2023年春、山梨県の山中湖村付近のホテルで、国内の指定暴力団傘下組織の幹部らが香港マフィアとみられる外国勢力との会合に参加していた疑いが浮上した。

 

この“密会”は、裏社会における組織の国際的な連携の一端をあらためて示すものとなった。

捜査関係者によると、国内の暴力団傘下組織に所属する複数の幹部が、暴力団員であることを隠し、宿泊を禁止しているホテルに宿泊していた疑いで逮捕された。


この宿泊に伴って、香港マフィアとみられる人物らと「盃事(義兄弟の契り)」と称される儀式を交わしていた動画も確認されている。

このような動画は逮捕された人物らの押収された携帯電話から出てきたものであるとみられる。
ホテルのレストランを貸し切って行われたとされ、出席者約30人規模ということも発表されている。

 

 

「盃事を行える広い事務所なんて今時ない。ホテルのレストランを借りて行う組織が増えている」
つまり、国内の暴力団は監視・取り締まりが厳しくなる中で、海外勢力と関係を深め、資金や事業の多角化を進めているとみられる。

 

 

捜査当局は、暴力団排除条例や反社会的勢力排除の枠組みを活用して宿泊契約詐欺の疑いなどで捜査に入り、複数の逮捕が実際に行われた。
このような“義兄弟の契り”を伴う会合は、組織的犯罪処罰法や犯罪収益移転防止法、暴力団対策法など、複数の法制度が交錯する領域である。特に、暴力団と外国マフィアとの連携が裏付けられた場合、資金洗浄・薬物等の国際取引・マネーロンダリングなどの広範な捜査対象となり得る。

 

 

この会合の報道は、我が国の裏社会の構造が“国内だけ”の問題ではなくなってきていることを示している。
歓楽街・夜の街という“ローカルな場”から、国際犯罪ネットワークとの接続点が浮上してきており、これまで見過ごされてきた“海外への出口”が顕在化しつつある。
さらに、ホテルや貸し切りレストランという一見無害な場所が、儀式・会合の舞台となることで、監視・摘発が難しくなる構造も見えてきた。

 

裏社会の国際化は、目立つ形では進まない。
盃事のような伝統的儀式や、ホテル・飲食店などの民間施設を利用した偽装会合は、監視の目を逃れるための新たな手法として定着しつつある。
組織同士の連携は、かつてのような派手な抗争や露骨な利権争いの形ではなく、資金・人材・情報の共有を通じて静かに広がっている。

 

 

それは、表向きには穏やかな社会の裏で、蜘蛛の巣のように複雑に結びつき、見えない網を広げていく構造ともいえる。
日本の裏社会は今、静かに、しかし確実に、世界とつながり始めている。