関西直通のメリットって? | 鉄道きさらんど

鉄道きさらんど

いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

佐賀県にも「フル規格」長崎新幹線は必要だ費用負担は合理性欠くが確実にメリットある

https://toyokeizai.net/articles/-/258641

こじれる長崎新幹線、実は佐賀県の“言い分”が正しい https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1905/17/news035.html
 
この人はフル規格推進の国やJR九州や長崎県よりも懐疑的な佐賀県のほうに理があるとわかっていながら、フル推進を持論として曲げないという立ち位置だが…。個人的に思うのが、この人に限らず鉄道ライターという人はなぜか自治体と、国・鉄道事業者の意見が対立すると得てして後者に肩入れする傾向があるなと思っている。これは邪推すると、鉄道ライターというのは国交省やJRなどの鉄道会社から取材させてもらって仕事が成り立つ稼業なので、鉄道業界の機嫌を損ねるような論調の記事を書いて食い扶持をなくしたくないという判断があるのかもしれない(JR北海道と道内自治体の意見対立の問題でもそういう傾向がある思うが)。
 
そもそもこの、フル規格化すれば関西とつながりが緊密になるからコスト以上のベネフィットがたくさんあるという前提もいささか疑問を感じたたり…。「佐賀県は費用対効果に疑問を持っているけれども、視野を京阪神直通まで広げれば、佐賀県にも利点の多い話だ。」(https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1905/17/news035_5.html)うーん、「阪神」はともかく、東海道新幹線に乗り入れ自体がとても期待薄だから「京」直通という利点を将来得られるととても思えないだろう。(それが可能なら、時間はかなりかかるが東京や名古屋にもつながるのでさらに経済効果は大きいが、佐賀県もそれはできないと思っているのだろう)
 
そもそも長崎・佐賀と関西がフル新幹線で直通すれば多大な経済効果や地域活性化が見込めるという前提にも今や疑問があるのではないだろうか。そもそも西九州と関西のつながりが今まででもそんなに大きいか?と思う。ふと手元の鉄道ジャーナル2009年12月号の斎藤雅男氏の連載エッセイを読んでみた。氏が国鉄門鉄局にいたころ、1958年ごろに列車課長として鉄道近代化のために九州の地域事情を調べたが、その時の最優先課題は門司中心の列車体系を博多中心に変えることで、長崎でも「県民の要望は、長崎-博多間を、せめて日帰り出張ができるように、もっと便利にしてもらいたい」という意見があったという(161頁)。また斎藤氏は「どこの市と打ち合わせをしても、「福岡に行けば、仕事の90%は片付く。残りは東京だ」という声を耳にした」と書いている。(161頁)はるか昔でも九州各地と福岡、そして大阪より東京のつながりが強かった。それから飛行機や東海道・山陽新幹線の発達などで時代が変わったとはいえ、ビジネス面での佐賀や長崎と関西のつながりはさほど強いのだろうかとは思う。大阪には大阪独自の産業や企業がいろいろあるが、ただでさえ大阪などの地場産業が衰退し、経済が地盤沈下するので今後は大阪を通さず直接東京とのビジネスでのやり取りが重要になる。前述したように長崎ルートをフル化しても東京につながると思えないし、まかり間違ってもしつながっても時間がかかりすぎて飛行機利用者は見向きもしないし、日本の地方に人口減少や過疎化に今まで以上に拍車がかかる遠い将来に巨費をかけて大阪までつながる事に今や意義が感じられないのではないだろうか?
 
観光にしても、そりゃあ2点だけを移動する飛行機と違って大阪とか広島とかを広域観光するツールに新幹線は使いやすいからそれでほり起こせる需要はあるだろうが、これも長崎ルート全区間フル化ができたとして遠い将来日本の人口は減り、今のような円安・五輪景気やインバンブームがしぼんでいるであろう未来の観光客のために自治体が税金から費用負担をして、住民の生活の足である在来線が不便になるリスクを負ってまで協力できるかという話。ただ観光資源としては在来線より新幹線のほうがインパクトがあるというのは事実かもしれないが。鹿児島ル-トが新八代以南だけの部分開業のころは飛行機で着地してから新幹線区間だけを行程に組み込む九州周遊バスツアーがあったり、北陸新幹線金沢開業時も金沢-富山間だけお試し乗車するのを行程に組み込んだバスツアーもあった。