キョーコは夢をみた。金髪の少年が優しく微笑んで、頭を撫でてくれる。
彼女は嬉しそうに笑って、少年をこう呼んだ。
“ ”と…。
「…ぅん…。」
眠りが浅くなって、キョーコは寝返りをうとうとするが、身動きできずに眉間をシワをよせ、重い瞼を開く。
(…へ?)
見えたのは、質の良い真っ白のシャツとそこから覗く、暖かな胸板。そして顔を上げれば…。
「£%#&@!?」
己の状況を理解して、キョーコはパニックになる。蓮が自分を抱きしめるように寝ていたからだ。
混乱するなと言うのが無理な話である。
可笑しな言葉を叫んだせいか、彼は起きたらしく、唸るとゆっくり目を開けた。
「…あ。起きたんだ。」
しかし、蓮は混乱する事なく、ホッとしたような表情をする。
「あ、ああああの…!!ど、どどどどうして私は、あああの…!!」
顔が真っ赤になりながら、自分がこうなったわけをキョーコは訪ねようと頑張るが、咬みまくった。
「あー、ごめん。今離れるから。」
それでも、意味は伝わったのか、蓮は苦笑いを浮かべると離れてくれるが、温もりが離れてキョーコは一瞬思った感情は“寂しい”と言う感情だったため、
(さ、寂しいって何!?寂しいって!!)
まるで、もっと抱きしめていて欲しかったみたいな自分に、キョーコはそれを否定するように心の中でツッコミながら、蓮が起き上がったために、彼女も起き上がる。
「と、ところでどうして私はその…」
「ああ、それは…。」
事情を話し始める蓮。つまりこう言うことだ。
彼は泣きじゃくるキョーコを慰めていたのだが、そのうち泣き声が止んで、顔を見ていれば、泣き疲れたのか、彼女は眠っており、仕方なくキョーコをゆっくり抱き上げてキッチンから移動し、あった座布団を床にしいて彼女を横にさせたのは良いのだが、離れようとしたら眠っているとは思えないくらいの力でシャツを掴まれたので、動くにも動けなくなったと言う…。
それを聞いたキョーコは見る見るうちに顔を真っ赤にさせて、
「す、すみません…!わ、私ったら、無意識とはいえ…!!」
無意識とはいえ、何ということをしたのだと思う。穴があったら入りたい気分になった。
「いや、謝らなくても良いんだよ?よく考えれば、シャツを脱いで帰れば良かったんだし…。」
本当のところ、シャツを脱げば、彼は帰れたのだ。けれど、蓮はそれをしなかった。キョーコをこのままにしておけなかったからである。
(…今、こんな状態の彼女をほっといたら、何をするか分からないし…。)
泣いたからか、キョーコの表情は良くなったが、まだほっとく訳にはいかない。何せ、一度は死のうと考えた人間なのだから…。
「…ねぇ、最上さん。」
「は、はい。」
「よく考えたんだけど…。」
ゆっくりと蓮は彼女の手を包むように握りしめ、
「…俺と一緒に住まない…?」
キョーコを優しく見つめながら、そう言ったのだった…。