キョーコが破廉恥よと悲鳴をあげた同時刻。

「…ヘタレにもほどがあるだろ…何がお前をそんなにヘタレにさせるんだよ…一体。」

社が呆れたように蓮に言うと、

「…自分でもわかりません…ただ、もしフられたらどうしようかと思ったら、考えが止めらなくて…。」

しょぼーんと落ち込む彼。

「キョーコちゃんはお前が好きだって言ったろ?」
「言いましたけど、本人がそれを口にしたんですか?」
「あ…いや…好きとは直接は聞いてないけどさ…。」
「じゃあ、社さんの勘違いかもしれないじゃないですか…そもそも、どうして社はそんなに最上さんと親しいんですか?」

蓮に急に嫉妬を向けられた社は冷や汗を流し、

「いやいや、お前のことで相談を受けてるだけだから俺は!!本当の本当だから!そんなに睨まないで蓮くん!」

慌てて弁解をすると、神の救いなのか、蓮がポケットから震えている携帯を取り出し、携帯を開くと嬉しそうに頬を緩ませて、

「すみません、最上さんに電話するので、向こうに行きます。」

彼は社から離れて行ったので、社はホッした。

数分後、戻ってきた蓮は大変機嫌がよく、

「社さん、俺死んでもいいかもしれませんっ。」
「は?」
「最上さんが、あの最上さんが俺をデートに誘ってくれたんですっ。しかも琴南さんのかわりとかじゃなくて!」

挙げ句の果てには嬉し涙まで流し始める。

(琴南さんも大変だな…。)

それを聞いてる社は奏江に同情した。女にも嫉妬する、この男は一体…。

「それで?デート内容は?」
「食事です。何でも知り合いにホテルのディナー券をもらったらしくって…。」

社はピシッと固まった。

(ほ、ホテルのディナー券…?それって…。)

ジュリエナがキョーコに押し付けたホテルの宿泊券ではないだろうかと社は思い、固まったらしい。

(ま、まさかキョーコちゃん!本気でやるわけじゃ…!!)

それはヤバいぞと彼は焦る。

(そ、そんなことをしたら、こいつのこよりの理性は…!)

蓮が記憶を無くしてから、キョーコは自分の想いに蓋をすることを止めたため、蓮の心を打ち抜く可愛らしい仕草を無意識にしてきた。

彼がキョーコを抱きしめてキスしたいと思ったのはきっと数え切れないくらいあるに違いない。

削って削りすぎた理性は最早こよりか枯れたゴム並みのレベルで、キョーコが彼を押し倒した暁には、理性は切れて…。

(やばい、やばいぞっ。それは…!!)

いとも簡単に蓮がキョーコをムチャクチャに抱くのが想像できた社は、キョーコのために何か出来ないかと必死に考え始めたのだった。