち倒した勇者は自分の国の勇者でなければ納得出来ないのは無理もない。
『そりゃその通りだな』
シドは首をすくめた。
そんなシドにローデリア国王が助け船をだした。
『本当かどうかの論議は、シドの話を聞いてからでも遅くあるまい。その為に全ての国王を呼んだのであろう?』
『ん?あぁ、まぁそんな所だな』
『私もシド様の旅のお話を是非お聞きしたいですわ』
ローデリア姫が目を輝かせながらそう言った。
『そうだな…それじゃまずは食い物の話でも…』
『誰が食べ物の話をしろと言った!』
クロスルディ国王の罵声が、シドの言葉を遮った。
『うるせえな!黙って聞けや!』
シドの怒りさえ感じさせる一言に、クロスルディ国王は何も言えなくなり苦虫を噛み潰したような顔をして黙りこんだ。
『聞きたい事は後で答えてやる。それで文句はねぇな?』
シドは一人一人の国王の顔を見渡した。
誰もシドに対して言葉を発する者はなく、シドは再び話始めた。
『食い物って大切だよな。旅をする上で一番大切だ。食い物がなけりゃ生きていけない、だろ?』
『確かにその通りだが…』
ローデリア国王がやや困惑の表情を浮かべる。
『俺達が一番苦労したのも食い物だったよ』
シドは目を細めてそう言った。
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