あぁ…なぜ　こんなにも不完全なのか

どうして分からない　どうして分かろうとしない

ちぐはぐで隙間だらけ　まるで壊されるのを待っているかのように

もう繋げられない　独り立ちの時がやって来た

松岡圭祐さんの　【高校事変２０】

彼らに目的という概念は存在しない。人生は死ぬまでの暇つぶしに過ぎず、いかに生得的本能の赴くまま、享楽を極められるかに重点が置かれる。むろん法律などは度外視する。社会の構造というものは、ただ利用するためにだけにある。人生に意義を求めたがる大衆を踏みにじりながら、好き放題に暮らす。法の束縛を一切受けないのだから、享楽はたいてい人を殺し、金品を奪うという日課とともにある。

世間は戦々恐々とするかと思いきや、妙な平穏な日々が続いている。地方で大災害起きた直後の都内の風景、そんな印象に近い。途方もない事態の発生を知りながら、言及するとタブー視されるのをいいことに、あたかも無風のように自分の心を欺いていく。タブーに触れない対価として、波風の立たない日常が保証されているように感じだす。

ありえない。この世は酔狂が過ぎる。何が起きているのかまだ不明だ。だが真実を知らずにはいられない。運命に足掻らうのをあきらめたら死に瀕する。半グレの家族に生まれた以上、それが人生の鉄則だった。

――ー「一流私立の幼稚園舎から大学まで上り詰めた良家の育ちで、ほんとに国民のことなんかわかってるんですか⁉　公立じゃ恐ろしく馬鹿な奴らが乱暴にふるまって、おとなしい子を虐めてる。教師は無視してる。親も何も言わない。女の子が変態の犠牲になるのも、どういうわけかある程度は仕方がない、社会が容認してやがる」

「そんなことはけっして……」

「国が裕福だったころに何の努力もせずに浪費して、今になって私たちにツケをまわしてる！　何か意見すれば、若者や未成年は無知だから、そんな解釈で一蹴される。十代のほうが知力も体力も勝ってるってわからないですか？　まして犯罪者の家系というだけで差別して、何一つ耳を傾けようとしないなんて」

「私たちは耳を傾けようとしてきた！　だが治安の悪化に歯止めがかからない現状では、緊急に現況を取り除くとの判断が下ることは、国家として――ー」

「国家だなんて！」結衣は怒鳴った。「武蔵小杉高校をジンたちが襲撃した瞬間、あなたはいったい何してたよ⁉　腰抜かしてSPに守られ逃げ回ってただけだろうが！　なんでみんな死ななきゃならなかったんだよ。あんたが高校に来たからだろうが！」

矢幡は衝撃を受け絶句しているようだった。愕然と見つめてくるまなざしがある。いま矢幡が何を考えているか、結衣は想像する気にもなれなかった。

どうせ堂々巡りだ。政治家の主張など火を見るより明らかだった。世間も同調するだろう。国家という枠組みを保ち、多くの幸せに貢献するため、多少の犠牲は仕方がない。だがそれはごく少数の立場に置かれたことのない人間の声だ。伊織は放っておけば、自ら命を絶っていた。そうでなければ虐待死していた。結衣たち全員が似たような境遇だった。大人の身勝手な犯罪者事故に巻き込まれ、理不尽に命を落とす未成年みんながそうだ。

結衣はつぶやいた。「この世は欠陥だらけ。救いようが無い」

結衣たちが死ねばいいのか。それで丸く収まるのか。いや、十代の少年少女を犠牲にしたがる国家の狂気は、戦時中と何も変わっていない。政治家は追いつめられるとすぐそうなる。

――ー

全てが終わり、国の過ちが白日の下にさらされた時、かつての国家の犬たちは言うだろう。仕事だったと、間違いに気づいても従うのが仕事なのだろうか。結衣は心の中で毒づいた。十代の子たちを強制妊娠させたり、障害者をまとめて葬り去ろうとしたり、戦争を起こしてアジアの勢力圏を書き換えようとしたり、そんなものが愛国心かよ。EL累次体に与するあいつらは、死んで当然の奴らだった。

システムの欠陥を抉り出し　とことん突き詰めていく

そうすることで「自由気まま」に生きる　どこまでもケモノとしてやりたい放題ができる……

たぶん反社の人たち　ならびに虐めっ子・悪ガキたちの行動理念

確かにそうすれば生きられそうな気がする　初めは隙間だけど徐々にこじ開けていけば勢力も拡大できる

大事なのはケモノであること　より刹那的に享楽的に混沌として囚われないこと

人生は死ぬまでの暇つぶし　生きている間にどれだけ愉しめるかだけ……

でもただ　そんなシステムの欠陥をシステム製作者が気づいていなかったのか？

後に気づけたとしたら　管理者がパッチ修正を当ててこなかったのか？

どんなものでも生きていれば成長し良くなっていく　たとえ病や怪我を負っても治癒していくもの

始まりの理念が正しく創始者が善意をもって行動したのなら　邪魔だてされない限り進化しつづけられる

それでも穴がふさがることなく広がり続けているのだとしたら　意図して欠陥を作っていた

もしもそうだったとしたら　ソレを作らせた者たちが独占しないわけがない

知らなかった隙間を見出した者がいたのなら　早めに潰して奪うか取り込んで懐柔する

現在までの日本社会で　第三勢力として力を振るうことは不可能なのでは？

あえて庇護して太らせている意図を感じてしまう　いわゆる作者(神)からの寵愛

どうして無理やりにでもそんなことをしているのか？　この虚構の中だけでも「彼ら」を活躍させたい意図はなんなのか？

世の中には人の皮を被ったケダモノがいる　暴力にはより強い暴力をもってしか対抗できない――ー

このいわゆる弱肉強食の考えを　世界の真実・人間の本性として刷り込みたい

最近のこの高校事変シリーズと現実の世界情勢の乖離から　そんなほの暗い悪意を感じざるをえない

……ゲスの勘繰りであることを祈るばかり

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決別 あの日の弱き「私」へ

決別　あの日の弱き「私」へ