ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
(な、なんでそんなに頑なに否定するだ~~!?今どきの女の子が蓮が好きだなんていってもおかしくないのに~~!!)
一方、無理やり頷かせられた社は頭の中でぐるぐるとそう考えており、
(危なかった~~!!つい本心に戻って久遠の事を見つめてた!!仕事ぶり見れてよかった・・・だなんて、惚けてたから、余計に見つめてたし!!)
キョーコはキョーコで冷や汗をかいていたが、社は再び何かに引っ掛かる。
(あれ・・・?いくら、蓮が好きでも、実際会って、数日しか経ってないのに、蓮をあんなに愛しそうに見つめられるものなのか・・・?演技でもなんでもないのに・・・?)
う~ん?と引っ掛かった謎に社は唸って考えるが、
「おーい、社~~!!」
そこにちょうど新開が呼んできたので、
「あ、はい!」
考えることを一旦、やめて
「じゃあ、俺ちょっといってくるよ。」
キョーコに笑顔を向けてから新開のほうへといった・・・。
そんなこんなで夜中の二時。
「あ・・・そろそろ時間かな・・・。」
ホテルのバーの時計をみた、社が呟き、
「蓮、お前も見に行かない?キョーコちゃんの写真撮影。」
ソファーに座りながら、酒を飲んでいる蓮を誘ったが
「どうして・・・?」
「いや・・・結構、本格的にやるらしいよ?ホテルの写真館に頼んで。」
「興味ない・・・。」
本当に興味なさそうに言うので
「俺・・・蓮はキョーコちゃんの事、気にいってるんだと思った。芝居、本気で相手にしてただろ?演技テストにもかかわらず。」
社は蓮にそう言うと、蓮はふ・・・と口元だけかすかに笑い、
「確かに・・・根性は気にいりましたよ。」
「根性はって・・・まるでそれ以外は気にいらないみたいな言い方だな。」
「実際、そうですから・・・。」
「本当にか・・・?」
疑うように社は聞いてくる。
「なにが言いたいんですか?」
「いや・・・『あの時』お前、一体キョーコちゃんになに言ったのかな~って思ってさ。」
「・・・別に深い意味はないですよ。」
「本当にか?」
「本当ですよ・・・。あと、社さん、行くならいくで、早く行かないともう終わりますよ、あの子の撮影。」
「え。あ、ああああああ!!」
蓮の言葉に社は時計を再度みると時間がどんどん過ぎている。
「じゃ、じゃあ、俺いくよ。」
そして、社は慌てて、バーを出て行き、それを見送った蓮は
「まったく・・・あの人は意外に勘が鋭い・・・。」
深くため息をついて、『あの時』にキョーコに囁いた言葉を思い出す。
『キョーコ・・・俺は君がお世話になってる旅館の客じゃないから・・・だから、もう、辛いのを我慢しなくていいよ・・・。』
これを聞いた途端に彼女は意識を完全に手放した。彼の声と言葉だから、効いた言葉だ。
それを他の人間が言ったところできっとキョーコはやめようとはしなかっただろう。
「いえないよな・・・これを言ったら、誰にだってつっこまれる。」
そんなことを言ったら、蓮は必ずつっこまれる。なんでそんなことを知っているんだ、と。
だから、決して言える言葉ではなかった。
「ねえ!!あれ、蓮だよね!?蓮だよね!!」
「うっそーー!!」
「声かける!?声かける!?」
そうこうしているうちに一般の女性客にみつかり、
(見つかった・・・薄暗くて分かんないかと思ったのに・・・めんどくさそうだな・・・。)
正直、めんどくさいと蓮は思った。一方、その頃、社は、
「結局、理由聞けなかったな・・・まあいいか。それにしても、根性ね・・・そんなことだと思ったけど・・・。しかし、本当にあいつは浮ついた話、出てこないよな~~。事実から捏造まで一切ないとは・・・まあ・・・ありがたいんだけどさ。やっぱり、捏造してまで、蓮に喧嘩売ろうって勇気ある人間がいないのかな。ああ・・・きっとそうに違いない。なんたって、俺の予想では十代の蓮ときたら、それはそれは言語を絶する悪童ぶりで・・・。」
早歩きしながら社はぶつぶつ一人事をいい、
「あれ・・・?撮影は・・・?」
キョーコの写真撮影場所に着いて、そう言うと側にいた女性スタッフが
「あら、もう終わりましたよ。」
そう告げる。その証拠にスタッフたちが片付けを始めていた。