あれから三日後。

家賃を出す必要はないと言われたキョーコだが、交渉の末に家事をすることした。丁度、ハウスヘルパーの人が事情で止めたらしく、探していたため、丁度良いと蓮は笑っていたが、流石に自分の服などは遠慮した。年頃の男が女の子に肌着を洗わせるのはかなり恥ずかしいからだ。

(やっぱり大きい…敦賀さんのベッド…。)

義務を果たすため、キョーコが蓮のベッドのシーツを変えに寝室に向かうと、かなり大きいベッドが目に入る。彼女が4人で寝ても大丈夫そうなくらいにデカい。

シーツに手をかけたキョーコは、ベッドの脇にある引き出しの上に置かれた写真縦を目を向ける。

写真には男性三人が写っており、今より少し若い蓮とその彼よりも年上だろうと思われる黒髪に碧眼の男性に、栗毛に琥珀の目をした眼鏡の男性がそれぞれ写真の中で笑っていた。

黒髪に碧眼の男性は明らかに外国人なのだが、写真を飾るほど親しいようで、写真について聞いてみれば、

『うん、俺の親友なんだ。恩人でもあるけどね。』

蓮は笑って答えた為、予想通りに親しい仲のようだ。そこまで聞いて疑問に思うのは、外国人の親友をもつのは珍しいため、外国に住んでいたのかと聞いてみると、

『…うん、そうだよ。実は長いこと住んでたんだ。』

少し間が開いたあと、彼は歯切れが悪そうに苦笑いを浮かべて答えた。

そのため、困るようなことを聞いてしまったかとキョーコは聞いたのだが、違うと否定される。けれど、それ以上聞かれたくなさそうだったので、キョーコは深く聞くのを止めた。ワケがあるのだろうと肌で感じて…。

そして、ここ三日後で、何とかキョーコは蓮のとろけたような笑みから何とか逃げないように踏ん張ることが出来るようになっていた。

しかしだ。追加されたものがある。

それはスキンシップだ。頭を撫でられるのは良いとしよう。嫌ではない。

(でも、急に抱きしめるのはやめてくださいぃいいいい!!)

突然に自分を抱きしめる癖をやめてほしいと本気で彼女は思う。

本人が無意識なので、更にタチが悪かったりする。

流石に蓮自身も可笑しいと思ったのか、写真にも写っていた眼鏡の男性もとい自分のマネージャーでもある社倖一に、

「社さん。」
「どうしたんだ?深刻そうに…今朝から思ってたけど…。」
「実は俺…女性をつい抱きしめる癖がついたみたいです…。」
「ぶう…!?」

相談をしたら、食後のお茶を飲んでいた社はお茶を思わず吹き出して、ゴホゴホと咳をする。

「…あ!もちろん、女性なら誰でもいいってわけじゃないですからね!?」
「あ、当たり前だろう!!いくらおまえでも下手したら犯罪だからな!?」

まったくの正論で社は突っ込む。

「…って、ちょっと待て。それはつまり?特定の女性に抱きつく癖がついたって言いたいのか?お前は。」
「あ…はい。」

頷く蓮を見て社は目を見開くと、

「ほぉ~?」
「な、何ですか?」
「そうか、そうか。なるほどね。」
「だ、だから何ですか?」
「蓮くんは、今まで感じたことのない衝動に突き動かされてるわけだ。あはは、面白いな~。」

何だか社は、新しいおもちゃを見つけたように笑い、

「な、何が面白いんですか!?こっちは真剣に…!」
「まあ、蓮くんはそうだろうね?でも、こっちから見れば、かなりニヤニヤ笑っちゃう話だよ。」
「も、勿体ぶらないで、さっさと教えてくださいよ!」
「…恋だよ。」
「へ…?」
「その衝動の理由は恋。お前がまだ未体験な感情だ。」

にやりと笑って、社は蓮に答えたのだった…。