ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー



その後、ローリィと別れたキョーコはあの人形たちが入ったあの布袋をあけ、人形を床に散らばす。

それらををみた奏江は何度か瞬きをし、

「ちょっと・・・何よ、これ・・・人形?」

唸りながら人形を手にとって選んでるキョーコに聞いたが、

「もしかして、これって・・・敦賀蓮!?

自分も手にとって、人形を見ること数秒でそれが誰なのかわかって、

「すごい!!どうして分かったの!?モー子さん!!」

本当に当たってたらしく、キョーコは驚く。

「だって、この服・・・テレビで見たわ。ついこの間、某大物女優の40周年パーティーで出席した時に着てたアルマンディよ!!

ちょっとデザインも変わってて、余程スタイルとセンスがよくないと着こなせないものだから、日本人には合わないと思ってたのにって、専門家がやたらほめちぎってたわ。」

奏江がたまたま手に取った人形は、白いタキシードに見えなくはない服をきた蓮人形であって、その顔が唖然顔であり、

「そうみたいね。」

(私もそれ見てて、久遠があまりにも似合ってたから脳内に焼きついてたんだよね・・・それに、そもそも、日本人じゃないから、似合ってて当たり前なんだけど・・・しかもスタイルとセンスを持ち合わせているし・・・ホント、全国のプロのモデルさんが、可哀想だわ・・・。)

キョーコは全国でモデルの仕事をしている人々に同情した。

(アクセ、ネクタイ、胸のハンカチ、靴に至るまで、なんて芸が細かいの!!)

一方、同情してるキョーコの側で奏江は芸の細かさに驚いていて、

(この子・・・!!敦賀蓮が好きなのかしら!?)

なんて思ったが、別の人形をみてさらに驚く。

(これ・・・!!この服・・・!!不破尚だわ!!)

みたのはショータロー人形で、その顔は泣き顔になっている。

(いきなり、ファーストシングルオリコン1位で衝撃デビューを果たしたときの衣装よ!!そのルックスと歌の評価もさる事ながら、生地が全身きわどい所までシースルーで、下をはいてるのか、はいてないのか、話題騒然になった!!)

まじまじとそれを見るとその人形も細かくアクセなどができているので

(これ一つ作るのに、どれだけの手間と時間を費やしてるのか、計り知れないわ・・・。)

自分はこんなことはできないと思ったのと同時に

(この子、とんだ、敦賀蓮、不破尚マニアね・・・!?

そう思ったが、キョーコの鞄からひょっこりと蓮人形でもショータロー人形でもない人形が頭を出しているで、

思わず、それを手にとって布袋からちゃんと出してみると、ブロンドの頭に目が黄緑色の人形だった。

しかも、さっきまでの人形との違いが明らかで、他の人形は泣き顔などが多いんだが、これはただ優しく微笑んでる。

「なにこれ・・・。」

何となくだが、さっきの人形にはよくないものが封じ込まれている気がしてたけれども、

この人形はそんな感じはまったくしなく、むしろ、温かみが感じられた。


奏江の声にキョーコは彼女を見て、目を見開いたと思うと

「ちょ・・・!一体なに!?」

彼女から人形を取り上げ、取り上げた人形を胸に抱く。

「わ・・・忘れて・・・!!

「はぁ・・・?」

キョーコの突然の言葉に奏江は首を傾げると

いいから、この人形の事は忘れて・・・!!お願い!!

彼女は何故か懇願してきたので、

「わ、分かったわ。」

思わず頷いた。それを聞いたキョーコはどこかほっとし、抱いていた人形の頭を撫で、布袋に戻して鞄にしまった。

そんなキョーコをみて奏江は意外さを感じた。なぜなら、人形を見つめる瞳がとても優しかったから。

「あんた・・・」

何となくその理由を知りたいと思って奏江は話しかけようとしたが、我に返ったように

(まって。何で私がこんなことを聞くのよ!おかしいでしょ!?)

自分につっこむ。その側でキョーコはまた蓮人形を手に取っていた。

(う~ん・・・こんなのでマリアちゃん誘い出せるのか分からないけど、『敦賀蓮』が好きみたいだから、もしかしたら・・・。)

マリアがこの人形で誘い出せるかどうかを悩んでいたが、

すごいパワーを感じるわ・・・。

「え・・・?」

声がしたほうに視線を向けるとさっきほどの豚の着ぐるみがこちらにへと歩いていて、

「ああ・・・それで、蓮様の髪の毛さえ手に入れば、もう完璧・・・!!」

ドキドキワクワクしてるようで、手を組み合わせていってたと思うと

「ああ・・・蓮様~~!!」

蓮人形を数体抱き締め、その声はどう聞いても女の子だった。