ファースト・ラブ

ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー



(笑ってる・・・しかし、なんだろう・・・あの異様な空気は・・・)

そんなキョーコを引っ張られながらも見ている蓮。それに瑠璃子はむっとして

「敦賀さんはあの子と共演したいんでしょ!?」

蓮にそう言うと彼は

「ん?」

なんの事だ?と言うような顔をしたが

「だから、あの子ばかり構うんだわ!!」

瑠璃子は気付いてないのか、プンスカと怒りながら愚痴ると蓮はくすと笑って

「違うよ・・・関係ない。俺が仕事したいと思うのは自分の仕事に誇りとこだわりを持ってる人間だから。」

そう言った。その言葉に瑠璃子はただ目を見開いた・・・。


「はーい、それではシーン52、スタンバイ」

(なんでだろう・・・なんだが、やんわりつき離されたような気がした・・・。『だから、君とも仕事をしてみたいと思わない』って、はっきりそう言われたわけじゃないのに。何故・・・?)

正座して座る蓮の前に正座し、瑠璃子は一人考えていた。蓮の言った言葉に引っ掛かっていて・・・。

「え・・・?いや・・・だから、足の事を考えるとね・・・。」

キョーコから茶のシーンをやると聞いたのだろう、パイプ椅子に座っている彼女の横にしゃがみこんで社は言うが

「あ・・・いいんです。本当に大丈夫ですから、気にしないでください。」

キョーコは笑って、手を振るので、

「や~~~でもねぇ~~。」

それはやっぱりやめたほうが・・・と社は言うが彼女は

「いいえ、私、たとえ骨が折れてもやめませんよ。だって」

右手で拳を作り、そこまでは笑っていたが、

「骨は折れても治るもの。」

ふん・・・!と鼻で笑い、恐い顔でスパンッと拳を自分の左手の平に打つ。

(恐い・・・この子・・・。)

そんなキョーコに思わず社は背中がぞっとし、そう思った。

<ストッーープ!瑠璃、台詞忘れてる。いつまでも蓮に見とれてちゃ駄目~~。>

そこに新開が野外用のマイク使って瑠璃に言う。

「あ・・・!」

彼に言われて瑠璃子もわれに返り、顔を真っ赤にしたが、

<まあいい・・・じゃあ、次!キョーコちゃんに交たーい。スタンバってー。>

「え・・・」

新開の言葉にうまく反応できず、

「あ、はい!!」

呼ばれたキョーコは急いで立ち上がったが、

「ああ!」

足を怪我してることを一瞬忘れたため、社の声もむなしく、激痛が走った。

「瑠璃、茶のたて方はまずまずと。」

一方、新開は椅子に座り、台本ならしいものにそう書くと

(まずまず~~!?)

「ちょっと・・・監督、今の本当に私の演技の良さって分かってもらえたんですか?最後までやってないんですけど!」

聞きすてならない瑠璃子は彼に聞くが

「うん、大丈夫大丈夫。十分わかったから、瑠璃が真剣に演技してないってことわね。」

「!!」

新開の言葉に瑠璃子は目を見開いて

「私!真剣にやってました!!」

反論はしてみたが、

「そーか、じゃあ『真剣』じゃ足りないんだな。もっと『必死』にやりなさい。共演者に見とれて台詞忘れるなんて身が入ってない証拠だ。」

「だ、だって・・・っ」

(そ、それはいろいろと考え事してたから・・・!じゃなくて)

「お茶たてながらお芝居するなんて初めてだもの!!それにこんなに太陽の下にいるのも久しぶりで」

「瑠璃。」

新開に言葉を妨げられ、

「俺が今、君の口から聞きたいのは、言い訳じゃない。」

(え・・・?)

彼の言葉に瑠璃子は意味がわからなかった。

「瑠璃子ちゃん。」

「!!」

そこに社の手を借りながら、キョーコが来て

「見てて・・・私、ラブミー部の使命、果たしてみせるから。」

瑠璃子にそう言うため、彼女は

「どう意味・・・?」

よく意味がわからず聞くとキョーコは瑠璃子の前に立ち、

「いやだ、忘れちゃったの?私の仕事!太陽から瑠璃子ちゃんを守るために日陰を作ってあげる事だったでしょう。だから、

芸能界でも陽の当たらない場所を歩かせてあげるっていってるの。

途中までは笑顔だったが、真顔になり瑠璃子に言う。

「・・・。」

ちらっと瑠璃子を見る新開。

「は・・・!?何それ!?それって私があんたの影に隠れて目立たなくなるって言いたいわけ!?『芸能界』で!?バッカじゃない!?そう言う事は今回のこの映画の仕事を私から奪ってデビューできら言うことね!!」

キョーコの言葉を聞き、瑠璃子はあははと笑いながら、彼女にそう言うとキョーコはに・・・と自信に満ちた笑みを見せた。