さて今日はいよいよ竹生島。
滋賀に行くと決めた時からずっと竹生島が楽しみです。
琵琶湖には沖島・竹生島・多景島と三つの島があって、それぞれ見どころがあります。沖島は最大の島で唯一の有人島でもあり、ひと昔前の暮らしかたが見られます。多景島は眺める角度によって様々な景色が見られます。そしてこの竹生島は「神のいつく島」と呼ばれて、神話ゆかりの地として有名で、古来より信仰を集めてきました。
竹生島にまつわる伝承として、一番面白いのはその生まれにについて、です。
伝承によると、琵琶湖の東北にある伊吹山の神が、その姪である金糞岳の神と競い、負けた伊吹山の神が怒って、なんと姪の首を切り落としたのです。
その首が琵琶湖に落ちて、竹生島になったという。
奇しくも伊吹山の標高は1,377mで、金糞岳は1,317mですが、そこに標高197mの竹生島が加われば本当に逆転するわけです。
この二つの山は丁度滋賀県の一番と二番目の高峰ですから、昔の人が二つの山を眺めてこの話を考え付いたのかもしれませんね。
竹生島へ行くにはフェリー便を乗る必要があります。
こちらは赤備え船『直政』です。私が乗るフェリーではないですが派手な色をしているから思わず撮ってしまいました。
舟に揺らされて40分程。竹生島につきました。
湖の方から眺めると新緑の島に幾つかの神社が見えます。
竹生島の港に到着。
「深緑竹生島の沈影」と書かれる石碑。
これは琵琶湖八景の一つ、深い緑につつまれて湖面に映る島影を讃える言葉です。
先ほど湖から眺めた島の姿は確かに鬱蒼としていますが、残念ながらどうやらもう昔の人が讃えた深緑の姿ではないようです。
竹生島の北部には神社や港がなくて本当の無人島ですから、カワウが大勢棲息しています。多い時は数万匹もおよぶカワウの糞害は木々のほとんどを枯死させてしまったから、以前の深緑の姿はもう見ることはできません。
現在は鳥害の駆除を進めていますから、いつの日にまた深緑の沈影が見られるかもしれません。
「竹生島神社」と書かれている鳥居。
竹生島には竹生島神社とも呼ばれる都久夫須麻神社と、宝厳寺があります。両者は神仏習合の時代ではまとめて竹生島弁才天社と呼ばれていました。神仏分離の際に寺・社分離されましたが、両者は今も渡り廊下で繋がっています。
こちらが宝厳寺。巌金山は山号です。
お寺なのに鳥居があるのは神仏習合時代の名残ですね。
こちらは宝厳寺の本殿。
宝厳寺本殿の本尊は大弁才天様です。三大弁才天の一つとして数えられます。ちなみに他二つは広島の大願寺と神奈川の江島神社。
弁才天はもともとインドでは水を司る女神ですから、ここでは湖を司る女神浅井姫命(上に話しました首を落とされた神)と同一視されるから、神仏習合の時代では両方祀られています。
こちらは国宝の唐門。ここを通ると竹生島神社にいけます。
この唐門は豊臣秀吉の子、豊臣秀頼が寄進したものです。豊臣秀吉の霊廟である豊国廟の唐門を移築したものだと言われていますが、近年では大坂城の極楽橋(の入り口)を移築した可能性もあるとも。
もしそうなら、豊臣時代の大坂城唯一の遺構ということになります。
この豪華な金具と極彩色の彫刻、安土桃山時代の特徴がとても鮮明ですね。
大阪城の極楽橋は派手好きな秀吉の権力の象徴であり、当時日本にいた宣教師ルイス・フロイスは絶賛して、「木造で総漆、金箔や宝石を散りばめ、彫刻で絵を描いた極彩色の50メートルほどの橋で、小櫓が太陽の光を浴びると素晴らしい輝きを放つ」と記録に残しているそうです。
今宝厳寺にあるのはあくまで入口の唐門ですから、この豪華さが50メートルも続くとは想像できないですね。
唐門の中に祀られている賓頭盧(びんずる)尊者像。
賓頭盧尊者は釈迦の弟子のひとりであり、彼の像に触れれば病が快癒すると言われています。
唐門と繋がっている宝厳寺の観音堂。
本尊は千手観世音菩薩で、西国三十三所の第三十番札所でもあります。
宝厳寺の観音堂と竹生島神社を繋ぐ渡り廊下。こちらも豊臣秀頼の寄進で豊国廟から移築されたものです。秀吉の御座船「日本丸」の船櫓を使われていることから、舟廊下とも呼ばれています。
豊臣秀頼がこれだけ竹生島に寄進したのは、おそらく母の淀殿の影響でしょうね。
竹生島神社の祭神の一柱である浅井姫命は戦国大名浅井氏の氏神ですから、浅井長政の娘として、滋賀生まれでもある淀殿から子へと信仰心が伝わるのは想像に難くありません。
竹生島神社の本堂。国宝です。
こちらも豊臣秀頼が寄進したもので、伏見城の日暮御殿の一部を移築されたものだと伝えられています。
竹生島神社の祭神は四柱あります。
一つは先ほど話しました浅井姫命。
一つは市杵島比売命(イチキシマヒメノミコト)、こちらは宗像三女神のうちの一柱で水の神でもあるから弁財天と同一視されたこともあります。
一つは宇賀福神、こちらは出自不明の人頭蛇身の神である宇賀神と弁財天と習合する神で、弁財天の一形態と見做されています。
最後の一つは龍神、こちらは八大龍王の一尊である黒龍で、竹生島の神木に沿って昇ってくる伝説があります。
さすがは湖の神社、見事に全部水の神と関係ありますね。
本殿の横にある白巳大神(白蛇弁才天)の社。
金運の御利益があるようです。
こちらは龍神への参拝所。
龍神拝所の背後にある、湖に突き出した岩の上に立っている宮崎鳥居。
ここでは「かわらけ投げ」という習わしがあり、願い事を書いた土器(かわらけ)を投げて、鳥居をくぐれば願いが叶うと言われています。
ちなみに私の場合、事前に調べたところ、鳥居まで届くのすら難しいとのことですから精一杯投げましたけど、鳥居を大きく飛び越えて海に落ちました……。
参拝を終えて、別ルートから戻ります。
ここは舟廊下の下です。
両方の御朱印もいただきました。
帰りのフェリーから竹生島全体を撮る一枚。





















