ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
「おじい様・・・。」
ローリィをみてマリアは彼を呼ぶが、
(『おじい様』!?『おじい様』だと!?確かに間違っちゃないんだろうが!!)
(何故かさらりと聞き流せない違和感が!!)
(あんな体長180センチを超える、毎日が仮装パーティーな『おじい様』私が知ってる『おじい様』じゃないわ。)
周囲の人は頭でローリィがそういう人物だと分かってるが、否定したい。
「ちゃんと・・・迷惑をかけたみんなに謝ったのか?」
そんな声など知らず、ローリィが低い声でマリアにそう言うと
「あら、なんで私が謝るの!?」
マリアは知ったかぶりをしたが、
「今回ばかりは自分が悪いと思ったから、俺に叱られると思って隠れたんじゃないのか?」
「~~~っ。」
どうやら図星らしく、何も言えなくなったが、
「だって、おじい様!!」
バッとローリィをみて、
「あんなお芝居を本当に定期公演として公開するつもり!?」
怒鳴るようにそう言い始め、
「さーみなさん、もうあちらは気にしないで稽古に戻って。」
責任者が生徒たちを稽古場へと移動させようとしたが、
「あんな馬鹿げた稚拙なお芝居、LMEの恥だわ!!」
このマリアの言葉に生徒たちは動きを止める。
「マリア!!」
マリアの発言にローリィは怒鳴るが
「だってそうじゃない!!主人公の母親は主人公のせいで死んだのよ!?人を一人殺してるのよ!?なのにどうして、主人公は周りのみんなに愛されてるの!?」
『だから仕事の邪魔になる子供なんか作ってほしくなかったんだ!!』
言葉を続けながらマリアは二年前の母の葬式を思い出していて、
『リーナみたいな世界に通用するモデルなんかもう日本に現れないわ!!』
そこで泣きながらいっていたみんなの言葉は
『仕事の途中で子供に会いに帰ってきたりするから飛行機事故なんかにあったりするんだ!!』
まるでマリアを責めるようなもので、
「何より、最後には父親が主人公を愛せるようになるなんてそんな都合のいい話」
そして、一番にマリアの心が傷つけたのは
『うるさい・・・!!』
父が自分を拒絶するように突き飛ばした事。そのまま、二年を過ごしたマリアは、くす・・・と笑い、
「子供の私でもシラけるわ・・・!!」
そう言いきった。そんな言葉に自然とキョーコは自分から去っていく母親の後ろ姿を思い出して、
「マリア・・・。」
ローリィがマリアを呼んだ頃、拍手を始めた。
「「!?」」
そのため、マリアとローリィはキョーコを見て、
「「「「!!」」」」
奏江と生徒たちもキョーコに視線を移した。
「まあ!あなた、私の言いたいこと分かってくれるの!?」
拍手をしたキョーコにマリアは表情を明るくさせて聞くと
「当然ね。私も『天使のことだま』読ませてもらったけど、確かにあの『姉』は不自然な気がするわ。自分にとっても最愛の母が、死んだというのに『妹』を憎まないどころか父親を非難するなんて、人として出来過ぎてない?」
「そーでしょ~~!?」
キョーコはマリアの意見に賛成だといったが、それがまずく、
「だったら、あなたがやってみなさいよ。」
ずらっと生徒たちが並んでいて、
「「!!」」
「ただし、その姉のお陰で主人公は、父親に憎まれてたんじゃないって気付くキッカケをもらわないといけないわ。それをあなたの言う『妹を憎む姉』の設定で演ってみなさいよ。」
生徒の一人がキョーコに言い放った。
(な・・・!!何を言い出すのこの人たち・・・!!そんなシナリオに描かれていない人物で、私にできるわけないじゃない!!)
言われたキョーコは、できないと思ったが
「できないとは言わせないわよ。」
「!」
「あなたの相棒はすばらしい演技を見せてくれたわ。」
生徒がそう言って
「あらん、それは私のこと?私のことよね?いやだわ、そんなの大したことじゃなくよ。」
間違いなく、相棒というのは奏江のことなので、彼女は褒められて照れるが、
「私達みたいに『まだ』事務所を目指してる生徒と違って、あなたは既に彼女と同じ事務所に所属して同じセクションから、『わざわざ』やって来てる人ですものね。」
「・・・!」
「私たちより実力がないなんて言わせないわよ。」
再び生徒は言葉を続け、キョーコに言い放った。