『…ここが日本か。』

羽田空港。一人の男性が空を見上げる。

『会いにきてやったぞ、クオン。』

生まれつきの黒髪が太陽で輝く。

『…あれから、もう数年たったのね…。』

そのよこには、金髪に碧い目をした女性。

『…本気に悪いことしたわ…彼には…。』
『…大丈夫さ、アイツは優しいから許してくれる。』
『リック…。』
『いこう、ティナ。』
『ええ。』

寄り添いあって二人は歩きだす。

二人の薬指には、結婚指輪がはめられいた…。



「…え…?ハリウッドから?」

社長室。蓮はローリィを前に驚きを隠せないでいる。

「ああ…日本人役として出てほしいそうだ。脇役だけどな?」
「…!!いいです!絶対にやります!」

蓮は感動して涙目になる。ようやくここまできたのかと。

「おいおい、まだ泣くのは早いぞ。成功させなきゃな?」
「はい…!」
「それと…。」
「…?」
「お前に会わせなきゃならない人間がいる。」
「俺に…?」
「ああ…お前が最上くんやクーたちを除いて、1番目に会いたい人間だ。」
「…!?まさか…いや、でも…!!彼はまだ眠ってるんじゃ…!!」

誰のことかはすぐに分かったが、蓮はリックが未だに眠っていると聞かされていたため、動揺した。

『…俺が黙ってくれるように頼んだんだ。』

すると後ろから、男性の声がして蓮は振り向くと、目を大きく見開いた。

「リック…!?」
『…久しぶりだな、クオン。』
「ど、どうして…!?」

蓮は混乱した。なぜ、彼がここにいるのだろうと。

「それは俺が説明する。」
「…!?どういうことですか、社長…!!彼が起きていたなんて、俺は全然聞いてないですよ!!」
「さっき彼が言ったように、彼に頼まれたから黙ってたんだ。お前の自分の存在をかけた挑戦を邪魔しないようにな?」
「…!?」

ローリィの話しを聞いて、蓮はリックを見る。見れば、通称セバスチャンに通訳してもらっていた。

『…ってことだ。どうせ、お前のことだから、俺が起きたことを知ったら、仕事に身が入らなくなるだろ?まあ…何も知らない人間には、普通に見えるだろうけどな…?』

リックなりに蓮を気遣ったらしい。

『い…いつから起きて…?』
『…二年前だ。』
『…!?そ、そんな前から!?』
『ああ…でも、リハビリに二年かかっちまった。』
『…!!ご、ごめん…!!お、俺…!』
『いい加減にしろ!!』
『…!?』
『俺は謝ってもらいたくて、ここに来たんじゃねぇ。お前を責めたいわけでもないんだ!変わらないな、そういうとこが!なんで自分ばかり責めるんだ!!お前は悪いことは何もしてないだろう!?』
『で、でも…俺…!人を…!!』
『ああ!!そうだな!!やり過ぎだな!!でもな、アイツらがお前をナメてたのが、そもそもの原因だ!言い返さないお前も悪いけどな!』
『そ、それは…!』
『ああ!!わかってるけどな~!お前は優しすぎるぞ?なんでも自分の中に溜め込みやがって!!ストレスでそのうち死ぬぞ!?』
『……。』
『なんでそこで目を逸らす。』
『…いや、前科あるような…ないような…。』
『な、なんだと!?お前バカか!?ふざけんなよ!?』
『ご…ごめん…でも、そんなこと、もう思わないから…。』
『…ならいいけどな…。』

一回、そこでリックは言葉をきったが、

『…なあ、気のせいかもしれねぇけど…なんか…変わったな?』
『え…?』
『お前、ずっと暗い顔してただろ?本当に笑うことも少なかったし…でも、今は違うな?何かお前の中で変わったか?』

そう言った彼に、蓮は微笑む。

『うん…好きな子が出来たんだ。とても大切な…。』

思い出すのはキョーコの笑顔。かけがえのない大切なもの。

『そうか…いい子なんだろうな…きっと…。』
『いい子だよ。俺には勿体無いくらい…。』

けれど、離すつもりはない。

彼女を愛しているから…。