表向きはバーやラウンジだが、常連だけが知る合図で奥の扉が開く。

そこに並ぶのはスロット台、カードテーブル、そして見張り役。
この場所の本当の主は、店主でもスタッフでもない。

裏で金を流している“胴元”――つまり、暴力団だ。

 

 

グレーゾーンから始まった“日本型ギャンブル”

日本のギャンブル文化は、もともと“グレーゾーン”の上に成り立っている。
パチンコはその代表例だ。

表向きは「遊技」だが、景品を買い取る「三店方式」で実質的な換金が行われる。


この仕組みは戦後の混乱期に生まれ、暴力団がその利権を押さえていた。換金率の調整、台の搬入、警備――どこにも彼らの影があった。

 

一時期、警察との協定で表面からは姿を消したが、
「裏スロット」「闇カジノ」といった形で今も金の流れを支配している。

 

「海外企業の運営を装い、実際は国内で集金」という構図だ。
中にはSNSで「スタッフ募集」「アフィリエイト報酬あり」と称して若者を集め、運営の片棒を担がせる手口もある。

表に出ない資金の流れ、海外口座を経由したマネーロンダリング。
ギャンブルはもはや遊びではなく、“資金洗浄の舞台”となっている。

 

 

オンラインカジノという新たな“裏の賭場”

近年、暴力団が目をつけているのがオンラインカジノだ。
海外の合法カジノサイトを装いながら、日本人プレイヤーを対象にした“実質的な違法サイト”が増えている。
SNS広告や配信者のステマによって利用者が急増し、そこに暴力団が参入する。
運営側の「顧問」や「仲介」として関与し、口座の管理や現金化ルートを提供しているのだ。

中には、配信者を使って「勝てば儲かる」「安全に稼げる」と宣伝させ、
利用者を借金漬けにして裏金融へ誘導するケースもある。
警察の摘発が進んでも、サイトは次々にドメインを変えて再登場する。
“地下の賭場”がインターネットに移動しただけで、構造そのものは何も変わっていない。

 

 

なぜ暴力団はギャンブルにこだわるのか。

理由は単純。
ギャンブルは「現金が動き、人の欲望が集まる場所」だから。
薬物や詐欺と違い、参加者の多くが自発的に金を賭けるため、罪悪感が薄い。
だからこそ、裏社会にとって理想的な“シノギ(資金源)”になる。

 

 

さらに、賭場には“情報”が集まる。
誰が金を持っているか、どんな人脈を持つか。
そうした情報をもとに、別の商売――投資詐欺・闇金・風俗――へと繋げていく。
ギャンブルは単なる稼ぎ場ではなく、“裏経済の中継点”として機能している。

 

 

カジノ法が整備されても、暴力団が完全に姿を消すことはない。
法が整えば抜け道を探し、規制が強まれば海外へ逃げる。
それが裏社会の生き残り方だ。

いまや賭場はビルの一室にも、スマホの中にもある。
そして、どちらの場所でも金は同じ方向に流れていく。
胴元が誰であれ、最終的に勝つのは“仕組みを作った側”だ。