精子と卵子が融合し　胎児となる

人間はタンパク質の塊　全ては化学反応の結果

けどそれだけとは思いたくない　思えない直感がこの胸にはある

利用されてきたその想い　もう奪わせやしない

松岡圭祐さんの　【高校事変１８】

恐ろしい男だと藤蔭は舌を巻いた。凶悪犯罪者であることを忘れさせるか、もしくは犯罪自体が本当は間違ったことではなかったかもしれない。そんな錯覚に陥らせる。歯向かうよりは心を開く方が好ましく思えてくる。一時的に身を守るためにはそれもやむを得ない。

優梨国太は何かを実現したいと野望に燃えたわけではない。虎視眈々と計算に明け暮れたのでもなければ、陰謀を駆使したのでもない。東京がベイルートのような修羅場に、日本がレバノンの如き地獄になればいいと、ただ漠然と願ったに過ぎない。結衣が幼少の頃、父が口癖のようにそう言っていたからだ。治安が悪化し、強盗や殺人が多発、政府が有名無実化すれば、無政府状態が一層の混沌を生む。父はそんな社会を望んだだけでしかない。強いて言えば、“死人”だけに、ちょっかいを出すのは”生前”よりも容易だった。通信で声を変えるとか、権力者になりすますとか、どれも半グレ同盟がさんざん用いた手段だ。わざわざ世を乱すための工作と呼べるほどではない。

―――

たぶん父にとっても想像以上に、戦後日本は脆弱だった。無力攻撃になすすべはなく、いざというとき政府は役立たず、そのくせ国民は悲劇をたちまち忘れる。宗教や思想に染まるのはタブーとされいるため、自己批判の精神も育たたない。追い詰められるとナショナリズムが暴走し、独裁に操られ迷走、世界からも孤立する。今の日本の混乱は、父が仕組んだわけではない。武蔵小杉高校事変以来、ずっとこの国の本質的欠陥が露呈し続けている。日本は太平洋戦争に突入した当時と何も変わっていない。

―――「なんにもならねぇよ。ただ馬鹿どもが殺し合っているさまが、最高に楽しいだけでよ、絶望に怯えるツラも、断末魔の悲鳴も、とめどない流血も大好きでな。人間いつかは死ぬ。こうして自我が備わってるのなんて、神様の木マグえだろ。死ぬまでの暇つぶしに明け暮れるのが人生ってもんだ」

―――「おまえ、しょうもな！　俺はあれか、どっかの漫画に出てくるやつか？　しょうもな！　誰も見てねぇのに草木だけ生えてどうするよ。俺はただ人が死にまくって欲しいだけなんだよ」

―――

「いいか」―――「死刑になっても俺は命をつないでやる。代わりにほかのやつを吊るしてやる。ボタン押しの係員が悶え苦しむさまを、じっくり見物してやる。楽しみで今からぞくぞくしやがるぜ」

これが逮捕後の父の姿か……。虚飾の一切を排除すれば、ちっぽけで哀れな中年男に過ぎない。こんな男のために今ままで怯えてきたのか。この軽薄な手合いのもとに生まれたせいで、詠美は命を落とした。やり場のない怒りがふつふつとこみ上げてくる。

戦時中の若者を特攻へと行かせた責任者から、ごく最近の政治資金でキックバックを受ける閣僚まで、犯行を追求しても罪を認めるはずがない。あらゆる権限を有する国家の大物であれば、いくらでも逃げが打てるからだ。犠牲者の多さを考えれば腹立たしい限りだが、ここでEL累次体のメンバーを片っ端から殺害しても、似た連中が後継組織を結成してしまう。日本のみならず国家に特有の欠陥かも知れない。それでは結衣の兄妹が延々と社会から目の敵にされる。弾圧を回避するためには、不愉快でも取引するしかない。

対象だけを確実に殺してしまう殺人ウイルス―――

昨今のSFではよく登場する最悪な遺伝子科学の産物　証拠も残さず手間もいらない要人暗殺方法

遺伝子はあらゆる人物で違っていると言われてるので　できないことは無いとは思われる

ただでも　もしも本当にそんな殺人ウイルスができあがったとして　使用したとしたら

後にどんなことが起きるのか？　

自然界はカオス　一度解き放ったら何が起きるか・変わるか誰にも分からない

要人のみを殺すウイルスとして生まれても　放れた後もそうあり続けるとも限らない

すぐに死滅するようプログラムしても　生存本能が芽生えたらすぐに破棄されてしまう

ターゲットを殺害したあとも生存するとしたら　ウイルスの特性から他の対象・人間を襲わなければならない

すぐにでも全人類が対象の殺人ウイルスになってしまう……

ただそんな最悪な変貌を遂げる前に　他の細菌類たちが捕食して消滅させてしまうかもしれない

とにもかにも　何が起きるか誰にも保証できずまして責任もとれない

でも「彼ら」の欲望は　踏みとどまることができない……

SFだけの話ではなく　もう現実に・すでに解放されてしまっていてもおかしくはないはず

もしももうすでに使用されたとしたら？　要人の暗殺合戦をそこら中でしまくってきた

その結果・全ての統計データが取れることで　人間社会にはびこっている「悪」を特定できてしまう

論理とか言葉だけではなく　座標数値や遺伝コードのような確かな証拠

使用者たちはそれらを把握することはできない　全部を収集することができない

できるのは自然だけ　全てのウイルスとその変質や消滅までも記憶している

もしも自然に意志があったとしたら　大気を司っているだろう植物には確かに意志がある

収集したデータを元にして　迷惑極まりない人間だけを殺す殺人ウイルスを生み出すとは考えられない？

人間の遺伝子情報だけでなく　カオスでしかない大気情報もリアルタイムで収集し分析もできる植物たち

人間が作り出したウイルスよりも　はるかに高性能で確実なものを生み出せてしまう

ソレがいわゆる「コロナウイルス」だった……とかも

万が一にもそうだったとしたら　「彼ら」は本当に殺され尽くしたのかもしれない

外出のみならず呼吸すらできないとなったら　肉体の維持なんて不可能

残酷で残忍な悪党たちが権力の頂点で跋扈している社会　そんな現実も過去の幻想になってしまったのかも

そもそももう一つ　そんな特定のターゲットだけを殺害するウイルスの製造

機密も含めれば何十億レベルの大出費がかかってしまう金食い虫　その元が取り戻せるかすら分からない劇物

丑三つ時に藁人形に五寸釘をうつ　恨みの対象を呪い殺す呪術　

眉唾物とバカにして切り捨ててきたコレと　いったい何が違うの？

しかもコレの場合　必要なのは復讐心と藁人形・五寸釘のみ

たった一人でもできるし予算は一万円以下　理屈は分からず確殺ともいかないけど成功した実績が山ほどある

コレのほうがよほど適切な暗殺方法では？

最新鋭の遺伝子技術が　太古から続く呪術に完全敗北した……

「暗殺業」なる闇の仕事

最新のIT技術やら拳銃の腕前やら格闘技などなど　カネや時間や何より才能が必須な莫大な初期費用を考えれば

あまりにも割に合わなくなるし　何よりもバカらしくてやってられない

カネの匂いが消え去ってしまえば　自然と消滅してしまうのが人の世の理

それでも必要だとしがみつけば　詐欺師に堕ちるのも必定

必要な実力も実績もどんどん薄っぺらく嘘になり　最後は「いつの間に」かいなくなってしまう

消滅の前段階として　やたらとハウツー本やヌード写真が出版されまくる

もうこれから必要じゃなくなる　自分とやってきた過去以外に売り物がない状態

マニアックなほど詳しい暴力や詐術・殺人の方法が　フィクションに描き出されている昨今

店じまいの時を察した古参たちが　閉店セールをもって最後の儲けを得ようとしているのかもやも

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愛ほど 現実を歪ませる呪いはない

愛ほど　現実を歪ませる呪いはない