不断なる努力と献身があれば　道は永遠だと思っていた

しかし老いは誰の身にも訪れる　神が定めた時限装置

甘受すべきが賢者の成すべきだろう　でも…舞い降りてしまった

今いちど日出国へ　きっと私の未来もそこから始まる

松岡圭祐さんの　【続シャーロック・ホームズvs伊藤博文】

やはり現実は冷酷だった。４９歳か。老いによる衰えなど、勤勉さや集中力で突っぱねられると信じてきた。だがいま自らの不完全さを受け入れざるを得ない。明日には『デイリーメール』紙を読んだ人々の嘲笑の種だろう。理性と研ぎ澄まされた至高だけが脳を満たしているはずだった。それが事実なら傷つく自尊心はない。なのにどうしてこんなに落ち着かないのか。胸に絶望の剣を突き立てられた。この痛みはおそらく誰にも分かりはしない。

若い頃と同じという自覚は、きっと一人よがりと背中合わせなのだろう。そんな苦い思いが胸に染みる。自分では若いつもりでいても他人の見る目は違う。きっと結果だけが己の価値を証明しうる。道のりはんばではひたすら謙虚であるべき。それが老練の人格者なのだろう。年配者の口数が何故少なく、ともすれば弱腰に見えたのか、その理由がようやく判然としつつある。臆病だったのではない、虚勢を無意味と学ぶだけの歳月を経てきただけだ。

「……ワトソン、父親としてそう思うのか？」

「君にもわかるはずだよ。生涯結婚はせずとも、君の類まれなる想像力を発揮すればね。この世に生きた証を残すとか、このためには死んでもいいとか、そんな言い方はどれも的を射ていない。強いて言うなら、子がいる限り永遠なんだよ。自分だけじゃなく、万物の全て、何もかもが」

ホームズは黙ってワトソンを見つめた。こんなに澄んだ眼差しのワトソンを向き合うのはいつ以来だろう。いや彼はいつも誠実な親友だった。ワトソンによって支えられてきた人生があった。

これは最後の挨拶ではない。たとえもう会えないとしても、思い出の中でつながっている。事件簿を振り返るばかりが成熟ではない。また新たな冒険がある。そう、人生は若き日日には何度でも帰還できる。

こんな影の総理・伊藤博文を妄想してしまうと　松岡圭祐さんの他シリーズとの連結もできてしまいそう

特に千里眼シリーズのメフィストコンサルティングの対抗組織として　この明治の時代から踏ん張り続けてきたとかも

あるいは高校事変シリーズとも　日本を支えてきた影の政府は大いに関与してきそう

色んな広がりや伸びしろを想像してしまう　史実とフィクションの融合は無限の未来を産んでくれる

あるいはやはり　著者だからこその結末なのかもしれない

終わらせるのか広げてみせるのか

フィクションは史実と向き合うことで　史実もフィクションをもって省みることで

互いの限界を突破できる

奇跡や魔法に近しい不思議な力を　感じ取れてしまう

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さらば寂寞たる老いの日々よ 我ついに永遠を見出す

さらば寂寞たる老いの日々よ　我ついに永遠を見出す