「可愛いよね~この子!誰だろ~。」
テレビ局のポスターの前、女性二人組が、
「ああ、それ?ダークムーンの未緒役の京子ちゃんだよ。」
「ええ!?嘘!!」
「本当。」
「へえ~!すごい!ここまで変われるといっそ清々しいね!!」
「でしょ?だから、私すっかりファンで…。」
どうやら、例の化粧品のポスターのキョーコについて話している。
そこに偶然にもテレビ局のテレビにそれが流れた。
美少女がドレッサーの前に座り、頬をそめてメイクをして出かけていく。
商品と一緒に「恋するあなたへ」と出る。
それを見ての反応は、買おうかなと呟く女性たちと、可愛いなこの子と誉める男性たちである。
(…お、恐れ多い…!!)
そんな反応に真っ青になっている、キョーコ。
素のためか、誰もきづきもしないが…。
午前中、BOX"R"の撮影だったが、千織たちに誉めまくられ、その後も誉め続けられ、慣れないキョーコは恐怖すら感じた。
(わ、私ごときがこんなに誉められるなんて…何かの陰謀にしか思えない!)
それはもう、陰謀を感じるくらい…。
「……キョーコちゃーん!!」
「…ん?」
すると覚えがある声に呼ばれたので、そっちに振り向くと
「社さん!」
社が笑顔で手を振りながらこちらに向かっていた。
「可愛いね!あのCMのキョーコちゃん!」
「…貴方もですか…社さん…。」
「え!?な、なにが!?」
「皆さん、私を誉めて何かの陰謀にはめようとしてません…?」
「ええーー!?」
社が驚くのは無理もない。ただのキョーコの思い込みなのだから。
「い、陰謀って…。」
「ふふ…こんな私をはめて何がしたいんでしょうね?」
「いやいや!陰謀なんて考えてないから!!」
社は急いで違うと言うが、
「いいんですよ…否定しなくても…わかってますから…。」
「いやいや、わかってないって!」
キョーコの思い込みはとことんまでいくので
「そ、そうだ!キョーコちゃん、蓮に顔を見せてくれるかな!?」
本題を引っ張り出した。
「…あ…そうですよね!社さんがいるってことは敦賀さんがいるってことですもんね!」
笑顔になるキョーコに社はホッとする。
「うん、それでアイツ楽屋にいるから、顔みせてやってね!」
はい、これ!といつ用意したのか、楽屋の場所が書かれたメモを彼女に渡した…。