そんな形で始まった彼と私の付き合い。

いつの間にか、半同棲になってた。

週に3,4日は彼の家にいた。

帰りとかも会社の近くで待ち合わせたり、彼が仕事を終わるのを待ってたり。

彼が私を待っていてくれることはなかったけどね。

私も忙しかったけど、

彼も忙しかったから。

一緒に帰っても、ただシャワー浴びて寝る・・・それだけで、ほとんど話すこともなくて・・・そんな生活が楽しかったのかって言われると、

わからないけれど、

少なくとも私は彼と少しでも多く一緒にすごせることが癒しだった。

私は眠りが浅くて、遅刻しちゃいけないとかいうプレッシャーもあって、

夜中(寝るのも毎日3時とかだったけど)、ふと目覚めたときに

隣で彼が寝てるのを見ると安心できてた。

疲れてると男の人って自分の世界に入ってしまう。

彼もそう。特にそんなタイプ。

けど、うれしかったのは、寝るとき先に彼が寝付いても、

私が隣で寝るときには気がついて、手をつないでくれる・・・それが救いだったかな。

あ、私、ちゃんと彼の隣にいるんだって・・・そう思えた。

その頃の私は、だんだんと心も体も壊れていってるときだったから、なおさら不安だったんだよね。


でも、“やってみなければわからない”・・・この思いがあったから、必死だった。

この思いが、私を支えていたのかも。

それからいろいろあって・・・

この間、彼は家族の話をすることはあっても、実家の近くまで一緒に行くことはあっても、

私を直接連れて行ってくれることはなかった。

なんとなく、わかってたことではあったけど・・・

それに私にも、彼との将来が見えなかった。

なんていうのかな、一緒にいたい、結婚したいとは思っても、具体的に私と彼が生活している姿、イメージがまったく浮かばなかった。

なんとなく、終わりに近いって・・・ずっと心の中で思ってた。

そんな私の予想が的中して、その“時”はやってきた。

私が彼に言ったんだよね、「言いたいことがあるでしょ?言ったら?」って。

しばらく時間があって、それから彼は言い出した。

「俺の親父は頑固だから、今、君が上司で悩んでいるようじゃ、親父を世話できないだろう。

それに、君の仕事は忙しい。君はきっと家族を大切にする、大切にしてくれると思う。それはよくわかってる。


けれど、君がどんなにそうしようとも、仕事が君を許さない」


そう言った。


もちろん、私は反論した。

「やりもしないのに、勝手に決めつけないでよ。やってみなければわからなじゃない」と・・・何度もね。

でも、彼は頑なに拒んだ。

最後に彼が言ったのは

「隙だけじゃ結婚できないから」という言葉。



なんでなのかな・・・人間、年をとっていくと、やったこともないのに「これはダメ」とか、

無理とか、できないだろうとか・・・

そう決める傾向がある。

仕事ではそれもありだと思う。

でもさ、人生・・・自分の生き方でそれってとてももったいないっていうか・・・

どうして最初からあきらめちゃうのって思うことがある。

「結婚」ってとても大きなことだけど、

でも本当に「やってみなければわからない」。

ましてや、その一歩も踏み出すことなくやろうとしないのは・・・寂しい。


そんな過去の出来事を、親友の一言で思い出した。

恋愛も結婚も、やってみなければわからない・・・

だから、未知で楽しい。時には泣くこともあるけれど、そういうこともあるから輝ける。

そう思う。


こんなことを言う反面、あのときの出来事を思い出して、いつも思う、

悪いのは彼じゃなくて私だって。

彼は彼なりに精一杯だったって。

彼も辛かったって・・・わかってる。

だから彼を責めはしない。


今も同じ会社にいるけれど、もう2年近く会ってない。

居場所は知ってる。

けれど、会えない・・・会ってはいけない。

彼が昔の嫌な思い出を思い出さないために。

彼もまた、私のその後を知らない。知らないままのほうがいい。



まだ彼は結婚してないんじゃないかな・・・

だって、仕事も両親の世話もしてくれ・・・なんて最初からそんな条件で付き合おうとする女・・・現実的に考えたらあんまりいないと思うから。

でも、それも「やってみなければわからない」ことだけど。