「…だってね。確かな存在を感じるの。気のせいじゃないわ。これは友情がより強くなった、絆よ!!」
「あ~!もーー!!しつこい!!知らないって言ってるでしょう!?」

全てのペアの課題が終わり、オーディションの結果を受験者たちは控え室で待っていた。

課題を終えてからと言うもの、キラキラした目でキョーコが奏江をみるため、奏江はそんな目で見るなと顔を真っ赤にしながら言う。

「あんた、そんなくだらない事を言ってる場合じゃないのよ!?オーディションの結果出るんだから!!」
「ああ、それなら大丈夫よ。モー子さんは絶対受かる自信があるわ。」
「…そうね。」

確かに奏江は受かる可能性が高い。それならもう1人は…?

「モー子さん?」

不思議そうにキョーコが首を傾げた所に、

「お待たせしました。」

そこに今井が入ってきて、

「え~と、まず皆様にお詫びをしなければならないことがあります。起用する人数は2人と皆様に伝えましたが、修正して起用人数は1人にすることにしました。」

彼の言葉で受験者たちはザワザワしだし、

「理由はカインドーさんサイドと黒埼監督が検討した結果、お1人は決まったのですが、お2人目で意見が真っ二つに別れてしまいまして…第三課題提案もあったのですが、時間がなく…こちらの都合上で起用する方は1人になりました。誠にすみませんでした。」

今井は頭を下げて謝って、

「…それで合格者なのですが…琴南奏江さんに決まりました。」

奏江の名前が出た途端、あまりの嬉しさにキョーコが飛ぶはねて喜ぶが、止めなさいと奏江は顔を真っ赤にして止める。

こうして奏江は見事、オーディションを穫り、契約することになったのだが、

「まず、君に何より気をつけてほしいのはCM撮りが終わるまでは病気をするな、怪我をするな、この二点!自分の一番ベストの状態を常に保てるように注意しろ。これは生きるために息をするのと同じくらい当たり前にやらなきゃいけねぇ。これは君に課せられる義務だ。何故なら新人だろうが無名だろうが、金をもらって仕事する奴はもうプロだからな。ゆえにこの業界における自分の商売道具、つまり“身体”の自己管理が出来ないやつはプロ意識が足りないものと見なす。」

部屋に通され、黒埼がテーブルを挟んだ向こう側に座っているのだが、

「そして俺はプロ意識のねぇ奴がだいっきらいだ!!いいか?これは決して脅しじゃねぇぞ?このCM撮影が終わるまでに身体に傷1つでもつけてみろ…容赦なく首ぃたたっきるからな!!いいか、わかったな!?」

今すぐにでも噛みつかれそうなオーラで黒埼が言うので、どう聞いても脅ししか聞こえない。

「は…はい…!!」

やっぱりチンピラと思いながら、顔を真っ青にした奏江は必死に返事を返す。

ようやく契約がすんで、部屋から出ればキョーコが笑顔で立っていた。

「…あんた、まさかずっとそこにいたわけ?」
「ううん。さっきまで控え室にいたから、きたばっかりだよ?」

呆れたように奏江は聞けば、キョーコは首を振って否定する。

「それよりも一緒に帰ろう?モー子さん!」
「だ、誰があんたなんかと…!」
「も~!モー子さんったら照れ屋さんなんだから!」
「照れてない!!」

まるで漫才ような会話をしていた2人だが、黒埼がわざとらしい咳をすると奏江はハッと我に帰り、

「す、すみません…今日はありがとうございましたっ。」

ぺこりと黒澤たちに頭をさげ、ほら行くわよとキョーコの襟を掴んで引っ張っていく。どうやら恥ずかしいらしいが、キョーコがきゃあきゃあ言って喜ぶので恥ずかしさは倍増。

「最上さん。」

しかし、そこで黒澤がキョーコを呼び止めたで奏江の足は止まったのだった…。