(…不思議だわ…子供が三人いる気分…。)
キョーコはグッタリしていた。
「かあさん、おなかすいた~。」
「ママ、だっこ~。」
2歳になった双子が、母親に甘えてくる。
それは良い。子供が母親に甘えるのは当然の事だ。
「…クオン、離れてっ。仕事ができないから!」
ただ、大きな子供がキョーコを後ろから抱きしめていて、動くにも動けない。
「やだ。」
却下したクオンはぎゅっと抱きしめなおしてくる。
「かあさん~。」
「ママ~。」
可愛らしく裾を引っ張ってくる我が子たち。
「ああ!!もうっ。いい加減にして~~!!」
我慢ならずにキョーコは怒鳴った。
「…ってことがあったのよ。」
アルバムを捲り、キョーコの視線は写真に写っている、まだ小さいトワとカレンを見つめている。
「そ、それは大変だったね…ママ。」
苦笑いを浮かべるのは現在、22歳のカレン。
彼女はキョーコをそのまま移した容姿で、唯一違うのは瞳の色が父親と同じ空色と言うこと。
『おばあちゃん~。』
そこに小さい男の子がキョーコに駆け寄ってきて、
『とうさんにつくってもらった。』
車のプラモデルを見せる。
『そう、良かったわね?』
『うん。』
祖母に頭を撫でられて男の子は嬉しそうに微笑む。
『…スカイは大人しいわね?』
『うん。大人しいよ?同世代の子はニコニコ笑ってるのに、この子、ニコッとしか笑わないもん。』
困ったな~と言って、カレンは腕を広げると、
『おいで、スカイ。』
『うんっ。』
とことこと歩いて、スカイは母親の元といき、だっこしてもらう。
『で、スカイ。お父さんは?』
『なんか、おじいちゃんと、おとことおとこのしょうぶがあるっていってたよ。』
『…またか。なにやってるんだろう、レオンもパパも…。』
呆れたようにカレンがため息をつけば、
『どうせ、お風呂の権利でも争ってるんでしょ。』
キョーコはクスクスと笑って、
『スカイは誰とお風呂入りたい?』
『うーん…じゃあ、かあさんとおばあちゃんではいる。』
ちょっとだけスカイは悩んだようだが、母親たちと入ることに決めたらしく、
『そう?じゃあ、お風呂沸かさないとね。』
キョーコは嬉しそうに笑うと、母親であるカレンが、
『じゃあ、スカイ。それをお父さんたちに言ってきなさい。』
『うん、わかった。』
そう言えば、スカイは素直に頷いて、床に下ろしてもらうと父親たちの元に向かっていく。
『とうさーん。』
スカイがそう呼んで抱きつくのは、焦げちゃの髪に碧眼の男性。つまりカレンの夫であり、スカイの父親であるレオン。
どうやら彼はクオンとチェスをしていたらしく、小さなテーブルの上にチェス板が…。
ちなみにここは和室。畳なので二人ともあぐらをかいている。
『どうした、何かあったか?』
『うんとね?おれ、かあさんたちとおふろはいる。』
『…は?お前、今なんて言った?』
『かあさんたちとおふろはいるっていった。』
確かめるように聞かれて、スカイは父親の質問に答えると、父親たちは固まった。
どうやらキョーコの予想は当たっていた様子。
『そんな…。』
ガクリと落ち込むクオン。よっぽど孫と入りたかったのらしい。
その後、かわりに賭けたのはスカイの添い寝の権利だったらしいが、
『かあさんととうさんでねるっ。』
本人であるスカイが相手を決めてしまったため、クオンがガクリと落ち込むので、カレンが爆笑していた。レオンも肩を震わせながら笑っていたけれども…。
ヒズリ家は今日も平和である。
そんな幸せな日々が今あるのは、辛かったすれ違いを乗り越えたからだろう。
例え、またすれ違がって、傷つけあっても、向き合って話し合えば、取り戻せる。
それが掛け替えのないモノならば…誰でも。
おわり
゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆
あとがき
と言うことで『彼女と彼のすれ違い』完結いたしました。
裏含めて60話。含めないで54話のはず…。
ちなみにトワはどこだ!?とか、レオンって誰だ!?とか思った方は『First love』と『First love~月の王子様~』をお読みいただければ、わかるかと。さりげなく宣伝ww←
完全に繋がってるとかではないんですが、トワとカレンには運命の相手がいるので、どんな話のあとにも、そのパートナーと出会う設定であります。
次回からは『薔薇の庭で会いましょう』の連載再開したいと思います。
さっさと終わらせて、モダンに戻ってきたい…。
それでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
それではノシ
ローズ