2022年7月、東京・歌舞伎町の居酒屋で起きた恐喝未遂事件は、夜の街の「見えない支配構造」を改めて浮き彫りにした。

 

東京・歌舞伎町の飲食店で、住吉会系「十三代目幸平一家」傘下組員が居酒屋店の関係者に対して金銭を要求する事件が発生した。
この事件は、暴力団排除条例施行から十年以上が経過した現在もなお、夜の街に残る“支配構造”を象徴している。

 

 

この事件は、ある飲食店の経営者が営業形態を変更した直後に起きた。
男たちは「報告もなく店を変えたのか」「使用料を払え」などと脅し、店内で関係者を取り囲み、身体的な暴行を加えながら現金を要求した。


金額は数十万円規模にのぼり、いわゆる“みかじめ料”や“あいさつ料”の延長線上にあるとみられる。

被害者側は警察に相談し、捜査は、都内の暴力団対策課と地域警察が連携して行われた。
事件発生現場には明確な暴行の痕跡が残っていたことから、比較的早期に事件化されたとされる。

その後、恐喝未遂容疑で組員関係者が逮捕された。

 


ただし、関係者の多くは黙秘を続け、背景にある「使用料」システムの実態把握は困難を極めた。

警察はこの事件を、単発の恐喝未遂ではなく、歓楽街全体における「反社会的勢力の資金源」摘発の一環と位置づけている。


行政と連携しながら、出店報告制度や営業許可の審査過程を厳格化する方針も示された。

 

 

本件の容疑は「恐喝未遂」にあたる。刑法第249条・第250条では、恐喝罪は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされ、未遂であっても処罰の対象となる。
近年の類似事件では、暴力団関係者が実刑判決を受けた例も多く、特に「組織的恐喝」と認定された場合は執行猶予が付かないケースもある。

 

 

歌舞伎町では、店の「安全」「秩序」を口実に金銭を要求するケースが依然として存在する。
形式上は“トラブル仲裁”や“管理”を名目にしており、暴力団排除条例をすり抜けるように設計されている。
一方で、被害を受けた店舗側は報復を恐れて通報をためらう傾向があり、事件が表に出にくい構造が温存されている。

この事件は、表向きの繁華街の華やかさの裏で、いまだに続く「暴力による秩序維持」の実態を示す一例である。

 


それは、単なる恐喝事件ではなく、都市の闇がどのように再生産されているかを映し出す鏡でもある。