あれから6年…。
カレンは16歳になっていた。
女の子から女性へと変わっていく年頃である。
レオンとの関係は…。
『え…?付き合ってないよ?』
カレンは目の前の親友に困った表情で言う。
『嘘でしょ!?』
あまりにも信じられなかったのか、親友であるティアは、ここがレストランだと言うのに、構わず立ち上がる。
ティアはやはり美人に育っていた。街を歩けば、ナンパされると言うことが多い。
『ほ、本当だよ?私、告白してないし…告白したら、ティアにちゃんと言うもん。』
『そ…そりゃあ、そうでしょうけど…。』
少し落ち着いたのか、ティアは座り直す。
『…前に言ったでしょ?ゆっくり時間をかけたいの。レオン事、すごく好きだから、フられたら立ち直れないもん。』
カレンの片思い歴は6年間。
『そんなことしてるうちに、他の女にとられても知らないわよ?』
飽きれ気味にティアが言えば、カレンは苦笑いを浮かべる。
(…まあ…アレがあるうちは大丈夫ね。)
チラッとティアはカレンの首もとに輝く三日月のペンダントを見た。
彼女はソレがレオンの母親の形見であることは、カレンから聞いているので知っている。
(この子もこの子ね…そんな大切なものを女の子にあげる意味をこの子は気づいてない。)
幼なじみであり、親友であるカレンをティアは良く知っている。彼女がすごく色恋に鈍いことを。
(他のことなら、敏感に分かるくせに…。)
レオンには数回会ったことがあり、やんわりとカレンをどう思っているのか、探ったことがあるが、
(あんなに、好きだって目と行動が言ってるのに、気づいてないんだから…。)
例えば、カレンと一緒にいる彼は優しい。彼女のことを気遣う。ほかの女子なら気にもとめないのに。
さらには、普段は無表情な彼が、カレンと二人のときは、笑顔で笑っていたり、軽いスキンシップもしてたりする。ちなみにティアはたまたま偶然みただけ。
『…同情したくなったわ…。』
どうして、そこまでアピールをしてもらっているのに、この少女は気づかないのか。
『…?誰に?』
きょとんとしてカレンは首を傾げるとティアは頭をかきむしりたいのを我慢し、
『で?私に相談ってなによ?』
本題を切り出した。切り出すとカレンはもじもじして、
『あ…あのね…レオンにね…?』
そこまで聞いて、ついにあの男、告白したのかと期待したが、
『…キスされたの。』
『…は?』
ティアは耳を疑う。しかもキスと言った。
『あ…あのね?一昨日、私の誕生日にレオンとデ、デートいったでしょ?』
『…いったわね。アンタが初めてやっとデートだって自覚したデートをね。』
そう。ついこの間まで、カレンはレオンと二人きりで出かけることをデートだと思ってなかったのだ。
カレンごとく、恋人になってから、出かけることをデートだと思っていたらしい。
そんなわけでしょ!とティアが突っ込みを入れたのは当然のごとく…。
『だ、だって…。』
『言い訳はいいから。で?どういうわけでキスされたわけ?』
『そ、それが分からないからティアに聞いてるの!家の近くに送ってもらったら、急に抱きしめられて…それで…。』
真っ赤になったカレンはどんどん声が小さくなっていく。
『…で、キスされたと?』
親友の付け足しに、カレンはコクコクと頷いた。
ティアは黙り込み、眉を寄せる。
(…よく考えれば、あの男が『愛してる』とか『好きだ』とか簡単に言うわけないわよね…。)
普段は無口で無愛想なレオン。カレンを通して、不器用で照れ屋なのは知っているが、よく考えればそんな言葉を簡単に言う人間ではなかった。
(つまり…?その日はカレンの誕生日…しかも家に送った時にってことは、夕方で…ムードは満点。それに今までアレはカレンにキスなんてしてこなかったし、してたら、きっと私に伝わっているはず…今日みたいに…。)
急に会いたいと言われて会ってみれば、カレンの様子はおかしかった。こうやって話してるときは普通なのだが、一人にさせるとトマトのように真っ赤になって頭から湯気が出そうな勢いで、
(…まさか…。)
導き出した答えは一つだった。
(それで告白したつもりじゃないわよね…?)
好きだと言うのを、レオン本人は照れくさくって恥ずかしかったのだろう。
(伝わるわけないじゃない!この鈍感娘に!!)
しかしだ。それは見事に空振りして、カレンに伝わってない。
(素直に好きだって言えばいいじゃない…!!)
たまらずにティアは頭をかきむしり、あーもーー!!と叫ぶ。
『ティ…ティア?』
『アンタもアンタよ!さっさと好きだって言いなさいよ!!イライラするわね!!』
『ひ、酷…。』
『ひどくない!もう私知らないんだから!勝手にしなさい!!』
『ちょ…!?ティア…!!』
ティアは自分のお勘定分をテーブルに置くと、席から立ち上がって、出て行ってしまう。
『な…なんなの?』
カレンは意味が分からなかった。レオンの行動もティアの行動も…。