(…やっぱり、変…。)
キョーコはそう思った。
「ありがとう。」
「いえ…。」
彼女からコーヒーを受け取った蓮が、帰ってきてからと言うもの、キョーコと目を合わせようとしないので。
(会って間もないけど、今朝まで目を合わせて会話してくれたのに…私、何かしたのかな…。)
何かしたのではないのかと彼女は考えるが、心あたりがない為、
「…あの、敦賀さん…私なにか不快にさせるようなことをしましたか…?」
「え…?」
「目を合わせてくれないので…。」
「…!」
「させてしまったのなら、なんてお詫びすればいいのか…。」
「ま、待って、最上さん…!君は何も悪くないから…!!」
蓮は慌てた。キョーコを意識するあまり、目をそらしていたら、
「じゃあ、私とちゃんと目を合わせてください…!!」
彼女が涙を目頭に溜めて、彼に怒鳴った。
そこでやっと、蓮はキョーコをちゃんと見たのだが、そんな彼女にみとれる。
「嫌われたかと思ったじゃないですか…!」
「最上さん…。」
。」
「私のこと、嫌いにならないでください…!私、敦賀さんに嫌われたくな…。」
言葉を途切れさせるように、腕を掴まれたと思えば、引き寄せられて、蓮に抱きしめられたキョーコは驚く。
「つ、敦賀さ…。」
「君を嫌いになってなるはずがない…!だって俺はこんなに…!!」
今まで気づきもしなかった。
(こんなに、君が好きなのに…!!)
ずっとキョーコが好きだった。けれど、出会った時には彼女には特別がいて、無意識に想いに蓋をしながらも、松太郎に対して嫉妬していた。彼は存在するだけでキョーコを笑顔にさせたから…。
(でも、もう…アイツは関係ない。)
恋敵はもういない。頑張れば、きっと振り向いてくれる。
「最上さん。」
「は、はい…。」
蓮に見つめられて、キョーコはドキッとした。彼の瞳の奥に見たことがない光が見えて…。
無意識に頬を染めれば、彼はとろけるような笑みを浮かべると彼女の額にキスをした。
「¢£%#&!?」
チュっとリップ音が耳に届いたのと、唇の感触を感じたキョーコは真っ赤になり、訳の分からない言葉を発し、あわあわした。
そんな彼女に蓮は可愛いと思えば、ぷっと笑う。
「…!?か、からかったんですか…!?」
それをキョーコはからかったのだと判断したらしく、ぷりぷりと怒り出す。
「からかってないよ?ただ可愛いな、と思って。」
「可愛…!?」
「可愛いよ、最上さんは。」
「も、もう…!からかわないでください!そんなことばかり言ってると誤解しますよ!?」
「…誤解してほしいかな、君の場合。」
「わ、私の場合ってどういう意味ですか!?」
「さあ?どういう意味かな?」
「ほ、本気で怒りますよ…!?」
「全然、恐くないけどね?」
「も、もう、敦賀さんなんてしらない…!」
そのまま、キョーコは抱擁が緩んでいた彼の腕から逃げ出し、自分の部屋へと逃げていく。
「本当に可愛いな、君は…。」
まさか、とろけるような、その笑みが自分にデレデレしてる表情など知りもせずに…。