MGF教会週報礼拝黙想2006年1月22日 | マラナサ・グレイス・フェローシップ(MGF)の礼拝黙想

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MGF教会週報礼拝黙想バックナンバー集 執筆者 MGF牧仕 菊地一徳

「カインの妻は誰だったのか?」

1925年、テネシー州で開かれた、歴史的に有名な「スコープス裁判」で、キリスト教の信仰のために立ち上がった検事のウィリアム・ジェニング・ブライアンは、反キリスト教を公言していた米国公民権連合の弁護士であったクラレンス・ダロウから、カインの妻に関する質問をされて、回答することができなかった。当時、報道機関がこぞってこの裁判に注目したため、「クリスチャンは聖書の記録を擁護することができない」との印象が世間に植え付けられた。著名な無神論者カール・セイガンは、その著書「コンタクト」(1997年に映画化)の中で同じ質問を投げかけ、聖書が擁護不可能であることを証明しようとした。キリスト教懐疑主義者たちの間でカインの妻は最も有名な女性と言える。

一方で聖書は「あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい」(Ⅰペテロ3:15)と命じている。だから、私たちはこの質問に対しても明確に答える必要がある。懐疑主義者たちは、カインが妻を見つけるために、アダムとエバの子孫以外の種族が地上にいたはずだと主張するが、それは間違いである。聖書は「そういうわけで、ちょうどひとりの人によって罪が世界にはいり、罪によって死がはいり、こうして死が全人類に広がったのと同様に、――それというのも全人類が罪を犯したからです」(ローマ5:12)と述べ、アダムはあくまで「最初の人」(Ⅰコリント15:45)であったと記録している。最初地上には1人の人間しか存在しなかった(創世記2:7)。

また、創世記3:20の「さて、人は、その妻の名をエバと呼んだ。それは、彼女がすべて生きているものの母であったからである」という記述から、全人類はこの最初の夫婦アダムとエバから生まれたことが分かる。したがって、カインの妻が他の種族である可能性は否定され、むしろアダムの子孫の1人であったことが証明される。カインはアダムとエバの最初の子で、弟アベルとセツ(創世記4:25)は、人類の第1世代の子供たちの一部である。聖書にはこの3人の男性の名前しか出てこないが、創世記5:4にはアダムとエバは「息子、娘たちを生んだ」と記している。ユダヤ人の歴史家ヨセフォスは「古くからの伝承によると、アダムの子供の数は、息子が33人で、娘が23人であった」と記している。実際にアダムとエバに何人の子供が生まれたかについて、聖書は明示していないが、それでも2人の寿命が千歳近いことを考えれば、子供が百人以上いても不思議ではない。そして、カインの時代、地上にはアダムの子孫しか存在しなかったと考えるならば、兄弟は姉妹と結婚しなければならず、そうでなければ次世代が生まれてこなかったことになる。したがって、カインの妻は彼の妹か、もしくは姪と結論付けることができる。

しかし、ここで兄弟姉妹間の近親婚を禁じる律法に訴えて、この結論を即座に否定する者もいる。ところが、実を言うと、私たちはある意味、自分の血縁者と結婚しなければ、人間と結婚できないのだ。妻は夫と結婚する以前から血縁関係にある。なぜなら、全人類が「ひとりの人」から造り出されたからだ。近親婚を禁じる律法は2~3千年後のモーセの時代になって制定された(レビ18:6~18)。律法以前、アブラハムが異母妹サラと結婚していたことを思い出して欲しい(創世記20:12)。神はこの結婚を祝福され、イスラエル民族を生み出された。その400年後になって初めて神はこのような結婚を禁じる律法をモーセに賦与された。今日、兄弟と姉妹は(異母・異父兄弟と異母・異父姉妹等も)、法律によって結婚が禁止されている。それは主に遺伝学上の問題が理由となっている。両親が血縁的に近ければ近いほど、身体に障害や奇形が出てくる可能性が高くなる。子供は両親から遺伝子を1つずつ受け継ぐが、その時遺伝子の片一方にエラー(欠陥)があっても、もう一つが正常なら、そのエラーを補って正常な子供が生まれる。しかし、両親が近親の場合、遺伝子の同じ箇所にエラーがある確率が高くなる。しかし、人類の創始期においては、アダムとエバの遺伝子は完全で、地球環境も完璧であったので、しばらくは遺伝子エラーの問題はなかった。したがって当時は、近親婚は何ら支障がなかったのだ。また、カインがなしたのが近親相姦というような姦淫的行為ではなく、社会的に認められた近親婚であったならば、なおのこと道徳的にも全く問題はなかったと言える(ちなみに奈良時代まで皇族・貴族の近親婚も容認されていた)。しかし、人類に罪が入って以来、世代を重ねてしばらく経つと、地球環境は劣悪化し、遺伝子の突然変異や病原性生物等の影響により遺伝子エラーの問題は次第に深刻化した。そのため、近親婚は律法で禁止されるようになり、また今日多くの国々の法律でも禁止されるに至った。