ファースト・ラブ
ー無償に与えられる愛を君へ・・・ー
(子供の頃、一番大好きで一番憧れたのは、いつも華やかな舞踏会を遠くで見ていることしかできなかった、ボロ服一枚の惨めな女の子が、突然現れた魔法使いに誰もが目をくらませるほど美しく変身させてもらえるシンデレラストーリー。私はその絵本の中の主人公を本気で夢見ていた・・・。)
新開の目線の先には長い黒髪をもつ美人とかし、綺麗な姿勢をしているキョーコ。
あまりの変わりぶりにさすがの新開もうまく反応ができずにいて、
「えー本当にあのツナギの子!?美人じゃーん。」
「イメージかわるねー。」
「でしょ?雰囲気に合わせて桂のデザインも変えてみたの。」
「瑠璃子ちゃんとは、また違うお嬢様でいいんじゃーね?」
周りも絶賛していたが、瑠璃子がそれに耐え切れなかったようで
「ふ、ふん!!外見なんか腕のいいメイクにかかれば誰だってだいがい良く見えるわ!!いいわね、あなた。元が並みだけに
化粧映えしてまるで別人に変人できるんだもの!!」
嫌味を言ったつもりだが、キョーコは嬉しそうに
「本当、本当!!私まるで魔法にかかったシンデレラの気分なのよ~。」
頷いていうので、瑠璃子は
(私は嫌味を言ってるのよーー!!本気で喜ぶな!!)
震えてそう思っていたが、突如キョーコはくるりと後ろに振り返って
「ああ・・・!!本当に夢みたいよ・・・!!だって!!大好きなメイクをこんな形で!!プロの手で施してもらえるなんて!!
断言してもいいわ!!私は今!!幸せな瞬間を迎えているーー!!みんな聞いて、私幸せ!!幸せなのよぉおおおおおおおお!!」
両腕上げて嬉し涙が出るほどすごく喜んでいる。そのためスタッフたちは
「マジか・・・たかがメイク一つであそこまで・・・。」
「これまで一体どんな人生を・・・。」
実にキョーコの人生を知ってみたいと思った。
ちなみにキョーコにとって一番幸せな瞬間は久遠と過ごした時間と日々だ。
「それもこれも・・・みんなみんな、瑠璃子ちゃんが我が侭で傲慢で傍若無人なおかげよ・・・!!ありがとう・・・!!」
涙を拭きながらキョーコはもう一度瑠璃子のほうを向いてそんなことを言うため
「あなた・・・私に喧嘩売ってるわね・・・。」
瑠璃子はむかつく。
「だって瑠璃子ちゃん・・・私、もっと幸せになりたいの。」
だが、そこまでにこにこ嬉しそうにキョーコは微笑んでいたが
「あなたに勝って。」
獲物を見つけたように獣の目を瑠璃子を向けた。その目に瑠璃子は怯みそうになったが
(だ、だめ・・・!!ここで怯んじゃ・・・!!)
「だ、誰があなたみたいなハイエナ部員に・・・!!この仕事は私のよ!!」
(自分の身は自分で守らなきゃーー!!)
自分の身は自分で守ると決め、キョーコに言い返した。
そんな言葉を自分の耳で聞いた新開はに・・・と口元が笑う。それに気付いた蓮は
(まさか・・・)
ある考えが浮かんだ・・・。
「では・・・蝶子が出てくるシーンで・・・」
スタッフが共演者に説明し、頷く共演者二人。そんな様子を見ている瑠璃子と新開がいて
(そうよ・・・あんな子に負けてたまるもんですか・・・!同じ演技が素人でも、私とあんたじゃ違うのよ・・・!!TVカメラの前にも立ったこともないあんたなんか・・・プレッシャーで失敗すればいいんだわ!!)
瑠璃子はそう考えていたが、キョーコにとってはそっちのほうがプレッシャーを感じないほうだった。
間違いは許されない劇のほうが何倍もプレッシャーがかかるのだから・・・。
「それではテストいきまーす!よーい」
スタッフがそこまで言ってカチンコをカチンと鳴らした。それを合図に閉じていた瞳をキョーコは開く。
「なんですって!?それは本当なの!?」
「本当よ!昨日、三宅のおじさんが・・・」
進行していくお芝居の中、キョーコが流れるような歩行をしながら、二人に近づく。
「わたくしがどうかなさって?お母様。」
「!!あ、蝶子・・・!」
「あら、緑お姉さま・・・お久しぶりです。」
そして、綺麗なお辞儀を緑姉役の女性の前でした。
キョーコの演技に関心する新開たち、震える瑠璃子。
「・・・上等。」
「!!」
新開の言葉に瑠璃子は衝撃を受けた。
「すごいすごい、キョーコちゃん、あなた本当のお嬢様みたいだったわよ。」
「ホント、流れるような歩行といい、なんか着物になれてねー?」
絶賛の中、キョーコはぎくりとし、
「いえ・・・」
(いや・・・まって!そういうことにしたほうがいいかも。)
否定しようとしたが、そうしたほうが都合がいいため、
「ちょ、ちょっとだけ・・・」
あえて都合にのることにし、それを聞いたみんなは口合わせてやっぱりと納得した。
(だって・・・これらはすべて捨てたくとも捨てきれない忌まわしい過去の残りカスなんだもの・・・!!)
過去の事を思い出しながらそう考えるキョーコだったが
(ああ・・・またつまらぬものが役に立ってしまった・・・。)
ため息して歩き出すとズキン・・・とまた痛みが出てきた。
ピタっと動きを止め、忘れたフリをしてみたが、痛いものは痛いので
「・・・忘れたフリしても痛いものは痛いと思うぞ。」
後ろから蓮につっこまれてる側で壁をどんどんと叩く。
「当たり前のようにスタスタ左足を使うからだ・・・。」
パイプ椅子にキョーコを座らせ、左足を手当てしなおしながら蓮は言うが、
「だって・・・・流れるような歩行のためには仕方がなかっただもの・・・。」
仕方がなかったとキョーコは言いながら、蓮の手当てを受け、
(信じられない!!)
その結構すぐ側のほうで瑠璃子を親指の爪を噛んでいたが、
(なんて図太い神経してるの!?なんであんなに落ち着いてるのよ!!素人のくせに!!おかげですごい差をつけられたじゃない!!そりゃ・・・確かに監督の言う、『お嬢様』の立ち振る舞いがどういうものか目からウロコが出たわよ。あれじゃあ、私とは全然違うわ・・・って!!認めてどうすのよ!!負け決定!?)
今度は床に手と膝をつけ、悔しがる。
(嫌ーー!!私は勝たなきゃいけないのよ~~!!そうよ!!何が何でも勝たなきゃ!!)
悔しがった結果、考えが出て、顔を上げたが、
「あ・・・。」
(左足・・・)
キョーコの怪我した足を見て、
(あれって・・・もしかして結構重症だったの・・・?)
そう考えると瑠璃子は何か思いついたように台本をめくり出して
(それなら・・・勝てる・・・!!)
何か必勝法を見つけたようだ。