(前回の続きです。)


日が経つにつれ、息子の語彙は次第に増えましたが、土特の開始や教材難化の影響を受け、辞書で調べる言葉の数も同じく増えてゆきました。


負担が特に増したのは、6年秋でした。
SS開始、過去問開始、オープンラッシュに加え、学校説明会、文化祭と、各種のタスクが想像以上に膨れ上がりました。


中でも大変だったのは、SS特訓です。
息子は単科講座では、「記述表現力講座」を受講しました。
そしてそこで、『筑駒対策プリント』の演習を行いました。
筑駒は、文章自体は平易な場合が多いですが、記述が多く、解き直しには時間が掛かります。


一方SS特訓「志望校別講座」では、息子は『開成対策プリント』を演習しました。
こちらも記述が多く、語彙のレベルも高いため、解き直しにはやはり相当時間が掛かります。


これら2つのタスクが学習時間を吸い取るようになり、我が家は全てのタスクを解き直すのをギブアップしました。


そして、優先順位の高いタスクを先生に尋ね、低いタスクは時間があれば解き直すことにしました。


また、言葉の意味調べのほうも、簡略化しました。


マーカーを付し、調べるまでで終わりとし、調べた意味を書き込む作業を省略しました。


そして、息子と二人で解き直す際、マーカー箇所の語の意味を、私が彼に尋ね、彼は口頭でそれに答える形にしました。


この「一度調べた意味を思い出す作業」(=検索練習)が、記憶を強化するのを、私は中学受験のあとで知りました。


認知心理学の本によれば、「記憶は思い出す度に再構築され、強化される」そうです。


つまり、調べた意味を「読み直す」より、調べた意味を「思い出す」ほうが、学習効果が高いということです。


以下、『認知心理学者が教える最適の学習法』2022年 東京書籍 pp203-204 からの引用です。

“ 検索練習とは、過去に学んだことを記憶の中から引き出して、それを今、考えることです。
 つまり、何かを読んだり聞いたりして学んだ後、しばらくしてからその情報を思い浮かべたら、検索練習をしていることになります。
検索練習は情報を読み直すよりも学習効果が高く(Roediger&Karpicke, 2006)、さらには、学習に役立つと多くの人が考えている他の学習方法、たとえば、学習している資料を使ってコンセプトマップをつくる方法(Karpicke&Blunt, 2011)と比べても、検索練習の方が高い学習効果を示しました。 ”



なお、元々息子は「書いて覚える」より、「聴いて覚える」ほうが得意なたちでした。 
そんな彼には、意味を思い出して「言う」ことは、それを「聴く」ことにもなり、記憶の強化により繋がったのではないかと思います。
(逆に、書いて覚えるのが得意なお子さまは、思い出す作業を入れるとしても、最初一度は書くほうが良いように思います。)




以上、辞書選択と意味調べの手順を、記憶の仕方と共に振り返りました。


中学受験では、短い期間に多くの知識を覚えます。
お子さまの特性に合わせ、インプット方法を選択し、またインプットした内容を思い出す「検索練習」を重ねることが、短い期間により多くの記憶を定着させる鍵となるように思います。